これまで、不動産売買の契約は対面で行う必要がありました。
しかし、間もなくこのような常識が過去のものとなります。
5Gやメタバース事業の広がりは、不動産売買の電子契約の拡大に拍車をかけることになりそうです。
コロナ渦でリモートに慣れた人も多い為、個人的にはスムーズに広がりを見せ、すぐに常識化すると思っています。
特記しておかなくてはいけない点としては、電子契約に多くのメリットがある事です。
電子契約を加速させる主要因と言っても良いメリットがありますので、記事の中でダイジェスト的にご紹介しておきたいと思います。
いち早く、不動産の電子化取引について掴んでおきましょう!
電子契約で変わる部分
2020年4月1日には大改正された民法が施行され、2021年5月12日にはデジタル改革関連法が成立しています。
これに伴い、宅建業法等にも改正が施され、今後のデジタル化にも対応し始めています。
当サイトの無料テキストや改正関連記事の中でも改正点を確認できますので、参考にしていただければと思います。
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賃貸契約業務においては、既に電子的な契約が認められており、重説等も諸要件を満たせば対面交付しなくても完結できるようになっています。
売買取引についても、2022年5月までに施行される予定です。
不動産売買の電子契約が法律上で認められると、不動産のオンライン取引が可能になります。
そして、取引の相手方の承諾を得れば、重要事項説明書を電子文書で提供することが業として認められます。
この為、電子契約では、これまで必須とされていた重要事項説明書への宅地建物取引士の押印が不要になります。
売買契約書においては、取引当事者の承諾を得た上でなら、不動産契約書を電子文書で提供することができるようになります。
重説と同様に、契約書への宅地建物取引士の押印が不要になります。
不動産業者の対応格差
大手不動産業者は、電子契約についてのシステムをいち早く導入するでしょう。
一方で、小さな不動産業者等は、電子契約のためのシステム導入が遅れるケースもあると思います。
電子契約には、電子印鑑等を使用することになりますし、ITに弱い不動産業者は既存の方法で取引をしたがるでしょう。
結果、時代の波に乗り遅れることになると思います。
実は、取引が多い不動産業者である程、電子契約にするメリットは大きなものとなります。
不動産売買の電子化メリットについても、ダイジェスト的にご紹介しておきますね。
電子契約のメリットは大きい!
不動産売買の電子契約によるメリットは、取り扱う不動産の種類によっても異なる部分がありますが、主要な部分は同じです。
メリットを論じるのは簡単なのですが、大切なのは「誰にとってのメリットなのか」という視点ですよね。
電子契約化のメリットは、「不動産業者にとって良い部分」と、「取引をする人にとって良い部分」の2つに分類することが出来ます。
それぞれに共通する点としては、電子契約によって印紙税がかからなくなるという点が挙げられます。
電子契約は、印紙税法上の課税物件に当たらないので、収入印紙を貼付する必要がないのです。
取引金額が大きい契約では、数万円のコスト減になりますので、電子契約を選ぶ人が増える要因になります。
不動産業者でのメリット・デメリット
不動産業者側では、以下のようなメリットが発生します。
効率・コストの面で大きな変化となる為、多くの不動産業者では電子化を進めることになるはずです。
業者メリット
- 書類の保管がデータになり、棚や倉庫が縮小できる
- 運賃や人件費のコスト削減になる
- 遠方の契約がしやすくなる
- 印刷コストがなくなる
- 店舗の立地的不利がなくなる
業者メリットとしては、コスト的なメリットが大半を占めます。
書類の整理や、保管業務の効率化については、当初は「今後の書類があまり増えない」といった変化になります。
将来的に取引の殆どが電子契約で行われる状況になれば、大きなコストダウンとなるでしょう。
意外に大きな部分としては、コピーや印刷によるコストが減る事だと思います。
不動産業者のコピー機は、印刷機レベルでの使用量になっているケースも多いので、控え書類等の印刷が減る効果は大きいと思います。
また、集客をネット上(マッチングサイト等)で完結できる会社は、店舗の立地が悪くても事業が成り立つというメリットがありそうですね。
業者デメリット
- クラウドサービスやシステム導入にランニングコストが発生する
- セキュリティー対策の強化
- 契約書の作成能力とチェック能力が問われる
電子契約には、一定のIT環境が必要です。
多くの場合、クラウドサービス等を利用することになると思いますが、この際にかかる年間費用はデメリットの1つです。
セキュリティーについても、今まで以上の対策が必要になる事もあると思いますので、デメリットと言えそうです。
しかし、メリットと相殺した時、コスト削減効果が上回ると思われますので、あまり気にする業者はいないかもしれません。
最も大きな変化としては、契約書の修正作業等が発生しないようにする事や、民法改正についての知識等が問われる事です。
民法改正で契約不適合責任という考え方が規定された事で、契約書に記載する文言がこれまで以上に重要になっています。
電子保管される契約書の出来が裁判等の際に非常に大きなポイントになり、且つ、決定的な証拠にもなり得るからです。
この事に気付いていない担当者(業者)は、まだまだ多いように思います。
改正に対する意識が低い業者や、従前の雛型を今でも使用している事例さえあります。
改正に対応した契約書作成の重要性が理解されるのは、実際にトラブル(裁判)が発生してから・・・という事になるのかもしれません。
ユーザー側のメリット・デメリット
売買をするエンドユーザー側のメリットとしては、印紙税が節約できる点が最も大きな点かもしれません。
また、自宅で契約できるという点についても大きなメリットとなるケースがあるでしょう。
高齢者・障害者・病人等が契約者となる場合でも、電子契約であれば契約が可能な場合もあるでしょう。
今までは取引を完結することが難しかった人達にも契約機会が広がる効果があると思います。
一般ユーザーのデメリット
メリットがあれば、必ずデメリットも存在するものですよね。
あまりこの部分について書いている記事がないようにも思います。
実務経験の視点から思うのは、重要事項説明の内容について理解不足が生じる可能性です。
対面での説明に比べ、見落としや理解不足が増える可能性があり、これに伴う解約トラブル等が増えるかもしれません。
営業の立場から考えると、しばらくは「できれば対面で説明させてください」とお願いする営業マンが多いのかもしれません。
また、電子契約では担当者が見えにくいという点もデメリットになる気がします。
担当者と顔を合わせる機会も少なくなりますので、後になって「誰に聞いたらいいのか分からない」といった事も起こりやすい気がします。
不動産業界は人員の入れ替わりが比較的に多いので、業者の管理体制等への信頼度が大切になるのではないでしょうか。
契約書作成能力への変化
最後に、一般ユーザーの方々に知っておいていただきたい事があります。
契約書への記載事項は、各営業マンの知識や文章力によってかなり差が出ます。
これは、昨今の民法改正で「瑕疵担保責任」という法律用語が無くなり、「契約不適合責任」という名称に生まれ変わった事が関連しています。
簡単に説明すると、従来と大きく変わった点は2つです。
改正変化 その1
瑕疵担保責任では「隠れた瑕疵があるか」が問題になっていましたが、契約不適合責任では「契約書に書かれていたかどうか」が問題になります。
これは、契約書の中に経緯や立場等を記載しておくことで、裁判発生時に大きな影響を与えるケースも出てくるということを意味します。
大手営業マンでも、買主に不利な記載になっている事に気付かない人はいるはずです。
実際、働きながら法律知識を最新の状態にできている人は意外に少ないと感じますし、買主の無過失を明確にしておく意識や文言にこだわることができる営業マンの契約書はどこか一味違うものです。
今後、仲介手数料の意味(価値)にも直結してくる部分だと思います。
改正変化 その2
民法改正により、契約不適合責任となった事で、売主の責任を追及するための手段が増えました。
つまり、買主がとれる選択肢が増えたのです。
改正民法では、買主に5つの権利が認められています。
「追完請求権」「代金減額請求権」「損害賠償請権」「催告解除権」「無催告解除権」の5つです。
売主が宅建業者の場合は、契約不適合責任を免責とすることができませんが、個人間売買の場合には免責とすることもできます。
諾成契約なので、当事者間の協議によって決定できるわけです。
免責事項の記載の有無は、引き渡し後のトラブルに発展する事も多いので、個人間売買の場合は特に取り扱いに注意が必要です。
高額取引の場合は、実績と経験があり、尚且つ、法律知識に長けた担当者であることが重要になるという事ですね。
まとめ
不動産の電子契約は、近い将来、メタバースによる仮想契約室等を利用するようになると思います。
そして、将来的には殆どの人が電子契約を選ぶ時代になっていく予感がします。
アナログの良さもありますが、メタバースを利用する事でのメリット等も付加されていくと思いますので、電子化の潮流は変わらないでしょう。
不動産関係者は、メタバースと電子取引についてアンテナを立てて情報収集しておく必要がありますね。
エンドユーザーの方々については、電子契約ができる不動産業者を選ぶと印紙税が節約できます。
メリット・デメリットをよく理解して、業者選びをしていただければと思います。