このところ、不動産の買取・売却事情に新しい変化が出てきています。
住宅の建築や購入を検討している人達にとっては、好ましくない状況になってきています。
結論から言えば、業者による不動産の買取価格はかなり安くなるケースが出てくると思います。
整形地で駅近等の好物件については、逆に今まで以上の価格が付くかもしれません。
その理由について、直近の不動産価格の動向を交えてまとめておきますので、参考にしてみてください。
業者買取価格が安くなる理由
戦争による原油高や、人手不足による工期延長等により、建築コストは年々高くなっています。
建材のコストについても、ここ数年で安くなったという話を耳にしたことがありません。
直近の建物の建築コストは、従来に比べて1.5倍以上となっています。
土地を仕入れる業者からすれば、建築価格が上昇すると、その分だけ土地を安く仕入れなければなりません。
建売住宅を購入する人達の予算は一定ですし、むしろ予算を抑える傾向に向かいそうですよね。
建売やマンションの販売価格は、既にこれ以上は値上げできないところまで来ていると感じます。
ウクライナとロシアの戦争の影響で、更に物件価格が高くなっていて、ミニバブルのような状態になっているエリアもあります。
この為、一時的に住宅購入を検討できる人の数も減ってしまうでしょう。(今まで以上に予算が必要になるから)
建売業者としては、物件価格を更に高くするか、土地を安く仕入れるか、という選択に迫られます。
しかし、良い土地を買うには高い仕入価格を出さなくてはならないので、悩ましいところです。
仕入業者がとる行動
仕入業者としては、良い土地に対しては今までよりも高い金額で勝負する傾向が強まるかもしれません。
一方で、ちょっと厳しい条件の土地などについては、今までよりもシビアな値段でしか買わないという行動をとることになると思います
要するに、物件価格が高くても売れるような場所(土地)であれば、限界まで高額買取りを目指しますが、そうでない土地は買取りが安くなるということです。
世の中の大半は、何らかのマイナスポイントがあるものですので、結果的に大半の土地は買取額が安くなる方向へ向かっているように感じます。
また、資金的な事情から、2~3区画での仕入を希望している業者が多く、まとまった広大地を欲しがる業者は少ないです。
大きな土地の場合、複数回に分けて売却計画をする等、専門的なアドバイスができる相談先を探すことが重要になるでしょう。
飯田グループホールディングスのような大きな会社が高い金額で仕入れをするので、小さい会社は無理をして土地を購入する傾向も強まる可能性があります。
そういった意味では、売却価格が崩れない可能性もあるのですが、このような業者が潰れ始める可能性もあり、基本的には誰かが無理をしているだけ・・という状態でしょう。
生産緑地が売られる影響
2022年11月は、生産緑地の満期となる土地がたくさん出てきます。
10年延長を選んだ人も少なくないと思いますが、ここで売却をする人も必ず出てきます。
売り物件が増える一方で、戦争やコロナの影響で建築費は高くなるばかりです。
そう考えると、思っていた以上に土地価格が下がってしまうという事も起こり得るでしょう。
郊外の土地買取価格は、数百万単位で下がるかもしれません。
例えば、昨年までなら3000万円で買い取りができた土地でも、2023年には2000~2500万円まで下がるといったことが起こります。
有効な対策は1つだけ
今、土地を高く売却するための方法として最も効果のあることは「できるだけ早く売却すること」です。
現在の状況下では、時間が経つほどコストが増加していく可能性が高いです。
既に、現時点でも、去年の方が高く買えたと感じます。
買取価格が下がるということは、売却価格が安くなるという事でもありますので、土地を売る側の人達にとっては残念な時期へと移行しています。
私の顧客の中にも、1億円くらいの値段がつく土地をお持ちの方がいますが、これも「当時なら」という話になってきています。
現在の相場で考えると、おそらく8~9千万円くらいまで下がっていると思います。
あの時、売っておけばよかった・・・という事になりやすい時期にあることは確かです。
不動産営業マンの方々は、顧客に対してこのあたりの事情を丁寧に伝えると良いと思います。
業者は買いたがっている?
土地仕入れの実務を知らない不動産業者は、「どこの業者も買いたがってます」等、顧客に誤った情報を与えます。
こんな説明では、無理して高く買ってくれるのかな・・なんて思ってしまいますよね?
でも、実際は全く意味が違います。
仕入れ業者は土地を買うのが仕事ですから、買いたいのは当たり前のことですよね。
一年中、いつでも買いたいとは思っているんです。
但し、なんでも買うわけではなく、「仕入れに良い土地を買いたい」という意味です。
実は、不動産のプロ(仲介業者)でさえも、この意味を勘違いしている人がよくいます。
土地を買いたくても、思うように買えない・・という業者は常にいて、それが普通といってもいいくらいです。
仕入担当者は、半ば愚痴のように「買わせてほしいです」と言うのですが、この意味は良い物件のことを言っています。
現在、大手建築会社でさえもあまり大きな土地は買いたくないと考えている時期です。
経済状況が不安定で、造成費用等も見通しにくく、相場も微妙に変わる可能性があるからです。
開発案件は時間もかかるので、半年~1年後を見越していく必要があります。
売れ残るリスクもありますから、やはり2~3区画にしておきたいと考えるのが普通なのです。
どんな状況でも、仕入担当者は用地を仕入れなければ評価されません。
なので、多少無理をして買う事もありますが、事業を失敗させるような物件は見送るに決まっています。
なので、結局は売りものになる土地しか買えませんし、直近では少し安めに仕入れたいというのが本音です。
売却する際の注意点
これは、エンドユーザーの方々に対する注意点になりますが、売却の際に選ぶ不動産会社の選別についても重要な時期です。
実際、仕入事情をよく知らない営業マンが多いですし、任せる相手によってかなり売却金額が変わると思います。
それと、計画(区画割)によっても大きく販売価格が変わりますので、未熟な人物に任せると大損することもあります。
また、不動産業界には、売却後の事を一切考えていない(考える能力がない)業者もいます。
残念なことですが、宅建をとっただけ・・みたいな素人レベルの担当者も多い業界ですから、十分注意してください。
まとめ
住宅ローン金利の上昇や、賃金の低下が起こると、住宅販売は厳しくなります。
建築コスト等の高騰で、販売価格を高くすると、余計に売れなくなるでしょう。
基本的には、建物のコストを小さくすることで吸収しようとするのですが、戦争の影響でこれが困難になる可能性があります。
この為、土地仕入れにかけるコスト(買取価格)を抑えることになる・・・というわけです。
このような事情から、2022年後半以降の相場が変わってくるかもしれません。