『不動産営業』という言葉には、色々な種類の営業職が含まれています。
ですから、この一言だけでは、どんな不動産を扱っているのかが分かりません。
住宅営業と仲介営業が混同されやすいのもこの為です。
この記事では、仲介営業のメイン業務である、建売住宅の販売業務の流れを中心に、両者の仕事の違いが理解できるように説明していきます。
かなり長い記事になっているので、目次を活用して読んでいただければと思います。
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1.はじめに
住宅営業(ハウスメーカー)、仲介営業(賃貸又は売買)、用地仕入営業、土地活用の営業等、どれも不動産営業という言葉に当てはまってしまいます。
特に混同されやすいのが、住宅営業と仲介営業ですよね。
今回は、不動産売買の仲介営業で建売住宅を販売するケースを想定し、住宅営業との比較をしていきたいと思います。
不動産営業職の分類については、「不動産関係の職種をわかりやすく解説してみた」をご覧ください。
その他の仲介業務(賃貸、売却、中古物件、土地取引等)については、話が広がりすぎてしましますので、また別の機会にしたいと思います。
2.仲介営業(売買)の仕事内容を詳しく教えて!
仲介営業って何をするの?
売買の仲介営業は、売り手と買い手の間に入って不動産取引を手伝うのがメイン業務になります。
建売住宅の販売や、中古物件の売買について仲介業務をする仕事です。
これに対し、住宅営業(ハウスメーカー)の場合、家の建築を請け負う契約をもらうことがメインの仕事内容です。
要するに、土地を所有する人が相手になります。
仲介業務を営む不動産会社には、売買系と賃貸系の2種類があります。
呼び名は同じ仲介営業ではありますが、客層も仕事内容もかなり異なります。
そのため、どちらかの業務をメインにして経営する不動産会社が多いです。
売買の仲介営業と、賃貸の仲介営業というところでも、職種が違うと考えて良いくらいです。
少し話がそれましたが、ここからはシンプルに売買の仲介営業と、住宅営業を比べていきますね。
住宅営業(ハウスメーカー)では、自社の建物を建築してもらうための営業活動を行います。
ですから、自社商品だけを提案し、請負契約の獲得を目指しています。
これに対して、売買の仲介営業は、色々な会社が建てた『建売』を売るのがメイン業務です。
ですから、販売できる商品の数としては仲介営業のほうが圧倒的に多いのです。
その他、仲介営業は、売却依頼を受けたり、土地・中古住宅の取引等も行います。
実際には、建売住宅やマンションを求める人の数が多いので、それらの仲介業務が中心になります。
意外かもしれませんが、住宅営業マンと仲介営業マンは、お互いが全く違う業界で働いているという感覚を持っています。
集客方法から営業開始まではどうなっているの?
住宅営業の場合、集客は住宅展示場に来場するお客様や、不動産業者からの紹介、HP等の広告媒体を見ての問い合わせが主な集客源です。
これに対して、不動産屋で働く仲介営業の場合、以下のような集客源になります。
- ネット媒体に掲載した物件への問い合わせ
- チラシ等を見て直接来店又は現地販売会へ訪れた人
- 企業又はお客様等からの紹介
仲介業界では、お客様からの問い合わせのことを『反響』と呼びます。
中でも、仲介営業にとって一番欲しい反響は来店客です。
わざわざ自分からお店に足を運ぶ人は、かなり購入意欲が強いことが多いからです。
営業マンに反響(お客)を振り分ける方法は、会社や店によって様々です。
私が知る限りでは、予め決めてある順番通りに営業へ渡していくケースが多いです。
小規模な会社の場合、売り上げを確実にしたいという気持ちが強いせいか、店長の裁量で振り分けるという会社もたまに見かけます。
大手不動産会社では、既存ルールが守られる傾向が強いので、新人でも平等に扱われる可能性が高いでしょう。
物件案内は簡単にできる?
会社から問い合わせの反響(メール等)をもらったら、該当物件の資料を作成して郵送します。
ご自宅を訪問することに問題が無いと判断できれば、直接お届けしてご挨拶させていただくようにします。
資料作成にもそれなりに時間がかかりますし、訪問するための移動時間も必要ですよね。
色々と時間を使い、苦労して連絡を取って、しかも週末の約束をもらえた営業だけが、そのお客様に物件を見せること(物件案内)ができるというわけです。
住宅営業(ハウスメーカー)の場合は、建物をこれから建てるわけですから、案内する物件がありません。
施行例としてご案内する事はありますが、基本的には見積りや資料作成をする工程がご案内ということになります。
物件案内の獲得
不動産仲介会社は、一つの街に複数ありますよね。
そして、大抵のお客様は数社に問い合わせをしています。
ですから、各社から誘われていることを前提に動き、自分に案内させてもらえるようにする努力をしなければなりません。
この競争に勝つには、色々な工夫が必要になります。
仕事内容だけを見れば、決して難しくはありませんが、こうゆうシンプルな仕事の中にこそ、営業マンの差が出る部分があったりもします。
この辺りのノウハウについては、営業ノウハウのカテゴリーで書いていきますので、興味のある方はご覧になってみてください。
参考記事
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接客から契約までの仕事内容とは?
物件案内での競争に勝てたら、お客様と数回お会いしてご案内を重ねていくことを目指します。
この間に、「この人から買おう」と思っていただかなくてはならないのです。
住宅営業には、物件のご案内という仕事が無いので、お客様とお会いできるのは、見積りやプランの説明だけに終始してしまいがちです。
お客様とゆっくり話せるチャンスが少ないので、序盤では人間関係が形成されにくい傾向があります。
ここは、住宅営業と仲介営業で大きく異なる部分です。
では、仲介営業として勝ち残り、ご案内の工程もクリアして、お客様が購入の意思を固めてくれたとしましょう。
そこからは、契約までの具体的な流れや、住宅ローンの話をしていく工程には入ります。
この工程は、物件案内の途中や、ご案内の前の接客等で進めてもOKです。
しかし、家を探し始めたばかりの人達というのは、「とりあえず、色々見てみたい」というニーズが強いです。
この為、「細かい話は具体的になってからで」という雰囲気の人が多いです。
営業マンとしては、ここで無理に説明して嫌われてしまうのは困りますよね。
この為、どうしても細かい説明は後回しになりやすい傾向があるのです。
住宅営業(ハウスメーカー)の場合も、同じような傾向はあると思います。
しかし、住宅営業は、お客様とテーブルを挟んで接客する機会が多い仕事内容ですので、仲介営業よりは事前に説明しておきやすい面はあります。
3.いよいよ契約! どんな準備をしていくの?
住宅営業(ハウスメーカー)の場合は、請負契約のための書類準備が必要になりますが、建築会社によって準備する資料の量はかなり異なります。
社内ツール等の充実度によって差があるでしょうが、慣れれば1~2時間で終わる作業です。
これに対して、不動産仲介営業(売買)の場合、もう少しやることが多いです。
とはいっても、難しい事はそれほどありませんので安心してください。
以下、簡単に業務の流れを説明していきます。
Ⅰ.価格交渉と契約日の決定
Ⅱ.謄本取得と物件調査を行う
Ⅲ.契約書類の作成
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Ⅰ.価格交渉と契約日の決定
お客様から購入申し込みの意思表示をもらったら、すぐに価格の値引き交渉に入ります。
契約時の金額を確定させなければ、契約書が作成できないからです。
それに、不動産の購入申込みは、売主に対して「この金額なら、○月○日に必ず購入します」という意思表示をする意味を持っています。
ですから、後から値引きの交渉をするのはマナー違反なのです。
このような値引き交渉をする際には、売主から住宅ローンの事前審査の通過が条件にされることが多いです。
お客様には、事前に手続きを促して、住宅ローンの事前審査を終わらせておくことがポイントです。
契約金額と契約日を確定させたら、いよいよ本格的な契約準備です。
Ⅱ.謄本取得と物件調査を行う
法務局で土地と建物の謄本類を取得し、役所では物件の調査を行います。
不動産売買の取引では、売主から買主へ所有権を移すことになりますので、必ず謄本が必要になります。
役所では、敷地にかかる制限の種類や、上下水道の事等、調べられることは全て調査します。
こんな説明をされると、すごく大変そうに思えるかもしれませんが、数回経験すれば誰でも簡単にできる仕事です。
物件調査は、役所の窓口に行って質問するだけの作業ですので、何も心配はいりません。
物件調査は、通常は役所に到着してから40分~1時間程度で終わります。
これに、役所まで移動時間をプラスすれば所要時間の目安が出せます。
Ⅲ.契約書類の作成
契約前に行うことが義務付けられている重要事項説明をするための準備をします。
お客様の中には、この重要事項説明書を先に読んでおきたいという方もいらっしゃるので、なるべく早めに作成しておきたい書類になります。
重要事項説明書と契約書は、慣れれば両方合わせて1~2時間前後で作成できます。
なるべく契約当日の修正は避けたいので、誤字脱字のチェックが重要です。
その他、売主業者から必要な添付図面等を取り寄せる等、書類を揃えて契約準備の完了です。
あとは、契約時の持ち物の連絡をしっかりとお客様に伝えて待つだけです。
急ぎの契約の際は、Ⅰ~Ⅲの作業を半日くらいで終わらせなければならない時もあります。
一人で終わらない場合は、営業事務や店長等と手分けして終わらせます。
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4.重要事項説明と契約は難しい?
多くの場合、重要事項説明は契約日当日に行います。
事前に来店して説明を受けるお客さまもいらっしゃいますが、レアなケースです。
重要事項説明は、宅地建物取引士しか行うことができません。
もし、宅地建物取引士の資格を持っていない場合は、資格を持っている同僚や上司にお願いすることになります。
頼まれた側は、自分の契約でもないのに重要事項の説明をしなくてはいけなくなりますから、あまり嬉しい仕事ではありません。
それに、重要事項説明書には説明を行った宅地建物取引士の名前が記載されますので、責任も大きいです。
この為、宅地建物取引士の資格を持っていない営業マンは、重要事項説明をしてくれた宅地建物取引士に1~2万円程度の代行料を払うルールになっている事が多いです。
宅建を持っていないと、このような支出が発生するので、早めに取得しておいたほうが断然有利です。
重要事項説明は、経験者の説明しているのを見学させてもらえれば、だいたいの要領が掴めます。
真面目に宅建の勉強をしていた人であれば、問題なく説明できる難易度です。
契約書については、お客様に対して読み聞かせをしながら説明します。
この作業を契約書の読み合わせと言います。
こちらも、読めない漢字が無いようにしてあれば、誰でもできる難易度です。
契約書の読み合わせについては、宅建が無くてもできますので、ここまでは担当営業マンが行うのが通例です。
参考記事
5.決済まで油断ができない!その理由とは?
契約が完了すると、内心「ホッ」としてしまいがちですが、決済まで色々と気が抜けない仕事が残っています。
決済とは、物件を引き渡してお金をもらうことで、通常は契約から1~2か月後に設定されます。
特に重要なことは以下の通りです。
Ⅰ.住宅ローンの本審査を契約書のローン条項の期限までに終わらせる
Ⅱ.登記に関する手配を済ませる
Ⅲ.不確定要素での解約が起きてしまうことがある
Ⅰ.ローン条項の期限を厳守
建売住宅を購入する人の多くが住宅ローンを利用します。
契約をしたのは良いのですが、住宅ローンが組めなければ解約になって全ての作業が無駄になってしまいます。
多くの場合、契約書上で住宅ローンを確定させるまでの期限が定められていて、この期限までに審査手続きを全て完了しなければなりません。
これが、ローン条項と呼ばれるものです。
つまり、この期限までに銀行から「希望額まで貸しますよ」というお墨付きをもらうのです。
事前審査でOKをもらっていた人でも、本審査をしたらダメだった・・という事もありますから油断できません。
銀行には、本申込み後でなければ調べない項目があり、そこに審査を通せない事情が見つかることがあるからです。
過去の重大な滞納履歴の発覚や、何かの保証人になっているといった理由が多いようです。
当然ながら、この作業は現金で購入するお客様の場合には不要です。
Ⅱ.登記に関する手配を済ませる
司法書士に、所有権移転登記に必要な情報と書類を渡し、正確な見積りを依頼します。
後日、これをお客様に確認し、問題が無ければ正式に依頼をかけます。
司法書士への報酬は、決済日にお客様から直接支払ってもらうことになります。
又、売主には、決済日の1週間前位を目安に、表示登記手続きに遅れが無いか最終確認をしておきます。
表示登記は、人間で例えると出生届のような意味を持つ登記で、売主側が手配します。
登記手続きに不備があると、重大なクレームに発展する可能性がありますので、最後まで抜かりなく進めましょう。
Ⅲ.不確定要素での解約が起きてしまうことがある
レアなことではありますが、不確定要素で解約となることもあります。
解約理由が買主の都合ならまだ良いのですが、売主側にある場合は仲介業者にも責任が発生しやすいので注意が必要です。
例えば、売主業者の資金繰りが悪化して倒産してしまうとか、工事が間に合わずに引渡しができないといった問題です。
仲介業者に原因があるわけではありませんが、事前に注意を払っておかないと責任を問われる可能性がありますので、進捗状況については最終確認が必要です。
6.まとめ
今回の記事で、皆さんに住宅営業(ハウスメーカー)と、仲介営業の違いが少しでも伝えられるように、最後にもう少しだけ補足しておきますね。
営業活動が始まって、すぐに表れる両者のイメージはこんな感じです。
- 住宅営業は、プラン(間取り提案)や会社のブランド力での競争
- 仲介営業は、営業の人柄や信用を認めてもらう能力での競争
住宅営業は目に見えないもの(まだ存在しないもの)を売っているので、営業を開始した当初の入り方が難しいです。
建売住宅の場合は、既に存在しているものを『誰が案内するか』の勝負ですから、営業マンの魅力にかかっています。
そう考えると、ずいぶんと難易度が違う仕事なのが理解できると思います。
因みに、全体での仕事内容の難易度は、住宅営業の方がやや高いです。
知識量の面でこのような結果となります。
転職の際は、どちらの営業職が向いているのか、事前によく考えて求人チェックするといいですね!
「不動産営業への転職 求人から内情を見極める方法」も参考にしてみてください。