ハウスメーカー(住宅営業)と不動産の売買仲介営業職は、同じ不動産営業でもかなり業務内容が異なります。
ですから、公平な比較をするのは難しい部分もありますが、いくつかのポイントを比較することで違いが見えて来ると思います。
この記事では、両者のどちらが稼げるのか、実体験から分かり易く比較していきます。
歩合と支払スパン
両者の違いとしてまず提示しておきたい点は、歩合の設定率と支払スパンの違いがあることです。
ハウスメーカーの場合は、1棟の契約に対しての報奨金(歩合)は、一時金+利益率で計算されるスタイルが多いと思います。
例えば、契約の翌月には一時金として数万円が支給され、残りは決済が完了した翌月等にまとめて支払われるというものです。
決済完了後、実際に達成した利益率に応じて歩合がもらえるという会社が多いと思います。
ハウスメーカー(注文住宅請負事業)の場合、決済までに半年程度かかる事も多く、実際に歩合を手にするまでのスパンが長いです。
この点を考慮して比較しなければ、同時期での稼ぎの違いが見えてきません。
一方、仲介営業の場合、1棟の契約に対しての報奨金は比較的短期間の中で受け取ることができます。
但し、半年から1年間の契約件数によって歩合率が累進的に変動する仕組みになっていることが多いので、短期間での契約本数によって受け取る歩合額が大きく変わってきます。
要するに、短期間でたくさん契約をすると歩合率が良くなる仕組みになっていると考えればOKです。
仲介業務の決済(業務終了)は、通常なら契約から2カ月程度です。
ですから、大抵の場合は契約から3カ月以内に歩合を受け取ることができます。
但し、会社によっては、ボーナスに成績を反映する設定をしている場合もありますので、半年くらいかかる事もあると思ってください。
この間に退職してしまうと、せっかく発生した歩合がもらえなくなりますので、注意が必要です。
ポイント
- ハウスメーカーは一件の契約の価値がほぼ等しいというメリットがあるが、歩合を受け取るまでの期間が長め
- 仲介営業は、歩合を早く受け取れるのがメリットだが、一定期間内での契約が少ないと歩合も少ない
稼げるようになるまではどれくらい?
どちらが稼げるのかを検討するには、一人前になるまでの期間も考慮しなければならないでしょう。
条件云々よりも、早く稼げるようになれる方を選ぶのも一つの選択肢です。
この視点で考えるなら、仲介営業の方が短期間で習得できます。
ハウスメーカーの場合、建築と設計の知識について覚えることが非常に多く、間取り(プラン)を書けないと厳しいからです。
ハウスメーカーで一人前になるには、最低でも2年は欲しいところですが、仲介営業なら1年以内でも十分に稼げる可能性があります。
それと、ハウスメーカーの営業マン達は、自分たちの仕事が「仲介営業よりもレベルが高いことをしている」という認識でいます。(私はそうでもないと思いますが)
この点について補足しておくと、請負営業は建築知識が必要なのでレベルが高いと考えているのだと思います。
つまり、仕事上で必要となる知識のレベルが高いわけです。
仲介営業の場合は、知識はそれほどいりませんが、より営業マンとしての能力が必要になりますので、『営業力』というスキルで比較した時には仲介営業の方に高度なノウハウがあると感じました。
簡単に言えば、比較的に自分の営業(人間)力で契約がとれるのが仲介業で、会社の看板とか知識で契約になることが多いのが請負業って感じです。
エリアによる違い
意外と見落とされがちだと思うのは、働く地域によってもどちらが稼げるかが変わるという点です。
例えば、物件価格が3千万円前後の地域では、建売物件がよく売れます。
これに対し、比較的に高級住宅地として認知されているような場所では、ハウスメーカーでの建替え需要が多いです。
地方の場合、建売を求める需要よりも、注文建築需要の方が高い地域もあると思います。
このように、そもそもエリアによってニーズや顧客数の違いがあるので、どちらが有望なのかをよく考えてみることも重要だと思います。
不動産仲介業者としての仕事内容については、地方の場合とは少し違う面もあると思います。
大都市圏の仲介業者は、建売やマンションの販売をメインとしていますが、地方の場合には中古物件や賃貸管理がメインになることも多いです。
労働時間での比較
どちらが稼げるのかが分かったとしても、仕事量や内容によっては話が変わってくる人もいますよね。
「そんなに忙しいなら嫌だ」という考え方があっても当然です。
人の意見では無く、自分の目で確かめたいという好奇心もあり、私はどちらも経験しています。
その上で申し上げますが、仕事量としては圧倒的にハウスメーカーの方が多いです。
サポート体制にもよるところですが、ハウスメーカーでは常に見積り作業が付いて回ります。
これに伴う商品知識や、施工や設計との打ち合わせ時間等を考えると、計算する必要も無いくらい明確な差があります。
つまり、拘束時間と仕事量の両面で、仲介営業の方が圧倒的に楽という事です。
参考記事
基本給と年収の比較
ハウスメーカーの場合、大学卒業程度の学歴を求められることも多いですよね。
一部上場企業である事も多い為、仲介営業に比べると、基本給は比較的に高めです。
その他、福利厚生面でもハウスメーカーが上だと思います。
この為、基本年収はハウスメーカーの方が高い事が多いのですが、歩合率の面で仲介営業が勝ります。
両者の年収を比較するのは、実力次第な面もありますから、とても難しいです。
一定の実力者が同条件下で働いたとすると、ハウスメーカーが約600~1000万円、仲介営業が約500~800万円といった感じの平均年収になるのではないかと思います。
まとめ
仕事量に対する対価で考えた時には、仲介営業に魅力を感じます。
短期的な収入でも仲介営業が勝る面がありますが、長期的にはハウスメーカーの方が安定して稼げる可能性が高い気がします。
但し、ハウスメーカーで長く働くには、この仕事に対する適性が高くないと難しいです。
実際にやってみて感じたのは、仕事内容が好きになれないと続けられないという事でした。
たとえ稼げる能力があっても、長く続けることが難しければ、結局は辞めることになりやすいですよね。
稼げるかどうかも大事ですが、自分の適性をよく見極めて決める事はもっと大事だと思います。