この記事は、「宅地建物取引業法 第五章 独学教材⑦」の続きです。
意味を理解しながら、とりあえず読み通してみてください。
宅地建物取引業法 第五章
38条 損害賠償
損害賠償額の予定等
★よく出題されています!
建売住宅の売主等のように、宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約で、約束を破った事(債務不履行)を理由に契約解除になった場合の話です。
このような理由で契約解除になった場合に、損害賠償の額とか、違約金を設定するときは、これらの合計額が売買代金の20%を超える設定をしてはいけません。
※ 違約金と損害賠償の両方を合わせて20%までという意味です。
この規定に反する特約を記載しても、代金の額の20%を超える部分を無効としますという事が書いてあります。
逆を返せば、契約の解除を伴わない場合は適用が無いので、履行遅延賠償額の設定等の場合には20%を超えることができます。
履行遅延賠償とは、買主がお金を払わないとか、売主が建物を引き渡さないといった義務が遅れた場合の賠償です。
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39条 手付解除
手付額の制限等
★よく出題されています!
宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して、代金の額の20%を超える額の手付を受領することができません。2018年出題有
保全措置の有無にかかわらず、売買代金の額の20%を超えることはできません。
2020改正点
(手付の額の制限等)
第三十九条 宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して、代金の額の十分の二を超える額の手付を受領することができない。
2 宅地建物取引業者が、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手付を受領したときは、その手付がいかなる性質のものであつても、買主はその手付を放棄して、当該宅地建物取引業者はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
3 前項の規定に反する特約で、買主に不利なものは、無効とする。
民法改正に伴い、条文に変更があった箇所です。
2020年10月試験でも早速出題されました。
ここでは、契約の解除のルールを説明しています。
「契約の履行に着手する」の意味は、契約成就に向けた必須事項について行動した事を意味します。
例えば、登記を行ったとか、建物を引き渡したといった行動です。
そこまで行動させておいて、契約を解除するのなら、買主は手付金を放棄しなければいけないという事です。
一方、宅建業者(売主)は、預かっていた手付金の倍額を提供して解除しなければいけないという事です。
宅建業者側の支払額を倍額にする意味は、預かっていた手付金(元々買主のお金)を返し、手付金と同額を支払うことになるので、「手付金の2倍」という事になるわけです。
結果的に、解約時のペナルティーとして支払う金額は、売主も買主も同額で設定されているという事です。
改正によって、解約手付は、相手が契約の履行に着手した後は解除ができない事になりました。
改正によってココが明確になった点は、非常に重要なので、今後も出題の可能性大です。
第40条 2020年改正
改正ポイント
担保責任についての特約制限
第40条
宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、民法第五百六十六条に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。
2020年の民法改正以前は、宅建業者が自ら売主となって宅地または建物の売買契約をする場合、瑕疵担保責任について規定されていました。
民法改正で、「瑕疵」という言葉が消え、「契約不適合責任」という考え方に変化しています。
ポイントとしては、「瑕疵」が隠れていた欠陥であることを前提としていたのに対し、「契約不適合責任」では隠れていた欠陥が含まれるようになった点です。
要するに、契約内容として買主側に都合の悪い事が起きた時は、民法上で臨機応変に解決できるようにしたということです。
これを受け、宅建業法においても、条文の変更が行われることとなったわけです。
民法の規定より不利な条件とならないことを前提にしているのは、これまでと変わりません。
非常に重要な改正である為、今後の本試験でも毎年のように出題される部分だと考えておきましょう。
第41条
手付金等の保全措置
2018年・2019年・2020年 出題有
宅地建物取引業者は、建物の工事完了前(未完成物件)の売買で、自ら売主となるものに関しては、保全措置をした後でなければ買主から手付金等を受領してはならない。
『手付金等』の意味は、手付金、内金、中間金の事です。
未完成物件の際の保全措置には以下の2種類があります。
- 銀行等が連帯保証する保証委託契約
- 保険業者が保証する保証保険契約
要するに、これらの保全措置は、宅建業者の代わりになって手付金を返還する担当者を、銀行にするか保険商品にするかの違いです。
どれか1種類の措置を講じていれば、顧客から手付金を受領できます。
但し、保全措置をしていなくても、次のような場合には例外的に受け取って良い場合がありますので、注意しましょう。
1.買主への所有権移転登記がされた時、又は、買主が所有権の登記をした時
※登記上で所有者が買主になっているのなら、もはや保全する必要がないからです。
2.手付金が、代金の5%以下で、かつ1000万円以下の場合
※これを超える場合は、手付金の全額について保全措置をしなければなりません。
3.取引相手が宅地建物取引業者(業者同士)の場合
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第41条の二
完成物件の手付金等
宅建業者が自ら売主になって、宅地や建物の売買契約時に工事が完了している場合、手付金等の額が代金の10%を超える時には、指定保管機関によって受領と保管をする契約(手付金等寄託契約)を締結し、これを証する書面を買主に交付しなければならない。
また、寄託金の返還を目的とする債権について質権を設定する契約(質権設定契約)、を締結し、買主には書面で交付しなければならない。
あわせて、寄託契約先にも通知します。※【補足2】参照
完成物件の場合、例外的に保全措置を講じなくて良いケースは以下の通りです。
1.買主への所有権移転登記がされた時、又は、買主が所有権の登記をした時
2.手付金等が代金額の10%以下で、尚かつ1000万円以下の場合
【補足1】
未完成物件の場合、無事に引渡しを受けるまでの期間が長いですよね。
ですから、代金の5%を超える場合には、保全措置をして消費者を守ろうという趣旨です。
完成物件の場合は、無事に引き渡される可能性も高いので、代金の10%までなら保全措置無しで受領しても良い事にし、宅建業者が一定の手付金を受領できるようにしています。
「質権設定契約」の部分がややこしく感じますよね。
理解できなかった人の為に、もう少しだけ簡単に説明してみます。
自ら売主となる完成物件で保全措置が必要になった場合、売主は指定保管機関と契約をします。
手付金等をきちんと預かる約束をする契約で、これを寄託契約と言います。
更に、何かあったときに買主に回収権利を与える為、この寄託契約に質権を設定します。
寄託契約を買主の経営する質屋に入れたと考えてください。
質権とは、預けたものを取り戻せる権利です。
買主は、取り戻せる権利を質にとった状態になりますから、安心して取引できますよね。
そこで、買主に質権が発生したことを知らせる意味で、書面交付するわけです。
一方、質権を設定されたことを指定保管機関が知らないのはマズイので、質権設定をしたときには、指定保管機関にも通知する必要があるということです。
第42条
割賦販売の規制
割賦販売とは、代金を分割で受領する販売方法のことです。
住宅ローンを使用する場合、売主は銀行から一括で代金を受け取りますから、これは割賦販売には該当しません。
売主が、買主から代金を分割して受領する販売方法のことなので、実質的には売主がお金を立て替えている状態です。(ローンが組めない人に売る等)
資金回収が遅くなる販売方法なので、現実的にはあまり行われません。
【条文の要約】
宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の割賦販売の契約をし、買主から賦払金の支払義務の不履行があったときは、30日以上の相当の期間を定めてその支払いを書面で催告し、その期間内に支払がされないときでなければ、賦払金の支払遅延を理由として契約を解除する事、又は支払時期の到来していない賦払金の支払を請求することができない。
【補足】
割賦販売は複数回に渡る支払いになるりますから、たった一度の不払いによって契約解除されることは消費者保護の観点から考慮すべき問題だと考えられました。
このため売主は、30日以上の猶予を与えて、返済者が資金調達をしやすいように配慮しています。
「口頭で催告できる」とか、「催告なしで解除できる」等の買主に不利な特約は無効です。
まとめ|勉強のコツ
宅建業法の第五章は、毎年出題されている個所が多いところです。
内容についても、取引上重要なルールが多いですよね。
少し紛らわしい部分もあるかと思いますが、何度か読んで意味を理解してください。
そして、過去問での出題方法を研究することで、より理解が深まると思います。
引き続き、頑張りましょう!