収益物件は、入居者が入ったままで取引(オーナーチェンジ)されることがあります。
このような転売を行った際、売買にかかる消費税とは別に、入居者からの家賃収入に対する税の考え方に注意が必要です、
一般の人には関係のない話題ですが、消費税増税後の影響は大きく、不動産関係者は裁判(判例)の行方が気になるところです。
スポンサーリンク
裁判の争点
裁判で争点になっている部分について、少し詳しく説明しておきます。
入居者がいる状態で売買される中古賃貸マンション等の税申告では、物件を仕入れた時に支払った税額を、売却時に受け取った税額から控除することができます。
これを、「仕入れ額控除」と言いますが、実例を挙げて分り易くしておきます。
不動産会社の主張
不動産会社Aは、賃貸物件の建物を2億円で購入し、この際に消費税を1600万円払っていました。
合計で2億1千6百万円の支払いです。
これを3億円で転売し、不動産会社Aは、買い手から消費税として約2400万円を受け取っていました。
仕入れ額控除の考え方によれば、受け取った消費税(2400万円)から仕入れ時の支払税(1600万円)を控除できます。
2400万円-1600万円=800万円となります。
不動産会社Aは、自分達の納税額は800万円であると主張しているわけです。
国税局の主張
東京国税局は、この取引における「賃料収入」の部分を問題視しました。
つまり、物件購入から転売が完了するまでの間、入居者から家賃を得ていたことが問題になっています。
そもそも、税法上、家賃収入には消費税がかかりません。
これに対し、収益物件の建物価格は、消費税の課税対象とされています。
国税局は、課税対象となる仕入れ費用から、非課税の売り上げが生じているのは問題だと言っているわけです。
家賃収入によって利益を得ているのだから、仕入れ控除の枠を使わせうべきではない!というのが国税局の主張です。
申告漏れと追徴課税
不動産業者Aは、国税局から申告漏れを指摘されました。
その中身は、仕入れ額控除に入れられる消費税額が3割程度しか認められない内容だったようです。
国税局は、過少申告加算税等を含めた追徴課税を課してきました。
なんと、不動産会社Aでは、2015年12月期までの3年間で約6億3900万円の追徴課税を課されることになります。
確かに、転売までの時間が長いと、この間に売り上げとなった利益が脱税の抜け道になってしまいます。
一方、支払う側としては、内部留保金の状況によっては、会社が潰れかねないレベルの税額ですから、不服申し立てをして争っているという経緯です。
結果、この裁判は、Aの勝訴となったようです。
賃料収入がそれほど大きなものではない以上、これを理由に控除枠を使えないのは不当だという事になった模様。
しかし、類似の訴訟は複数発生しており、賃料金額等によっては異なる判決が出るケースも考えられます。
まとめ
裁判を担当する弁護士によれば、他にも10社前後の相談を受けているとの事です。
リノベーション事業を主幹にしている不動産業者は、税徴収の引き締めが強まっているので、今後も様々な方面で税制度の適用について議論が絶えなそうですね。