占有権について、宅建独学用の無料テキストを作成しました。
無駄を省いて要点だけ学習できるようにしてありますので、活用してください。
最終修正日:2020年4月1日
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占有権
占有権は、自分のために意思を持って物を所持することで発生します。
代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得します。
占有物は、引き渡しをすることによって譲渡できますが、既に譲受人が所持している状況では、意思表示だけで譲渡することが可能です。
それでは、具体的な効力等について勉強していきましょう。
占有権の効力
占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定するのが原則です。
善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得することができます。
果実とは、法律用語で、物を使用させた対価として受け取った金銭(法廷果実)や、収穫物(天然果実)等のことを指します。
この条文では、収穫や収入を得られるもの全般だと思えば良いでしょう。
(悪意の占有者による果実の返還等)
第190条 悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。
2 前項の規定は、暴行若しくは強迫又は隠匿によって占有をしている者について準用する。
要するに、自分の利益ではないと知って所持している占有者は、そこから得たものを返還する義務があるという事です。
平成14年度 出題(正解肢)
【前提条件】売主A・買主B間の建物売買契約(所有権移転登記は行っていない)が解除され、建物の所有者Aが、B居住の建物をCに売却して所有権移転登記をした場合。
・Bは、占有中の建物の一部をDに使用させ賃料を受領した場合、その受領額をCに償還しなければならない。
(占有者による損害賠償)
第191条 占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、その回復者に対し、悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負い、善意の占有者はその滅失又は損傷によって現に利益を受けている限度において賠償をする義務を負う。ただし、所有の意思のない占有者は、善意であるときであっても、全部の賠償をしなければならない。
占有者のせいで占有物を損傷又は失くした場合、人のものだと知っていた占有者は全額賠償の義務を負い、誰かの者だと知らなかった占有者は、現に利益を得た分を賠償する義務を負う。
人から物を借りて占有していた場合等を「所有の意思の無い占有者」と言います。
この場合は、たとえ善意でも、占有物への損害を出せば全額賠償しなければなりません。
(即時取得)
第192条 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
この条文は、「即時」の部分を「代金の支払いと同時に」等と書き換えて(誤った肢として)出題される可能性があるかもしれないと思い、掲載しました。
即時取得という、民法上の考え方を覚えておくと良いと思います。
第194条 占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。
盗品や遺失物が売りに出されていても、買う側の人は通常の商品と思って購入してしまいます。
購入者には何の罪もありませんから、商品を取り戻すには、購入者が支払った金額を弁償しなければいけないという事です。
(動物の占有による権利の取得)
第195条 家畜以外の動物で他人が飼育していたものを占有する者は、その占有の開始の時に善意であり、かつ、その動物が飼主の占有を離れた時から一箇月以内に飼主から回復の請求を受けなかったときは、その動物について行使する権利を取得する。
マンション等では、飼い猫等が逃げて、他の居住者に保護されることがあります。
中には、そのまま飼育されるケースもあるでしょう。
この条文は、そんな事態でのトラブル時に役立ちそうな基本的知識ですので、将来的に出題の可能性があるかもしれません。
(占有保持の訴え)
第198条 占有者がその占有を妨害されたときは、占有保持の訴えにより、その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができる。
平成27年度 出題(正解肢)
・丙土地の占有を代理しているDは、丙土地の占有が第三者に妨害された場合には、第三者に対して占有保持の訴えを提起することができる。
(占有保全の訴え)
第199条 占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。
(占有の訴えの提起期間)
第201条 占有保持の訴えは、妨害の存する間又はその消滅した後一年以内に提起しなければならない。ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から一年を経過し、又はその工事が完成したときは、これを提起することができない。
2 占有保全の訴えは、妨害の危険の存する間は、提起することができる。この場合において、工事により占有物に損害を生ずるおそれがあるときは、前項ただし書の規定を準用する。
3 占有回収の訴えは、占有を奪われた時から一年以内に提起しなければならない。
(占有権の消滅事由)
第203条 占有権は、占有者が占有の意思を放棄し、又は占有物の所持を失うことによって消滅する。ただし、占有者が占有回収の訴えを提起したときは、この限りでない。
(代理占有権の消滅事由)
第204条 代理人によって占有をする場合には、占有権は、次に掲げる事由によって消滅する。
一 本人が代理人に占有をさせる意思を放棄したこと。
二 代理人が本人に対して以後自己又は第三者のために占有物を所持する意思を表示したこと。
三 代理人が占有物の所持を失ったこと。
2 占有権は、代理権の消滅のみによっては、消滅しない。
まとめ|勉強のコツ
占有は、賃貸業務に関連の深い条文が存在していますので、今後も定期的に出題される可能性が高いです。
未出題の箇所にも、気になる条文が多いです。
「民法は深入り禁物!」と言われますが、まさにこんな部分のことかもしれませんね。
まずは、出題の可能性が高い部分や、主要法令をきちんと攻略してから手を伸ばすべき箇所だと考えましょう。