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宅建無料テキスト 建築基準法⑤

この記事は、「無料テキスト 建築基準法 ④」の続きです。

法令上では、建蔽率よりも先に容積率が出てきますが、建蔽率を理解してから容積率を学習したほうが分かり易いと思いますので、順番を変えています。

 

 

建蔽率

建蔽率(けんぺいりつ)とは、通常は建物の1階床面積を意味します。

正確には、敷地面積に対する建築面積(水平投影面積)の割合のことです。

つまり、真上から見て建物の輪郭となる部分の面積です。

 

建築面積は、壁や柱の中心線(壁芯)で計算し、この中心線から1mを超えて突き出た部分があると、建築面積に算入しなければいけない部分が発生します。

少しややこしいかもしれませんが、1m以上突き出た部分の先端から1m後退した部分までを算入します。

 

例えば、壁芯から1.8m突き出したバルコニーの場合なら、0.8m突き出した部分までを建築面積に算入しなければいけないという事です。

 

複数の用途地域をまたぐ場合

2つ以上の用途地域にまたがっている土地の場合、建蔽率はそれぞれの部分で計算したものを合計(按分)することになっています。

建築物に対する規定については、面積の大きい方の用途地域の規定が適用されます。(第91条)

 

例えば、全体面積が100㎡の土地で、建蔽率が50%と40%の部分に分かれていたとします。

仮に、70㎡(建蔽率50%)+30㎡(建蔽率40%)とします。

この土地の建蔽率を求めると、以下のようになるということです。

(70×50%)+(30×40%)= 35+12 =47(%)

 

この土地では、47%の建蔽率が適用されることになります。

 

建蔽率の緩和

建蔽率には、いくつかの特例があります。

緩和とは、ゆるくすることですから、条件緩和によって建蔽率が大きくなるという事です。

 

以下の条件に該当する土地は、元々の建蔽率に10%足すことができます。

つまり、少し大きな建物が建てられるようになるということです。

 

重要ポイント
  • 防火地域内にある耐火建築物
  • 角地に該当する敷地
  • 特定行政庁が指定する地域内の建築物

2019年出題有

ポイント

防火地域内の耐火建築物を角地に建てた場合、建蔽率は合計で20%アップします。

 

建蔽率の制限がかからない場合

以下に該当する場合は、建蔽率に対する制限がかかりません。

  • 建蔽率の上限が80%とされている防火地域内に建てる耐火建築物
  • 巡査派出所・公衆便所・公共用歩廊・その他これに類するもの
  • 公園・広場・道路・川・その他これらに類するもので、特定行政庁が安全上支障無いと許可した場合

 

建蔽率のパーセンテージ

用途地域ごとに、基本となる割合(パーセンテージ)が決められています。

都市計画をする際は、この中から適切な割合設定をする事になります。

 

第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、工業専用地域内の建築物

30%、40%、50%、60%のうち都市計画において定められたもの

 

第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、準工業地域内の建築物

50%、60%、80%のうち都市計画において定められたもの

 

近隣商業地域内の建築物

60%、80%のうち都市計画において定められたもの

 

商業地域内の建築物

80%

 

工業地域内の建築物

50%、60%のうち都市計画において定められたもの

 

用途地域の指定のない区域内の建築物

30%、40%、50%、60%、70%のうち、特定行政庁が都市計画審議会を経て定めるもの

ポイント

試験対策上で時間が無い場合は、80%以上で定められる地域だけ覚えておくと良いと思います。

それ以外は、街並を想像すれば、大体の判断ができるでしょう。

用途地域の指定のない区域内の建築物は、30%、40%、50%、60%又は70%のうち、特定行政庁が土地利用の状況等を考慮し当該区域を区分して都道府県都市計画審議会の議を経て定めます。(第53条1項六)

 

容積率

容積率とは、簡単に言えば総床面積の割合です。

敷地面積に対して、どれくらいの延べ床面積まで建てられるのかを表します。

 

容積率は、用途地域に応じて、50%~1300%までの間で定められています。

高い建物が多い場所は、容積率が高く設定されている場所という事です。

駅前などの商業地域は高層建築物が多いですよね?

逆に、住宅街は、容積率が低く設定されているので、高い建物が建築できないという仕組みです。

 

例えば、土地の面積が100㎡で、容積率が80%なら、延べ床面積は80㎡以内になるということです。

 

容積率適用の特例

容積率には少し面倒な特例ルールがあります。

少し理解しにくい部分かもしれませんが、重要な部分なので頑張って読解してみてください。

以下の赤枠内のような場合は、その地域で決められている容積率よりも優先されますので注意が必要です。

 

前面道路(前面道路が複数ある場合は、幅員が大きな方)の幅員が12m未満である建築物の容積率は、その前面道路の幅員のメートル数に、以下の数値を乗じます。

そして、その答えと既存の容積率を比較し、容積率が小さい方を適用するというルールになっています。

この際、セットバック(42条2項道路)に提供した部分は、容積率の対象面積に入れてはいけません。

 

住居系の地域の場合、幅員に40(%)を乗じます。

それ以外の地域の場合、幅員に60(%)を乗じます。

但し、特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て定めるものは、その数値を乗じます。

 

例えば、容積率が200%に定められている住居地域内で、前面道路が4mの物件があったとします。

先程の特例に当てはめると、4×40=160です

 

特例計算の容積率が160%で、元々の容積率が200%ですから、小さい方の160%が適用されるということです。

特例計算の容積率は、元々の容積率が大きく、道路幅が狭い場合に該当しやすくなります。

 

例外的に床面積に算入しないもの

建築基準法には、例外として、建物の延べ床面積の中に算入しなくて良いとしている部分があります。

実務上でも大事な部分なので、試験での出題の可能性も高いと思います。

床面積に入れなくて良いのは、以下のような部分です。

 

  • 奥行きが2m以内のバルコニー
  • その部屋の床面積の2分の1以下のロフト
  • 全床面積の5分の1未満のビルトインガレージ
  • 共同住宅の廊下や階段
  • エレベーターの昇降路(平成9年改正)
  • 全床面積の3分の1未満の広さで造られた地下室

地下室は、天井が地盤面からの高さ1メートル以下にあるもの

 

補足

以前は、老人ホーム等の延べ床面積には、地下部分も含めることになっていました。

ですから、地下室を造ると、その分だけ地上階の部屋が狭くなってしまう問題があったのです。

法改正によって、現在では住宅と同じように全床面積の3分の1の広さまでは容積率を気にせずに造れるようになっています。

 

2019年の改正点

平成30年9月25日に、改正した建築基準法施行令が施行されました。

  1. 木造建築物等である特殊建築物の外壁等を防火構造とすべき木造の特殊建築物の範囲が見直されました。  
  2. 接道規制の適用除外に係る手続が合理化され、一定の基準(建築基準法施行規則に規定)に適合する建築物について、建築審査会の同意が不要となっています。
  3. 接道規制を条例で付加できる建築物の対象が拡大されました。袋路状道路にのみ接する大規模な長屋等の建築物について、条例により、共同住宅と同様に接道規制を付加することが可能になります。
  4. 老人ホーム等(老人ホーム等の共用の廊下等)の容積率規制について、共同住宅と同様に、共用の廊下・階段の床面積を容積率の算定対象外としています。
  5. 日影規制を適用除外とする特例許可を受けた建築物について、一定の位置及び規模の範囲(位置及び規模の範囲については、関係政令の整備等に関する政令に規定)内で増築等を行う場合には、再度特例許可を受けることが不要となりました。  
  6. 仮設興行場等の仮設建築物の設置期間の特例を規定しました。
    仮設建築物のうち、オリンピックのプレ大会や準備等に必要な施設等、特に必要があるものについて、建築審査会の同意を得て、1年を越える存続期間の設定を可能としました。
  7. 宅配ボックス設置部分を容積率規制の対象外とする改正が行われ、オフィス・商業施設などにも宅配ボックスを設置しやすくなりました。

二つの用途地域にまたがる場合

建築物の容積率に関する制限を受ける地域が、2つ以上にわたる場合のルールです。

法令上では、「敷地面積に対する割合を乗じて得たものの合計以下でなければならない」と表現されています。(第52条7項)

分かりにくい表現ですが、問題文の中で出る可能性がありますので掲載しておきました。。

一応掲載しましたが、法令上の言い回しについては、過去問で慣れていけばOKです。

 

用途地域が二つ以上の地域にまたがることは、実際の取引でも結構あります。

基本的な考え方は、それぞれの地域ごとに容積率の計算をして、それを合計します。

この計算は、法令的には『加重平均を求める』という言い方をします。

 

例えば、全体の面積が100㎡の土地で、そのうち60㎡分が容積率80%40㎡分が容積率100%だったとしましょう。

これを、道路幅員の特例にはかからないものとして計算してみましょう。

 

60㎡×80%=48㎡

40㎡×100%=40㎡

合計で88㎡となり、これが床面積の限度ということになります。

 

ポイント

用途地域が2つ以上にまたがる場合、建物を建築する際の「採光・用途地域・最低敷地面積」等の規定について、どちらの用途地域の制限を採用するかという問題が生じますよね?

このような建築上の規定については、面積が大きい用途地域の規定が採用されます。

建築できる建物についても、面積が大きい方の用途地域の規定を適用します。(第91条)

 

計画道路の扱い

建築物の敷地が都市計画において定められた計画道路に接する場合や、敷地内に計画道路がある場合の扱いについても定められています。(第52条10項)

参考までに以下の条文一節を読んでおきましょう。

特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて許可した建築物については、当該計画道路を第二項の前面道路とみなして、同項から第七項まで及び前項の規定を適用するものとする。この場合においては、当該敷地のうち計画道路に係る部分の面積は、敷地面積又は敷地の部分の面積に算入しないものとする

 

容積率のパーセンテージ

法令上では、以下のような表記で記されています。

第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域内の建築物(第六号に掲げる建築物を除く。) 十分の五、十分の六、十分の八、十分の十、十分の十五又は十分の二十のうち当該地域に関する都市計画において定められたもの

これだと分かりにくいので、このテキストではパーセンテージ表記にします。

 

第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域内、の建築物

※ここに田園住居地域が追加されると思われます。(確認後修正予定

50%、60%、80%、100%、150%、200%のうち都市計画において定められたもの

 

第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域内、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、準工業地域内の建築物

100%、150%、200%、300%、400%、500%のうち都市計画において定められたもの

 

商業地域内の建築物

200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、1100%、1200%、1300%のうち都市計画において定められたもの

 

工業地域、工業専用地域内の建築物

100%、150%、200%、130%、140%のうち都市計画において定められたもの

 

用途地域の指定のない区域内の建築物

50%、80%、100%、200%、300%、400%のうち、特定行政庁が土地利用の状況等を考慮し、当該区域を区分して都道府県都市計画審議会の議を経て定めるもの

 

まとめ|勉強のコツ

建蔽率と容積率は、建物を建築する上で大変重要な数値です。

これを巡って起きたトラブルが、訴訟に発展したケースもあります。

このような事情からも、試験には出題される可能性が高い部分です。

過去問の傾向をよく掴んで、必要な情報を的確に覚えるように意識してください。

 

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