宅建士の試験を独学で合格しようとしている人達へ、国土利用計画法の無料テキストを作成しました。
スマホで学習できる無料テキストですので、通勤通学時に数回読んで過去問をやれば、勉強を完了できます。
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総則
この法律は、国土利用計画の策定に関し必要な事項について定めるとともに、土地利用基本計画の作成、土地取引の規制に関する措置その他土地利用を調整するための措置を講ずることにより、国土形成計画法による措置と相まって、総合的かつ計画的な国土の利用を図ることを目的とする。
もしも、誰かが坪単価を釣り上げて取引をしたとしましょう。
すると、本来の土地価格が不明確になってしまいますよね。
更に、その価格を基準として少しずつ高騰していくと、土地バブルが起きてしまいます。
国土利用計画法は、このような不適切な地価の上昇を防ぐための法律です。
冒頭の条文は、意味を理解していれば、特に覚える必要も無い部分です。
つまり、土地の適正価格を保つための法律だと思っておけばOKという事です。
国土利用計画
都道府県の区域で定める国土利用計画を「都道府県計画」と言います。
都道府県が定め、国土交通大臣はこれに意見することができる関係にあります。
これに対し、市町村の区域について定める国土利用計画を「市町村計画」と言います。
市町村が定め、都道府県知事が助言や勧告をする関係です。
全国計画の場合は、国が計画しますので、国土交通大臣が計画案を作成して閣議決定を受けます。
土地利用基本計画
都道府県によって、土地の利用状況は異なりますよね。
そこで、都道府県は、自分の地域の土地利用の目的について、ざっくりとした分類をします。
具体的には、都市地域、農業地域、森林地域、自然公園地域、自然保全地域等の地域を定めます。
これは、ただのエリア分けなので、都市計画の一つ上の分類だと思えば良いと思います。
それぞれの地域名は覚えなくて大丈夫です。
「そうゆうものなのね」と思っておく程度で良い予備知識なので、覚えなくてもOKです。
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規制区域の指定
都道府県知事は、土地の投機的取引が集中的に行われる恐れがある区域で、地価が急激に上昇していく可能性がある区域は、「規制区域」に指定しなければなりません。(第12条)
規制区域に指定された区域内での土地取引は、必ず都道府県知事の許可が必要となります。
都道府県知事の許可がない土地取引は全て無効となります。(第14条)
規制区域で知事が許可するのは、土地の利用目的が「自己居住」・「従来からの事業用」・「公益上必要」等の場合に限定されます。
この許可を受けようとする者は、その土地が所在する市町村長を経由して、都道府県知事に許可申請します。
規制区域の取引について、都道府県知事が不許可の処分をした際には、当該土地に関する権利を買い取るべきことを請求できます。(第19条)
買い手がいるのにもかかわらず、行政側の都合でダメだと言うなら「買い取ってください」と言えることになっているわけです。
ポイント
規制区域は、想定として用意されてから一度も指定を受ける地域が発生しないまま今日に至っています。
この為、重要度としては低いと言わざるを得ません。
試験対策としては、事後届出制以降がメインです。
事後届出制
過去問を研究すると分かってきますが、国土利用計画法は、第23条以降からの出題がメインとなります。
つまり、ここからが本番です。
冒頭からここまでで説明して来た内容は、全体を理解しやすくするためのオマケだと思ってください。
土地売買等の契約を締結した場合には、当事者のうち当該土地売買等の契約により土地に関する権利の移転又は設定を受けることとなる者は、その契約を締結した日から起算して二週間以内に、次に掲げる事項を、国土交通省令で定めるところにより、当該土地が所在する市町村の長を経由して、都道府県知事に届け出なければならない。
事後届出制は、このように規定されて始まります。
早速、要約していきますね。
事後届出とは、「取引が終わったら届出をしてくださいね」というものです。
取引とは、対価が発生する契約だと考えてください。
「売買の予約」についても、取引の場合と結果は同じなので、「売買の契約」と同様に扱われることを覚えておきましょう。
契約締結日(又は予約日)から2週間以内に市町村長を経由して都道府県知事に届出をしなければなりません。
届出をするのは『権利取得者』ですから、買主側だという事を覚えておいてください。
2019年出題有 ↑
国土の利用状況は、市町村長と都道府県知事のどちらも知っておかなくてはならない情報ですので、「市町村長を経由」させる必要があるのだと考えれば良いと思います。
一方で、「何故、事前に届けさせないの?」と疑問に思う人もいるのではないでしょうか。
国土利用計画法には、事前届出制と事後届出制の2種類があり、取引の内容によって分類しています。
どちらの届出をしなかった場合も、取引自体は成立します。
しかし、この法律に違反して必要な届出を行わなかった場合には、罰則があります。
後述しますが、事前に届出をさせるケースは特別な場合です。
ですから、ほとんどの取引は事後届出に該当する事になります。
法令内では、初めに事後届出の説明が記載されていますので、同じように進めていきます。
ポイント
取引の対価が発生しない契約については、事後届出の対象とはなりません。
ですから、相続、抵当権設定の契約、贈与の契約、信託契約等は、対象外となります。
2019年出題有 ↑
対価の授受がない賃借権の設定についても対象外です。
どれも身銭を払って取引するものではありませんよね?
「もらい受ける」・「権利を設定する」・「運用を委託する」等の契約は対象外と言う事です。
贈与契約は対象外ですが、譲渡契約は対価が発生しますので届出の対象となります。
事後届出制の適用規模
事後届出の対象となる地域は、「既に取引事例がある場所」と考えてください。
つまり、大半の地域では、事後届出が適用されるという事です。
取引のデータが既に存在していて、事前に把握する程の緊急性が無い場所です。
でも、事例が少なく、取引金額も大きくなるケースは一応監視する必要がありますよね。
ですから、「大きな取引の時だけは後で届けてね」と言っているわけです。
事後届出は、以下のような場合に必要になりますので、数字を暗記しましょう。
2019年出題有
・市街化区域内の場合は、2,000㎡以上の土地
・市街化調整区域内の場合は、5,000㎡以上の土地
※ 市街化調整区域と市街化区域の線引きがされていない場所を含む
・都市計画区域以外の場合は、10,000㎡以上の土地
※ 準都市計画区域を含む
但し、以下のようなケースでは、事後届出は不要となります。
2019年出題有
- 民事調停に基づく場合
- 当事者の一方又は双方が国等のである場合
- その他、政令で定める場合 (他の法令で許可を受けている等)
補 足
土地の取得者は、その地域内で取得した土地の合計面積で判断をしなくてはいけません。
複数回に渡って取得した場合でも、合計で上記面積を超えれば事後届出が必要です。
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事後届出の届出事項
- 土地契約当事者の氏名・住所
- 契約日
- 土地の所在地と面積
- 土地の権利種別と内容
- 土地の利用目的
- 取引価格(土地の対価)
- その他、国土交通省令で定める事項
普通に考えて、当然に届出をする必要がある内容ばかりですよね。
土地利用の状況を把握するために届出をさせるのですから、それに必要な情報だと考えれば暗記する必要も無いと思います。
後は、実際の出題のされ方を確認しておけばOKです。
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利用目的に関する勧告
都道府県知事は、周辺の地域の適正かつ合理的な土地利用を図るために著しい支障があると認めるときは、土地利用審査会の意見を聴いて、その届出をした者に対し、その届出に係る土地の利用目的について必要な変更をすべきことを勧告することができます。
勧告をする場合は、届出があつた日から起算して3週間以内にしなければなりません。(第24条)
また、この勧告に従わなかった場合には、その事実と勧告の内容を公表されることがあります。
都道府県知事は、勧告に基づき当該土地の利用目的が変更された場合において、必要があると認めるときは、当該土地に関する権利の処分についてのあつせんその他の措置を講ずるよう努めなければなりません。 (第27条)
2つの区域
国土利用計画法には、規制区域の許可申請の他に、事後届出と事前届出があります。
事後届出は「買主」が行うものでしたが、事前届出の場合は、契約の当事者が行います。
つまり、売主も買主も届出が必要という事です。
事前届出は、注視区域と監視区域に該当する土地で必要になります。
それぞれの地域の意味について説明しておきます。
注視区域
注視地区は、都道府県知事が指定することができます。
社会的経済的事情の変動に照らし、一定の期間内に相当な程度を超えて地価が上昇する可能性があり、合理的な土地利用の確保に支障を生ずるおそれがある時に指定します。
注視区域を指定する場合、あらかじめ土地利用審査会と関係市町村長の意見を聴かなければなりません。
監視区域
監視区域も、都道府県知事が指定することができます。
地価が急激に上昇、又は上昇する可能性があり、合理的な土地利用の確保に支障を生ずるおそれがある時に指定します。
監視区域を指定する場合、あらかじめ土地利用審査会と関係市町村長の意見を聴かなければなりません。
補足
注視区域よりも、更に用心が必要なのが監視区域だと思ってください。
単に二段階に分類しているだけです。
届出の手続きについてはどちらも同じです。
事前届出
注視区域に所在する土地について土地売買等の契約を締結しようとする場合には、当事者は、当該土地が所在する市町村の長を経由して、あらかじめ、都道府県知事に届け出なければならない。
その届出に係る事項のうち、土地に関する権利の移転若しくは設定の予定対価の額の変更(その額を減額する場合を除く。)をして、又は土地に関する権利の移転若しくは設定後における土地の利用目的の変更をして、当該契約を締結しようとするときも、同様とする。
監視区域に所在する土地について土地売買等の契約を締結しようとする場合について準用する。
事前届出が適用される土地の規模は、事後届出制の場合と同じです。
都道府県知事は、事前届出から6週間以内であれば、土地利用審査会の意見を聴いて、契約の中止、予定対価の引き下げ、土地の利用目的について勧告できます。
暗記ポイント
事前届出が必要なのは、注視区域と監視区域。
事前届出を届け出るのは当事者。
届出は、市町村の長を経由して、あらかじめ都道府県知事へ。
事前届出の勧告は、利用目的の変更の他、「契約の中止」・「予定対価の引き下げ」にもできる。
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届出制が適用されない場合
他の法律や、法定手続等に基づいた取引は例外として事前届出が不要となります。
【適用されないもの】
- 民事調停法に基づいた土地取引
- 当事者の一方が、国・地方公共団体等
- 農地法での許可を受けている
遊休土地の措置
都道府県知事は、取引の対象地が一定の要件を満たす遊休土地である場合に、その旨を通知することになっています。
都道府県知事は、一定の遊休土地について計画の届出をさせ、助言等をすることができます。
補足
ここは、試験対策的にはそれほど重要ではありません。
遊休土地の措置に関しては、読んでおくだけでOKです。
複合問題対策
国土利用計画法は、その他の法令との複合問題として出題されたこともあります。
今後もこの傾向が続くかは不明ですが、景観法、道路法、河川法等も一緒に学習しておくと良いでしょう。
これらの細かい法令については、基本的なことしか出題されていません。
誰の許可が必要かを覚える程度で良いと思います。
「許可を与える者」の考え方としては、管轄している官公庁が無い場合は、都道府県知事の許可だと考えれば正解率が高まるはずです。
要するに、特定の管理をする官公庁がある場合、その行政長の許可が必要という事になります。
具体的には、以下のようなものがありますので、ざっと目を通しておきましょう。
意味だけ理解すれば十分ですので、丸暗記する必要はありません。
景観法
景観計画区域内で建築物を新築する際には、「景観行政団体の長に届出」が必要。
景観重要建築物の増改築や、景観重要樹木の伐採については、「景観行政団体の長の許可」が必要。
道路法
工事等をする際は、原則として「道路管理者の許可」が必要。
河川法
河川区域で建築物(工作物)の建築、又は土地の掘削等を行う場合、原則として「河川管理者の許可」が必要。
自然公園法
国立公園の特別地域または特別保護地区で,建築物(工作物)の建築・広告物の設置等を行う場合は、原則として「環境大臣の許可」が必要。
文化財保護法
重要文化財等の現状の変更、又は保存に影響を及ぼす行為等を行う場合、原則として「文化庁長官の許可」が必要。
海岸法
海岸保全区域での土石採取、土地掘削、盛土、切土等を行う場合、原則として「海岸管理者の許可」が必要。
港湾法
港湾区域内で、土砂の採取等を行う時は、原則として「港湾管理者」の許可が必要。
国土利用計画法の過去問集
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国土利用計画法の過去問と解説
国土利用計画法だけを集中して学習するための過去問集を作成しました。 通勤・通学等で利用できるようにしてありますので、日々の勉強にお役立てください。 無料テキストを確認しながら使うと、効率良く勉強できる ...
まとめ|勉強のコツ
国土利用計画法は、事後届出を中心に勉強し、その他は予備知識的な覚え方にすると良いと思います。
届出制には、共通点等も多いです。
その中で、微妙に違う部分にクローズアップして覚えてみてください。
頭の整理さえできていれば、試験直前に覚えても良い法令だと思います。
もっと細かく学習できる部分もありますが、試験対策として必要な範囲に絞りました。
もしも、このテキストに掲載されていない内容が過去問で出題されていたとしても、反復して出題される可能性は低い部分です。
過去問10年分のポイントをしっかり押さえれば、十分に合格レベルに到達できるはずですので、頑張ってみてください。