宅建の試験では、毎年1問は区分所有についての問題が出題されています。
この1問を確実に正解するために、無料テキストを作成しました。
比較的、攻略がしやすい内容だと思いますので、しっかり学習しておきましょう!
過去問についても、一部抜粋して解説しています。
最終修正日:2020年1月12日
区分所有法とは
この法律の正式な名称は、「建物の区分所有等に関する法律」と言います。
名前が少し長いので、「区分所有法」とか「マンション法」等とも呼ばれます。
マンションの場合、一つの建物に対して複数の所有者がいて、各居住スペースは区分されていますよね。
だから、一つの建物を複数の人で所有する場合は、区分所有と表現します。
民法は、マンション等が無かった時代に制定されたので、時代の変化に対応しきれていない部分がありました。
そこで、管理組合や共有部分についての権利関係を細かく規定するために、特別法として制定されたのが「建物の区分所有等に関する法律」です。
特別法ですから、該当する事項については、民法よりも優先して適用されます。
区分所有法は、管理組合の構成、集会での議決、建替え制度、敷地利用権、専用部分の取り決め等が主な内容となっています。
では、具体的な勉強をしていきましょう。
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専有部分と共用部分
この法律において、専有部分とは、区分所有権の目的になる建物の事です。
マンションで当てはめれば、専有部分は各号室の床面積という事です。
専有部分の面積は、壁の中心から計測した水平投影面積で表します。
これに対して、共用部分は、各専有部分以外の共有スペースになります。
エントランスや、エレベーター、廊下等、居住者達で共用している部分です。
共用部分には、法定共用部分と規約共用部分があります。
なんだか覚えにくい名前が出て来ましたが、難しく考える必要はありません。
簡単に説明していきますので、ざっと読んでおいてください。
エントランスとかエレベーターのような場所は、誰かに売ったりすることが出来ない部分ですよね?
このような場所を、法定共用部分と言います。
どんな事があろうと、皆で使うためにあるべき部分です。
ですから、誰かの専有部分にする事はできないようになっていて、登記等も必要なく第三者に対抗できます。
登記なく対抗できるので、そもそも登記自体をすることが出来ません。
これに対して、規約共用部分は、規約で定めることで共用になっている部分の事です。
例えば、集会用の多目的ホールとか、マンションの付随建物、管理人室等のような場所です。
要するに、専有部分と一緒に売却することも可能な場所です。
このような場所は、規約で「みんなで使おうね」という約束をして共用しているわけです。
規約共用部分は、一定の要件を満たせば、第三者が所有権を取得する可能性もありますから、登記をしなければ第三者に対抗できないことになっています。
シンプルに言えば、第三者が取得する可能性が無い部分(法定)と、取得の可能性がある部分(規約)の違いです。
共用部分の補足
共用部分は、区分所有者全員で共有し、その持分は専有面積の割合に応じるのが原則です。
共用部分の管理に瑕疵等があり、第三者に対して賠償責任が生じた場合も、この割合に応じて負担することになります。
また、共用部分だけを個別で譲渡することはできません。
そして、共用部分に著しい変更を加える場合には、集会の議決で、区分所有者と議決権の各4分の3以上の多数であることが必要です。
皆で使う部分なので、厳しい基準になっていますが、規約によってこれを甘くすることもできます。
甘くする場合には、規約で各過半数まで減らす事ができます。
その他の共有部分の管理(著しくない変更)については、集会の議決(過半数)で決められます。
但し、保存行為に関しては、各区分所有者が単独で行う事が出来ます。
改良を目的とし、かつ著しく多額の費用を要しない共用部分の変更については、規約に別段の定めがない場合は、区分所有者及び議決権の各過半数による集会の決議で決することが出来る。(平成10年度 出題肢)
多額の費用を要しない軽微な変更については、「著しい変更」に該当しません。
ですから、規約に特別な定めがなければ、区分所有者と議決権の過半数で変更できます。
共用部分の変更(著しい変更を伴わないものを除く)は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の議決で決するが、規約でこの区分所有者の定数及び議決権を過半数まで減ずることができる。(平成24年度 問題肢)
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敷地利用権
敷地利用権は、専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利です。
マンションの所有者は、専有部分(居室)は自分だけの物として区分所有していますが、土地については自分だけの所有物ではありません。
そこで、共用部分と同じような考え方で、専有面積の床面積の割合に応じて敷地利用権を保有することになっています。
戸建の場合と違い、区分所有の場合は、敷地だけを譲渡することができません。
敷地自体が共用部分と同じような状況なので、専用部分とセットだと考えてください。
管理者
管理者は、建物、敷地、共用部分等の管理を代理する人の事です。
区分所有者は、規約に別段の定めがない限り、集会の議決によって管理者を選任します。
要するに、過半数の議決で選任するという事です。
管理者の解任についても同じです。(第25条)
集会には、議長になる人が必要ですが、これは基本的に管理者が務めます。
管理者が選任されていない場合は、規約に別段の定めがある場合を除き、集会を招集した区分所有者の一人を議長とします。
管理者とは、区分所有者の代表として、建物と敷地の管理の実行を任された人です。
管理者は、集会で議決された事を実行し、管理規約によって与えられた職務権限を行使することができます。
規約に特別な定めがあれば、管理者によって共用部分を所有することもできます。
また、管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければなりません。
管理者の主な職務権限と義務は以下の通りです。
- 職務に関し、区分所有者全員を代理する
- 集会の招集
- 議事運営と議事録の作成
- 集会での事務に関する報告(第43条)
- 管理規約の保管と、閲覧への対応
- 義務違反者に対する訴訟の提起
- その他、委任による職務等
管理者が、その職務の範囲内において第三者に対して行った行為に責任が生じた場合、その責任は、管理者が区分所有する専有面積の床面積の割合と同一です。
管理者だからといって、特別に責任が増えるわけではありません。
補 足
・管理者は、外部からも選任することができますので、その建物の区分所有者でなくても就任することができます。
・管理者は、その職務において区分所有者全員を代理しますから、損害保険の保険金の受領についても行うことができます。また、共用部分等に生じた損害賠償請求や、不当利得による返還金請求についても代理できます。
規約
規約とは、そのマンション等で独自に定めた規則の事です。
ルールブックだと思えばOKです。
この規約の効果は、その建物を使用する人に及びますので、賃借人等にも適用されます。
規約及び集会の決議は、区分所有者の特定承継人に対してもその効力を生じます。
規約については、建物内の見やすい場所に掲示しなければいけません。
利害関係人(建物を使う人達)は、この規約を確認しておく必要がありますから、管理者によって保存し、閲覧の請求に対応しなければならないのです。
管理者は、利害関係人からの閲覧請求を拒むことはできません。
規約は、書面又は電磁的記録(データ)により作成しなければいけません。
規約の設定・変更・廃止については、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の議決が必要です。
最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、公正証書により規約を設定することができます。(区分所有法32条)
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集会
集会の招集は、原則としては管理者の職務です。
集会に参加できるのは、区分所有者です。(占有者や賃借人はダメ)
管理者は、少なくとも年に1回は集会の招集をしなくてはいけません。
また、一定の要件を満たせば、区分所有者側から「集会をしてください」とお願いすることもできます。
この招集依頼の要件は、会議の目的となる事項を示し、区分所有者と議決権の各5分の1以上で管理者に対して請求することです。
管理者が集会の招集をする際には、区分所有者にその開催の通知をすることになっています。
一部抜粋
第三十五条 集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。
2 専有部分が数人の共有に属するときは、前項の通知は、第四十条の規定により定められた議決権を行使すべき者(その者がないときは、共有者の一人)にすれば足りる。
この通知は、少なくとも集会日の1週間前に、会議の目的となる事項を示して、各区分所有者に発しなければなりません。(期間は規約で伸縮可能)
専有部分が数人の共有に属するときの通知は、議決権を行使すべき者にすればよく、共有者間で議決権を行使すべき者が定められていない場合は、共有者のいずれか一人にすればよいということです。
尚、区分所有者が管理者に対して、あらかじめ通知を受け取る場所を通知していた場合は、管理者はその指定所在地へ通知する必要があります。
あらかじめ指定が無い場合は、区分所有物件の専有部分の所在地に通知すればOKです。
議題が特に重要な場合は、一人でも多く出席することが望ましいですよね。
この為、建替えが議題となる場合については、少なくとも集会日の2カ月前に発しなければならないとされています。(但し、この期間は規約で伸縮可能です)
尚、集会は、区分所有者全員の同意があれば、招集の手続きをせずに行うこともできます。
集会の議決権
集会での議決権は、原則として、専有部分の床面積に対する割合に応じて保有しています。
但し、規約で別段の定めがある場合には、そちらが優先されます。
集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがなければ、区分所有者と議決権の各過半数で決められます。(第39条)
要するに、原則としては多数決で過半数を超えれば決まりという事です。
専有部分を数人で共有するときは、その中から議決権を行使すべき者一人を定めなければなりません。
集会においては、規約や別段の定めにある場合を除いて、管理者又は集会を招集した区分所有者の一人が議長となります。
第四十条 専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行使すべき者一人を定めなければならない。
第四十一条 集会においては、規約に別段の定めがある場合及び別段の決議をした場合を除いて、管理者又は集会を招集した区分所有者の一人が議長となる。
集会の議事については、議長は、書面又は電磁的記録により、議事録を作成しなければなりません。
議事録が書面で作成されているときは、議長及び集会に出席した区分所有者の二人がこれに署名押印しなければなりません。
集会において、決議をすべき場合において、区分所有者全員の承諾があるときは、書面又は電磁的方法によって決議を完了し、これを集会の決議とすることができます。(第45条)
集会の決議には、以下の4つのケースがあります。(全員の議決がある場合を除く)
- 5分の4以上
- 4分の3以上
- 過半数
- 5分の1以上
覚え方としては、原則として過半数で決すると考えると良いです。
それ以外は、例外的なものとして覚えましょう。
5分の4以上の議決が必要になるのは、建替えについての議決です。
5分の1以上の議決は、区分所有者から管理人に集会の招集を請求する時です。
これらを覚えることができれば、後は4分の3以上のケースだけですよね?
既にテキストの中で、4分の3以上のケースが2回出て来ましたが、覚えていますか?
【4分の3以上の議決】
- 共用部分に著しい変更をする時
- 規約の設定、変更、廃止
- 大規模な滅失(建物価格の2分の1以上滅失)の復旧
- 専用部分の使用禁止請求
- 競売請求や引渡し請求
- 管理組合の法人化
ポイント
・競売請求は、管理費や修繕積立金を払わない区分所有者に対しての最終手段です。
・建替えの議決に反対した区分所有者は、賛成した区分所有者達に対して買取り請求等はできません。
【過半数での議決】
- 共用部分の変更で軽微なもの
- 管理者の選任と解任
- 利益に反する行為の停止請求(共同の利益に反する行為への訴訟提起)
- 小規模な滅失の復旧
- 議決数の定めがない場合
補 足
小規模な滅失については、各自が保存行為と同じように単独で復旧することができます。
しかし、先に行われた集会で、既に復旧や建替えについての議決がされている場合には、勝手に復旧することができません。
つまり、大規模復旧や小規模復旧について、集会の議決が無かった場合は、勝手に復旧して良いわけです。
尚、共用部分を復旧した際には、他の区分所有者に対して、その専有割合に応じた償還請求ができます。
管理組合
区分所有者は、全員で、建物・敷地・付属施設の管理を行うための団体を構成します。
そして、集会を開き、規約を定め、管理者を置くことができます。(第3条 要約)
この団体の事を管理組合といいます。
管理組合は、必ず全員で構成するという事を覚えておきましょう。
組合員になるのが嫌だとは言えず、自動的に構成員となります。
この管理組合は、法人にすることもできます。
法人にするには、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の議決が必要です。(解散する際も同じ議決数が必要)
名称と事務所を決めて、主たる事務所の所在地で登記すると、管理組合法人となります。
管理組合法人には、理事と監事を置かなければなりません。
区分所有法の過去問集
区分所有法だけを集中して学習できるように作成しています。
テキスト精読後に使用してみてください。
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区分所有法の過去問と解説
区分所有法だけを集中して学習するための過去問集を作成しました。 通勤・通学等で利用できるようにしてあります。 当サイトの無料テキストを確認しながら使うと、効率良く勉強できるようになっています。 【20 ...
まとめ|勉強のコツ
このテキストに書いてある事を覚えていれば、かなりの確率で1問正解できるようになっています。
その効果は、過去問をやってみればわかると思います。
もしも、過去問で不正解になってしまったら、また間違えた箇所をこのテキストで確認してみてください。
最低でも、直近5年分は過去問をやっておきましょう。
平成13年度には、区分所有法と不動産登記法の複合問題のような出題がされています。
不動産登記法の勉強が終わっていない人は、続けて以下のテキストを読んでしまうと良いと思います。
不動産登記法「不動産登記法の宅建無料テキスト|独学合格勉強用!」