この記事では、民法第540条から548条までの内容を宅建試験対策的にまとめています。
2020年の民法改正に対応した「契約の解除」についての無料テキストです。
不動産売買取引と深い関係がある部分ですので、常に出題の可能性に警戒をして良い内容です。
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民法第540条
契約の解除は、相手方に対して意思表示をすることで行うことができ、これを後から撤回することはできません。
(解除権の行使)
第540条
1 契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。
2 前項の意思表示は、撤回することができない。
民法第541条
2020年法改正
(催告による解除)
第541条
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
下線部が改正での主な変更点です。
改正前は、契約の解除の際、債務者の帰責事由(故意・過失)が必要であると解釈されていました。
元々、帰責事由が必要だと言う明文はありませんでしたが、今回の改正で、より帰責事由の必要性が緩和された表現に修正されています。
少し簡単に言えば、債務不履行の理由が軽いときは契約解除できない場合があるという事です。
例えば、ネット上での売買取引等の場合、ほんの小さな汚れがあった事を理由に契約解除を要求するようなケースが増えていますよね?
クレーマー対策のような感覚で解釈すると、分かり易いと思います。
このようなケースでは、いちいち契約の解除を認めず、損害賠償請求などで対応しましょうという事です。
民法第542条
ここは、実務への影響が大きそうな箇所なので、宅建受験生の皆さんも少し注目しておいて欲しいところです。
2020年法改正
(催告によらない解除)
第542条
1.次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
一 債務の全部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
2.次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。
一 債務の一部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
債務の全部履行を拒絶する意思表示(赤文字部分の二)をする例としては、不動産取引で売主が決済時に物件を引き渡してくれない状態などがイメージとして分かり易いと思います。
三の、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないときとは、例えば、売買した土地を決済前に第三者に売却してしまい、契約した時の坪数に満たない状況にある場合などです。
五の、契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるときとは、例えば、大規模現場の建売住宅の開発許可がとれず、着工できないことが明らかな場合や、土壌汚染等で建築ができないことが判明したといった状況です。
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民法第543条
2020年法改正
(債権者の責めに帰すべき事由による場合)
第543条
債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前二条の規定による契約の解除をすることができない。
民法第544条
(解除権の不可分性)
第544条 当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる。
2 前項の場合において、解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅する。
民法第545条
2020年法改正
(解除の効果)
第545条
1 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2 前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
3 第一項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。
4 解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
原状回復義務は、簡単に言えば元々の状態に戻す義務です。
原物で変換できない状況の場合、価格償還するという事です。
果実は、その権利から発生する産出物の事です。
第546条
(契約の解除と同時履行)
第546条 第五百三十三条の規定は、前条の場合について準用する。
民法第547条
(催告による解除権の消滅)
第547条 解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は、消滅する。
解除権を行使するかどうか答えてくださいという催促ができるという事です。
民法第548条
2020年法改正
(解除権者の故意による目的物の損傷等による解除権の消滅)
第548条 解除権を有する者が故意若しくは過失によって契約の目的物を著しく損傷し、若しくは返還することができなくなったとき、又は加工若しくは改造によってこれを他の種類の物に変えたときは、解除権は、消滅する。ただし、解除権を有する者がその解除権を有することを知らなかったときは、この限りでない。
契約の目的物を故意や過失で壊したのであれば、それは解除を目的とした詐欺の可能性もありますよね。
このような状況での解除権を認める必要は無いと規定しているわけですが、例外的に善意無過失で同じ状況になってしまった場合を救済していると考えましょう。
まとめ
宅建試験対策として重要なのは、第541条と第542条だと思います。
ポイント(意味)を抑えておくだけで、本試験で得点できる可能性があると思いますし、不動産業界で働こうと考えている人達にも重要な条文です。
どちらにしても、勉強しておいて損のない内容ですので、記憶に残しておいてください。