今回は、そんな常識を覆す営業マンの話です。
不動産営業マンの中には、一定の比率で常識破りな営業スタイルの人が存在しています。
そして、彼等は、意外に売れている人が多いのです。
この記事では、お客様に暴言を吐いても売れる営業マンの謎に迫りたいと思います。
伝説の接客
不動産会社に入社したての頃、直属の上司から不思議な話を聞きました。
過去に全店舗でトップになった営業マンが、お客様をよく泣かせていたというのです。
そして、最後にはそのお客様が「買わせてください」と懇願するのだそうです。
もはや、接客と言っていいのかわからない状況ですよね。(笑)
でも、そのお客様がドMだったとか、そんな落ちでもないのです。
その営業マンには、このようなことが度々あったと聞きました。
一度は怒って離れたお客様が、後日再び戻って来て、「やはり、貴方から買いたい」と言われたこともあったそうです。
伝説の接客として、会社内で語り継がれていたのですが、今でもにわかに信じられないくらいのエピソードがたくさんあります。
一体どうゆう事なのか、気になりませんか?
本人に事実確認してみた
私は、機会がある度に、複数の営業仲間からその伝説の接客について情報を集めました。
その後、ついに伝説の営業マン本人とも話をする機会も得ました。
その営業マンは、一見して普通の人です。
しかし、独自の正義感と、信念を持っている人でした。
そして、その正義は、相手が誰であろうと譲らないものでした。
私からすれば、相手は顧客なのですから、「言ってはいけない事」のラインを超えているとしか思えませんでしたが、彼の中では正義だったわけです。
そこで、私の疑問を素直にぶつけてみると、こんな答えが返ってきました。
「俺は一生懸命やっているから、やる気のない客は相手にしないんだよ」
正直、リアクションに困ってしまう返事でした。
でも、明らかに他の営業とは違うものを持っている人なのです。
やる気の無い客は、自分のような一流の営業マンが相手をするのが勿体無いと言い切るのです。
仕事と、自分の信念について、それだけの自信があるという事なのだと思いますが、なかなかそこまでは言えないですよね。
でも、考えてみれば、「それが言える人だから売れる」という側面もあります。
顧客に対してヨワヨワな営業マンよりも、ハッキリと真実を伝え、客が怖がるくらいの営業マンのほうが売れるという事です。
お客が泣いた理由
お客様を泣かせたエピソードについても聞いてみました。
そのお客様は、まだ家探しを始めたばかりで、欲張りな希望条件を持っていたのだそうです。
そもそも、探し始めたばかりの人は、そういった傾向があるものです。
日当たりが良く、駅から近く、庭が広く、値段が安いといった、夢みたいな条件です。
そこで、普通の営業マンなら、優しく穏やかに「現実には厳しいです」等と、柔らかく説明していきます。
しかし、伝説の営業マンですから、彼の場合はそんなことはしません。(笑)
彼は、顧客に対してこう言ったのだそうです。
「そんな夢みたいな物件はありませんよ?」
「あったら僕が買いますから、教えてください」
「そのまま探していても一生見つかりませんから、他の会社へ行ってもらえますか?」
すごいですよね。
お客様に言って良いかどうかは別として、頭で思っていたとしても、なかなかそこまで言えないものだと思います。
私は、決して、このようなスタイルを奨励したいわけではありません。
そもそも、誰にでもできる営業スタイルではありませんし、真似したくてもできないでしょう。
やり方はどうあれ、そんな事ができる人がいる事に驚嘆したのを覚えています。
何故、顧客は戻ってくる?
最も不思議なのは、そこまでボロクソに言われた顧客が、何故再び店に戻って来るのかということです。
おそらく、お客様の頭の中には、彼の言葉が強烈に残っていますよね。
その為、当然ながら本当に他のお店へ行く人もいたそうです。
そんな時、伝説の営業マンは、最後に必ずこう伝えていたそうです。
「僕は、本気で貴方達のことを思って言っただけですから」
こうして、捨て台詞のような言葉を耳にしながら、そのお客は別の店に行きます。
やっと、普通の営業マンが担当になり、ホっとすることでしょう。
でも、普通の接客をする営業マンから色々と教わるうちに、ある事が分かってくるのです。
それは、「暴言を吐いた営業マンの言っていたことは嘘ではなかった」という悟りです。
説明の方法や印象は大違いですが、他の会社の営業マンにも同じような事実を伝えられるからです。
そして、「あの人は、本気で私達を叱ってくれていたのだ・・」と気付きます。
更に、考えてみれば、顧客に対してあそこまで本気で言える人はそういないと、感動すら覚えてしまうのです。
そして、本物の営業マン、本物の顧客愛、といった感覚を覚え始めます。
ジワジワと、彼の本気さが身に染みてくるわけです。
アメと鞭のような効果で、買わないはずの顧客の意識を変えてしまうのでしょう。
そして、顧客は「あの人の言う事は本物だ」と信じて戻ってくるのです。
これは、真似しようとしてもできないカリスマ的な魅力ですね。
まとめ
不動産営業マンには、本当に色々な人がいます。
伝えるべきことは同じなのですが、そのノウハウは千差万別だということです。
営業マンがお客様のためを思ってとる行動が、全て許されるわけではありません。
でも、本気で伝える程、相手の心に深く届くのかもしれませんね。
そんなことを教えてもらった出来事でした。