不動産営業としての視点から見ると、アパート経営における家賃保証の考え方には違和感のある部分があります。
家賃保証には、心理的に楽になるメリットがある反面、とても大きなリスクがあると思うからです。
この記事では、不動産投資の初心者でもわかるように、アパート経営のリスクと失敗要因について説明していきます。
失敗の第一歩はここから
不動産投資をする人が増加していますが、それに応じて失敗をする人も増えています。
そこで、アパート経営の失敗がどこから始まるのかをお教えしておきますね。
とても簡単な話です。
収益物件の提案を受ける際、誰もが注目するのは「毎月いくらの収入になるか」ですよね。
そして、その金額に魅力を感じる事が失敗の始まりです。
多くの場合、建築会社が提案した通りの収益は実現できないのです。
その理由も少し説明しておきますね。
建築会社の事業計画書
収益物件を建てる建築会社は、必ず事業計画を持参してきます。
何年で投資資金が回収できるのか等、毎月の収支等を簡易表にしてきます。
しかし、家賃の目減りと修繕費等の正確な額については、正しい試算ができないという事を忘れてはいけません。
それに、これ以外にも、事業計画書には含まれていない費用等はたくさんあります。
建築会社は、不確定で算入できない部分は、意図的に算入しません。
注釈等に「〇〇については考慮しておりません」等と記載して済ませています。
例えば、将来の入退去にかかる仲介手数料と広告料の他、思わぬ修繕費用等です。
各社が想定値での算入をしていますが、それでも不足している事が圧倒的に多いのです。
そして、最大の盲点は、「将来の売却価格を提示できない事」です。
事業がままならなくなり、物件を手放したいと思った時に知らされる査定額は、想像以上に低い事が多いという事です。
家賃保証の仕組みと矛盾
もしも、こんな事が起こったら、どう思うか想像してください。
あなたの給料が、毎月銀行に50万円振り込まれるとします。
ある年、全ての銀行の月額手数料が10万円になり、銀行口座から給料を受け取ると40万円に減ってしまう事になりました。
ただし、特例措置として、約30年以上に渡って同銀行を利用すれば、今までに支払った手数料が少しだけ返還されます。
あなたは、そんな銀行を使いたいと思うでしょうか。
また、良い条件だと思えますか?
こんな事態になったら、誰もが会社から現金で給料を支給してもらうことを望みますよね。
実は、家賃保証の仕組みは、これと殆ど同じようなサービス(料金体系)なのです。
先程の例で銀行が受け取っている10万円の手数料は、毎月取られる保証料(家賃保証会社の利益)と同じです。
一般的には、賃料の10%が家賃保証料としてとられてしまいます。
そして、銀行から30年後に一定額返還される部分が、投資額を回収した後に得られるあなただけの家賃収入部分に当たります。
つまり、物件の借金を返済した後の収入のことです。
でも、考えてみれば、家賃保証をしなければ、もっと早くこの状態になれますよね?
本来、あなたの利益を渡す必要などないわけです。
入居者がいると思うから賃貸事業を始めたはずです。
それなのに、わざわざ入居者が入らなかった時の保険をかけて利益を減らしているわけです。
家賃保証は、言い方を変えれば、本来受け取るはずの収入が10%減るサービスです。
ですから、事業期間を10%延長しなければ、彼等に支払った手数料分の収益を得ることはできません。
これはこれでリスクが増していると思いませんか?
管理会社に利益を取られた分、長く収益を回収し続けなければらならくなるだけの事です。
実際に、家賃を保証してもらう事態が起きる可能性を考え、どちらがリスクが高いか比較してみてください。
家賃保証会社は儲かっているのですから、答えは明らかだと思います。
保証会社が儲かるということは、あなたは家賃保証をかける必要がなかったという証拠でもあるのです。
空室リスクは誰にとっても同じ
仮に、あなたが誰かの家賃保証をするとしたら、どんな場合だか考えてみてください。
簡単に借り手が見つかる物件なら、保証して利益を得られると思いませんか?
借り手を見つければ毎月家賃の10%がもらえる約束だとすれば、オイシイ話です。
自分は一銭も投資せず、毎月家賃の10%をもらえるなんて、夢のような話です。
でも、周辺の状況に変化があったとか、建物が古くなってきたら、家賃を下げないと厳しくなりますよね。
それどころか、空室リスクを負うのは嫌なので、保証を止めたいと思うかもしれません。
オーナーに対して「今までよりも家賃を安くするなら保証を続けますよ?」と提案したくなるでしょう。
保証会社もこれと全く同じ状況になってしまう事が多いので、トラブルが絶えないというわけです。
結局のところ、確実に入居者が入ると思える物件でなければ保証などできないのです。
ですから、そもそも空室が発生するような立地や、コンセプトの悪い物件を持たない事が大切です。
少し工夫すれば入居者が入るような物件であれば、家賃保証など全くいらないのです。
建築会社の恐ろしい提案
新築の際には、不動産屋で入居者を募集すれば簡単に満室になります。
しかし、わざわざ家賃保証の会社に手数料を払って収益を減らす人が多いのです。
将来の空室リスクのために、自分で収益を貯蓄していれば家賃保証はいらないのですが、わざわざ一番収益がとれる時期に利益を搾取させています。
建築会社は、「家賃保証を付ければ安心です」等と提案するでしょう。
そして、とても収益率が良く見える事業計画書を持って来ます。
人は、自分に都合の良い幸せな展開を信じたくなるものなのでしょう。
それが失敗の始まりなのです。
税理士のアドバイスで破産
大抵の資産家(地主)は、税理士がいます。
そして、賃貸経営をする際には必ず相談をしています。
それなのに、実質的な破産に追い込まれている人はたくさんいます。
不思議に思いませんか?
この理由は簡単で、税理士は不動産のプロではないからです。
税制面のアドバイスをしているだけであって、その事業が安全だと言っているわけではありません。
「収益物件は相続税対策になる」という事実はありますが、投資資金が回収できるかどうかは別問題です。
税理士は、無事に資金回収できることを前提にアドバイスをしているだけに過ぎません。
参考記事
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節税のつもりで破産する人
不動産を用いた節税対策では、長期的な視点でお金の流れを見ています。
ですから、計画通りに行かなくなった時には、大変なことになる場合もあります。
最初の頃は誰もが順調ですが、段々と計画とズレが生じていきます。
節税をするつもりで始めた賃貸経営で大失敗し、全ての土地を売らなければならなくなる人もいます。
これでは、節税をしない方がまだ良かったという結果ですよね。
家賃保証という言葉に隠れたリスクは計り知れません。
だからといって、不動産投資がダメだというわけではありません。
成功事例もたくさんあるはずです。
重要なのは、今回ご紹介したような公平な視点で客観的に損得を判断することです。
保険業と同じで、人の不安心理にアクセスするビジネスは、過剰な保険をかけてしまいがちなのです。
失敗の原因はシンプル
本来、月々の返済額を収めて残ったお金は、更に返済に充てるのがベストです。
本来、借入額を全て返済してからが「本当の利益」です。
ですから、余ったお金があるなら繰り上げ返済をした方が賢明です。
計画通りにいかなかった時に備えて借金を減らしておけば、家賃収入が減った時にも調整が効くかもしれません。
事業を失敗しにくくするのは、オーナーの役割なのです。
余った収入を「おこずかい」という感覚で使ってしまう人は、後になって苦しむタイプと言えるでしょう。
「返さなくてはいけないお金がある状態」であることを忘れてはいけないのです。
失敗の原因は、このような意識のズレと欠如から始まっています。
将来のリスクを把握する
建物の解体時には、工法・建材・規模等によって、多額の費用がかかる場合があります。
建築会社の多くは、将来の解体費用についても事業計画に算入しません。
しかし、建物はいつか壊しますよね?
もう一度、アパートを立て直すにしても、売却するにしても、解体は必要です。
解体費用を差し引いた金額で売却しなければ売れないケースもありますので、避けては通れない問題です。
こう考えると、収益物件は「いかに早く投資資金を回収するか」に尽きます。
早く回収できるほど、売却時のリスクも、事業リスクも小さいのです。
そう考えれば、家賃保証で10%も取られている場合ではありません。
まとめ
収益物件を持つことは、決して悪い事ではありません。
私が言いたいのは、大半のオーナーがベストな選択をしていないという事です。
最も安全なプランは、「自分で募集しても入居者が入る物件」を持つ事です。
そうすれば、家賃保証は不要です。
もし、募集しても入居者が入らない物件ならば、保証会社も家賃保証はできないのです。
それには、近隣物件には無い特徴や、家賃での差別化が必要です。
そうなれば、できるだけ安いコストでコンセプトのある建物を建てられる建築会社を見つける必要が出てきます。
このような基本的な学習を経てからでないと、最悪の場合、「破産」という結末が待っています。
目先の利益に惑わされて始めるのは、怖すぎると思いませんか?