生命保険会社が中小企業向けに積極販売してきた『節税保険』と呼ばれる金融商品に国税庁のメスが入り、話題となりました。
ニュース等で目にした人も多いと思いますが、「節税保険って何?」等、ピンとこない人も多いはずです。
そこで、今回は、この節税保険と呼ばれる商品の仕組みを、一般の人でも分かるように説明します。
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節税保険の仕組み
何故、保険商品が節税になるかというと、会社で加入した保険の保険料を『損金』として計上できる事にあります。
損金とは、簡単に言えば「経費で落とせる」という事です。
例えば、貴方が会社を経営していて、年間1千万円の保険料を払ったとします。
逓増定期保険という部類の保険ですが、内容については後述しますので、とりあえず今は気にしないでおいてください。
この保険料が全額損金で落とせるとしたら、1千万円の利益に対してかかるはずの法人税を払わなくて済みますよね?
本来なら、1千万の利益が出れば、約340万円の法人税を支払う必要がありますが、損をした扱いになる為、これが発生しないのです。
保険会社に、毎年1千万円を貯金するような形で、お金を預けているようなイメージをしてもらえれば分り易いと思います。
本当の貯金の場合は損金計上できませんが、これは保険なのでOKというわけです。
しかも、この保険商品は、加入年数が増えていくと解約時に戻されるお金の割合(返戻率)が高くなっていきます。
最終的には90%前後の返戻率となるので、税金を払うよりも得なのです。
保険の返戻率が90%って、ほとんど全部返しますよって言っているようなものですよね。
先程のケースで当てはめると、返戻率がピークになる頃(7年前後)の掛け金の返戻額は、約6千万円にもなります。
でも、解約した時には、この6千万円がまるまる利益として出てきてしまいますよね。
そうなると、結局は法人税がかかってしまいます。
そこで、保険会社は、画期的な活用方法を中小企業の経営者達に伝授したのです。
法人税を節約する方法
保険の解約時に大きな利益となってしまう問題を解決する方法として、最も有力な手法は、「退職金として損金計上する」という方法です。
従業員を被保険者として法人保険に加入し、保険料は会社側で支払っていくわけです。
支給額が適性であれば、退職金は全額損金で計上できます。
このように、法人保険で退職金の積み立てをするという活用方法は、節税効果だけではなく、人材を確保する際に福利厚生の充実した会社としてアピールできます。
その他、長い経営の中では、一時的な赤字になることもあるかもしれませんから、そんな時にこの返戻金とぶつけてしまうのも有効な使い道です。
このように、経営リスクを回避する手段としても、大きな意味を持っていると言えます。
また、裏技的な手法として、この保険の活用期間を延長させる手法も存在します。
会社が、あえて保険料を支払わずに保険を失効させると、保険会社の規定する執行猶予期間に入ります。
この執行猶予の期間中は、返戻金が保留されることになるので、その期間中は、企業側が返戻金の受け取り時期を数年だけ延長させることが可能なのです。
大きな設備投資をすることになった場合等にも、この返戻金を使って相殺することができる為、中小企業の経営には欠かせない節税ツールと言っても過言ではないでしょう。
利益が出ている会社にとっては、夢のような商品なので、保険会社がこれを売りまくっていたという経緯があったのです。
保険会社とすれば、何も保障することなく、保険料の10%が利益になるのですから、お互いにとって最高の商品ですよね。
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国税庁の規制強化
国税庁がこれに目を付けたのは、今回が初めてではありません。
以前にも、全額損金扱いできる金融商品を規制して、販売を抑制する動きがありました。
しかし、2017年以降、日本生命保険がこの時の規制に触れない仕組みで新商品を考案し、節税保険ブームが再燃したのです。
今回も、税法上の趣旨を理由として、損金に算入できる範囲を限定される可能性が高いと思われます。
また、営業活動の在り方についても、説明内容等にコンプライアンス的な規制が入ってくるかもしれません。
現時点(2019年2月現在)では、いつまでに加入した保険を規制の対象にするか等、色々と問題になる部分が残っています。
損金に算入できる範囲がどの程度まで認められるか、注目が集まりそうですね。
まとめ
節税保険には、法人税として消えるはずだったお金が、保険商品を通じて再利用できる効果がありました。
国としては、税収入を大幅に減少させる天敵というわけです。
一方、企業側としては、自分達が稼いだお金を有効活用する手段として、これくらいの抜け道は残しておいてくれ!というのが本音だと思います。
消費税増税で企業努力を迫られている状況から考えると、ちょっと企業側に味方したくなる話ですね。