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宅建無料テキスト 権利系法令

借地借家法の宅建用無料テキスト②|借家権の独学はこれで完了!

宅建独学者用に借地借家法のテキストを作成しました。

このテキストは、「借地借家法の宅建用無料テキスト①」の続きです。

前編では、借地権について習得できるように作成されていますので、出来ればそちらから学習すると良いと思います。

 

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借家権

借家権は、建物を借りる権利のうち、借地借家法が適用されるものを言います。

店舗、倉庫等のような建物の種類に関係なく、一時使用のための賃貸借等の場合でなければ、基本的には借地借家法が適用されます。

 

借地借家法が適用されないケースは、その賃貸借がとても短期的、又は部分的な場合です。

具体的には、一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合や、建物の一部を間借りした場合等です。

 

ポイント

借家についての規定は、一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には、適用されない。

 

建物賃貸借契約の更新

建物の賃貸借契約は、実際の事例に当てはめて考えると理解が早いと思います。

例えば、アパートを借りて、その契約を更新する時、どれくらい前までに家主に連絡すれば良いか、といった具合に想像してみるのです。

 

借地借家法では、更新について、以下のように規定しています。

当事者が期間の満了の1年前から6カ月前までの間に、相手方に対して『更新しない』又は『条件を変更しなければ更新しない』という通知をしなかったら、そのまま従前の契約と同条件で、期間の定めがない更新をしたものとみなします

 

要するに、何も言わなければ法律の規定によって更新されるのです。

これを、法定更新と言います。

 

更新の場合、「出ていけ」と言われない限りは、トラブルにはなりませんよね。

ですから、借主にも貸主にも無風通過が不利に働く可能性は低いです。

では、解約の場合はどうでしょうか。

 

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解約について

解約の場合、「出ていけ」という話に直結しますから、更新の時とは少しルールを変える必要がありますよね。

つまり、更新の時よりも、少し借り手を保護する必要があるのです。

 

借地借家法では、解約について、以下のように規定しています。

建物の賃貸人が賃貸借の解約の申し入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申し入れの日から6カ月を経過することによって終了する。(第27条)

また、この申し入れは、正当な事由があると認められる場合でなければすることができません。(第28条)

補 足

正当な事由と認められるには、建物の使用を必要とする事情、従前の経過、利用状況、現況、財産上の給付(立ち退き料)等が総合的に考慮されることになります。

注目すべきは、「賃貸人が」と書いてある事です。

つまり、貸主(大家さん)から解約する場合の事を規定しています。

貸す側の規定を厳しくすることで、借り手を保護しているという事です。

 

賃借人(借主)からの解約申し入れについては、借地借家法に規定がありません。

ですから、民法617条の「期間の定めのない賃貸借の解除」の規定が適用されます。

要するに、3カ月前に賃貸借の解約の申し入れをすれば良いという事です。

賃貸人からの解約は、申入れから6ヶ月経過で終了

※ 但し、正当な事由である事が必要

賃借人からの解約は、申入れから3ヶ月経過で終了

 

借家権の試験問題では、「賃貸人」と「賃借人」の読み間違いに細心の注意を払うようにしてください。

意味が真逆になるので、要注意です。

 

その他

その他、第三章の第一節で読んでおきたい条文を抜粋しておきます。

第29条(建物賃貸借の期間)

期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。

民法第604条(存続期間20年)の規定は、建物の賃貸借については、適用しない。

 

第30条(強行規定)

この説の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。

 

建物賃貸借の対抗力

建物の賃貸借の場合、その登記が無くても、建物の引き渡しが完了していれば、物権を取得した者に対して対抗できます

勿論、賃借権の登記がある場合にも、当然に対抗できます。

 

借地権を勉強した人からすれば、登記が無いのに対抗できるなんて不思議に感じるかもしれません。

しかし、これは実際の話で考えると納得できると思います。

 

例えば、貴方がアパートを借りる契約をした直後に、アパートが売却され、オーナーが変わったとします。

この時、引渡しが完了していれば、登記が無くても新しいオーナーに対して対抗できるという事です。

 

ブラック家主」等と呼ばれる悪質な立ち退き手口が社会問題になっていますが、前提ルールを知っていれば、主張できる権利が見えてくると思います。

貸主側の都合で、簡単に追い出されないようになっている事を覚えておきましょう。

 

そもそも、賃貸の契約にいちいち登記を求めていたら、大変な数の登記が必要になります。

それに、数万円の家賃のために、登記費用を投じるのも現実的ではありませんよね。

 

ですから、建物の賃貸借の場合には、第三者に対抗するために登記を義務付けるわけにもいかないわけです。

賃借権の登記をするとしたら、商業用の場合等、損失額が高額になるケースでしょう。

 

賃料の増減(請求権)

借地権の時と同じように、賃料の増減についての規定があります。

租税負担や経済事情の変動等で賃料が不相当だと思ったら、将来に向って借賃額の増減を請求することができます。

但し、一定期間これを禁止している特約がある場合は、そちらを優先します。

 

営業くん
過去問で出ているので、チェックしておきましょう

平成25年度 出題肢

AB間の賃貸借契約に賃料の改定について特約がある場合には、経済事情の変動によってBのAに対する賃料が不相当となっても、BはAに対して借地借家法第32条第1項に基づく賃料の減額請求をすることはできない。(○)

 

賃料の改定について特約があるので、特約が優先する事を読み取る必要があります。

あまり良い問題ではありませんが、このような出し方もしてくる以上は、備えておくしかありません。

 

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造作物の買取請求権

第33条では、造作についての買取請求権も定めています。

これは、借りた建物に、賃貸人(家主)の同意を得て追加した造作物(畳、建具等)がある場合には、賃貸借の満了時に賃貸人に対して、その造作を時価で買い取ることを請求できるというものです

また、賃貸人から買い受けた造作についても同様に請求できます。

これは、転貸人であっても同じように請求できます。

造作買取請求権をあらかじめ放棄する旨の特約をすることが可能です。(平成23年度 出題有)

 

転借人の保護

建物の転貸借(又貸し)がされている場合に、賃貸人から解約の申し入れをする時は、建物の転借人に通知しなければ、その終了を転借人に対抗できません

建物の賃貸借が期間の満了を迎えることによる終了の場合も、転貸人に通知しなければ対抗できません。

建物の転貸借は、その通知がされた日から6カ月を経過することによって終了します。

 

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借地上の建物の賃借人の保護

借地上の建物が賃貸に使われた場合、そこには事情を知らない住人がいる場合もあります。

借地人が土地を明け渡すことになった場合、追い出されてしまうのはかわいそうですよね。

そこで、このようなケースを保護する条文があります。

第35条

借地権の目的である土地の上の建物につき賃貸借がされている場合において、借地権の存続期間の満了によって建物の賃借人が土地を明け渡すべきときは、建物の賃借人が借地権の存続期間が満了することをその一年前までに知らなかった場合に限り、裁判所は、建物の賃借人の請求により、建物の賃借人がこれを知った日から一年を超えない範囲内において、土地の明け渡しにつき相当の期限を許与することができる。

裁判所が期限の許与をしたときは、建物の賃貸借は、その期限が到来することによって終了する。

意味はわかると思いますが、念のため整理しておきます。

借地権上の建物に住む賃借人が、借地権満了の1年前までに借地契約が満了することを知らなかった場合に限って、裁判所に請求して明け渡し期限を延長してもらえるという事です。

これは、賃借人が借地権満了日を知ってから1年を超えない日程内で許与されます。

そして、許与された期限が到来すれば、建物の賃貸借は終了するという事です。

 

賃借人の死亡

賃借人が死亡した場合、相続人がいれば、その相続人に権利が継承されます。

相続人がいない場合は、内縁の妻又は養子等と同様の関係にあった同居者が継承します。

このような同居者がいない場合には、孤独死として役所対応となります。

使用賃借の場合は、相続人に継承されず、ただ契約だけが終了します。

 

【平成21年度 出題肢】

(前提:Bは賃借人、Cは使用賃借人)

Bが死亡しても賃貸借契約は終了せず、賃借権はBの相続人に相続されるのに対し、Cが死亡すると使用貸借契約は終了するので、使用借権はCの相続人に相続されない。

これは、(〇)の問題肢です。

使用賃借とは、無料で借り受けたものを一定期間で返却するものです。

特定人に対しての行為ですから、相続としての継承はなく、本人の死亡で権利が消滅します。

 

定期建物賃貸借

期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等の書面によって契約をするときに限り、契約の更新がないこととする旨を定めることができます。

 

賃貸人は、あらかじめ賃借人に対して、建物の賃貸借に契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借が終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければなりません

 

この契約期間が1年以上である場合、賃貸人は、期間満了の1年前から6カ月前までの間を通知期間とし、賃借人に対して期間満了により建物賃貸借契約が終了する事を通知しなければ、その終了を賃借人に対抗することができません

通知期間を過ぎてから、賃借人に対して終了の通知をした場合は、その通知の日から6カ月を経過した時まで、賃借人に対抗できません。

ポイント

普通の建物の賃貸借の場合、1年未満の期間で定めた契約は、期間の定めのないものとして扱われました。

しかし、定期建物賃貸借の場合には、あらかじめ事情を説明するわけですから、1年未満の期間設定でもOKです。

 

賃借人の特例解約

定期建物賃貸借によって居住していた賃借人に、どうしても解約させてあげなければいけない事情ができた時のことを定めています。

具体的には、家族の面倒を看なければならない場合等を、以下のような内容で救済しています。

居住用建物の賃貸借において、転勤療養親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申し入れをすることができます

この場合、解約の申し入れの日から1カ月を経過することによって終了します。

この規定は、この建物が居住用の賃貸借で、200㎡未満の建物に係る場合に限ります。

 

取り壊し予定建物の賃貸借

法令又は契約によって、一定の期間を経過したら建物を取り壊すことが決まっている場合は、建物を取り壊す時に賃貸借が終了する旨を定めることができます

この取り決めは、書面でする必要があります。

第三十九条 法令又は契約により一定の期間を経過した後に建物を取り壊すべきことが明らかな場合において、建物の賃貸借をするときは、第三十条の規定にかかわらず、建物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する旨を定めることができる。

2 前項の特約は、同項の建物を取り壊すべき事由を記載した書面によってしなければならない。

 

事業用定期借地権

最後に、混同しやすい部分を復習しておきます。

借地権のテキストで勉強した「事業用定期借地権」についてです。

テキスト①の「定期借地権」の部分を再度読み返して、連動させて考えられるようにしておくと良いと思います。

 

第二十三条 専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を三十年以上五十年未満として借地権を設定する場合においては、第九条及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。

2 専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、かつ、存続期間を十年以上三十年未満として借地権を設定する場合には、第三条から第八条まで、第十三条及び第十八条の規定は、適用しない。

3 前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない

事業用定期借地権の適用は、「専ら事業の用に供する建物」が対象であることを覚えておきましょう。

事業専用の建物が対象ですから、居住用の建物には適用しません。

事業用定期借地権の場合、公正証書で設定しなければいけない点もポイントです。

 

借地借家法の過去問と解説

集中して学習できるように作成した、過去問テキストです。

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まとめ|勉強のコツ

本試験で借家権からの出題がある場合、定期建物賃貸借に関する問題が多いです。

定期建物賃貸借については、細かい部分まで覚えておくと良いと思います。

 

借家権の過去問を調べてみると、前提条件が提示されて、色々なパターンを複合的に判断させる形式になってきていることが読み取れます。

定期建物賃貸借を中心に、幅広くポイントを押える事で確実に得点できると思います。

見た事のない言葉等が出て来た時は、他の問題肢を見て冷静に消去法で判断するようにしましょう。

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