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宅建独学 法改正

民法の主な改正点(2020年4月)

2020年度の宅建試験対策として、民法大改正の影響は大きなものがあります。

民法だけに留まらず、宅建業法への影響が及ぶ部分もあり、今年の試験対策は例年以上に苦労する部分がありそうです。

宅建(不動産取引)に関係の深い部分から学習するのを基本としながらも、民法の改正点についてはその全てが試験範囲となりますから、一通り目を通して理解しておくべきでしょう。

ポイントが掴めるように民法の改正点をまとめておきますので、勉強の手始めに読んでいただければと思います。

詳しくは、2020年度の出題予想記事や、無料テキストに反映していきたいと思っています。

 

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相続関連の改正

今回の民法改正では、相続に関連した条文が含まれています。

宅建の試験では、毎年のように相続から出題されていますので、ここはかなり重要な改正点だと考えて良いでしょう。

簡単にまとめると、相続関連では以下のような改正が行われます。

 

1.配偶者住居権

2.自筆証書遺言の財産目録がパソコンで作成可能(2019年改正済)

3.自筆証書遺言の保管制度(法務局業務)

4.介護や看病をした親族の金銭請求権

5.相続預貯金債権の仮払い制度

 

詳しくは、相続のテキストの中で取り上げていきたいと思います。

 

契約不適合責任の新設

民法第562条~566条において、新たに「契約不適合責任」という概念が誕生しました。

これまでの民法では、「瑕疵担保責任」と呼ばれていた部分です。

不動産業界では、とても馴染みの深い条文で、誰もが常識的に知っている重要条文の一つです。

 

改正後の民法では、「瑕疵」という概念が使われなくなり、契約の目的物に対して不足する部分(不適合)がないかを考えるスタンスに変貌します。

今後は、債務不履行責任の一種として捉え、引き渡しを終えた後も履行が完了するまでは売主に責任が及ぶことになる点が大きな違いとなります。

 

買主保護の観点から改正されたわけですが、不動産取引上の慣習的にも影響が大きな部分であり、売却側の心理に多大な影響を及ぼしそうです。

詳細については、以下の記事を参考にしてください。

 

契約不適合責任と瑕疵担保責任の違い

2020年4月に民法が大幅に改正されます。 しかも、不動産関係者や宅建受験生にとって、間違いなく大きな影響が出てくる内容です。 中でも特に重要なのが、「瑕疵」という概念が使われなくなった事です。 この ...

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消滅時効の期間

消滅時効とは、債権者が自分の債権を行使しない(返済等を請求しない)場合に、法定期間の経過と債務者の主張(時効の援用)によってこの債権を消滅させることができる制度です。

 

従来、民法では、消滅時効を原則10年としてきました。

また、特則として債権の内容ごとにこれより短い期間の消滅時効(短期消滅時効)を設けていました。

 

改正後の民法では、合理性のない短期消滅時効の特則を廃止します。

更に、従来10年だった消滅時効の原則期間が、「原則として権利行使が可能であることを知った時から5年」に統一されます。

 

法定利率規定の新設

これまでの民法では、お金の貸し借りをする際、具体的な利率を定めなかった場合には、年5%の利率(固定)による利息を支払うという「法定利率」が定められていました。

 

しかし、現代の日本の状況に照らし合わせると、年5%は高利息と言って良い状況です。

デフレ脱却を目指し、日本銀行によるゼロ金利政策等が行われていることからも、民法上の法定利率を変動させる必要性が高まったわけです。

 

そこで、改正後の民法では、法定利率を3%に引き下げ、更に市中の金利動向に合わせて変動させることができるようになりました

 

事業用融資での保証意思確認

保証人は、債務者が債務を弁済できない場合、債務者に代わって弁済を行うことになります。

このような保証契約では、保証人になった人達がその本当の意味を理解せずに契約していることがあるのが実情でした。

 

断り切れずに受けた保証契約によって、人生を他人の借金返済に捧げる事になるなんて、本当に気の毒ですよね。

確かに、契約したことに対する自己責任はありますが、個人だけで判断するには、あまりにも人生に影響が大きい契約にも思えます。

 

そこで、改正後の民法では、事業用融資の債務についての保証契約を締結する際の手続きを厳格化しました。

保証人になろうとする者が個人の場合には、一定の場合を除いて、公証人が保証人に対してその保証意思を十分に確認し、保証契約につき公正証書を作成しなければ効力を生じないことになりました。(民法465条の6)

 

定型約款の合意や変更等

インターネットが普及したことにより、ネットショッピングやWEB上での契約が増加しましたが、民法はこのような時代の変化に対応しきれていませんでした。

 

皆さんも、画面に利用規約が表示され、同意ボタンを押すことで次に進めるという場面に遭遇したことがあるのではないでしょうか。

しかし、実際には、約款に目を通し、内容を十分理解している人は少ないと思います。

 

同意ボタンを押せば、法律上は「約款に従うという意思があったもの」と推定されてしまいますが、企業への信頼感でこれに対応しているのが現状だと思います。

この為、商品の購入等でのトラブル時は、約款で示されている条項が一方的に適用されることになります。

 

本来なら、約款は、お互いに明確な合意をしていなければ意味が無いものです。

インターネット取引では、本来の形ではない合意を必要とする特殊な事情があり、これによってスピーディな取引が実現されている利便性があるのも事実です。

 

改正後の民法では、不特定多数の人に向けた約款を「定型約款」として定義し、一般消費者保護の観点から諸規定を設けました。

定型約款の合意や、内容の表示、変更等について規定することで、民法がインターネット時代に対応し始めたと言って良い改正となったと感じます。

 

判例の明文化

民法の明文によって判断が困難な事柄については、判例法理を法律と同様に解釈して法解釈されている部分が多々あります。

中でも、有名な判例については、もはや法律と同じくらいの知名度となることもあり、これを判例のままにしておくのは、かえって不自然な事でもあります。

このような背景から、改正後の民法では、いくつかの判例法理等が明文規定されていますのでご紹介しておきます。

 

❶ 意思能力を有しなかった当事者がした法律行為は無効

意思能力を欠く者の法律行為が無効であることは判例法理として確立した考え方となっていましたので、改正後の民法ではこれが明文化された形です。

法律行為の際に意思能力を欠く者が行った法律行為は無効であると規定されました。(民法3条の2)。

 

❷ 将来債権の譲渡

将来債権とは、現時点では発生していないけれど、将来発生することが予想される債権のことです。

これまでの民法では、既に発生している債権については譲渡できる規定がありましたが、将来債権の譲渡については明文がありませんでした。

 

将来債権の譲渡が有効であることは、判例法理として確立した考えとして扱われていたのです。

改正後の民法では、将来債権の譲渡が可能である旨の規定が設けられ、明文化されています。(民法466条の6)

 

❸ 賃貸借契約の原状回復義務

これまでの民法では、敷金の清算・返還に関する規定や、原状回復義務についての規定がありませんでした。

この為、貸主と借主の間での敷金返還をトラブルや、過剰な原状回復費用の請求トラブル等が生じる実情がありました。

 

改正後の民法では、「敷金」は、債務を担保する目的で賃借人が賃貸人に交付する金銭として定義しています。

これにより、賃貸人は、契約終了時に敷金から債務の額を控除した残額を返還しなければならないことが明文化されました。(民法622条の2第1項1号)

 

また、原状回復義務については、原則として賃借人が賃借物の原状回復義務を負うものの、通常の使用・収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化については、その責任を負わないとする旨の規定を置きました(民法621条)。

 

改めて法律上で明文化されたことで、賃貸業界では、今まで以上に意識されることになると思います。

 

まとめ

今回の民法改正では、かなり広い範囲に渡って規定が見直されました。

不動産業界だけでなく、保険業やリフォーム業等にも関係している部分があり、実務への影響は大変大きなものがあります。

契約書雛型の変更や、顧客への説明責任等、関係者の注意を喚起する必要がありますので、民法が試験科目になっている国家資格では、かなり出題の可能性が高い事項となるでしょう。

しっかりと予定を立てて、大改正に備えましょう。

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