不動産売買の仲介手数料は、高額に感じる人が多いと思います。
仲介手数料の計算法には、『3%+6万円』という即算式があり、土地価格の高い場所だと高額になります。
では、何故そのような高額な限度設定が法律で認められているのでしょうか。
この部分については、あまり議論されることが少ない気がしますし、営業マン達でさえも認識が甘いところだと思います。
そこで、仲介手数料が高額に設定されている理由についてまとめておきたいと思います。
不動産業者が負う責任
不動産取引を仲介する際、仲介業者には一定の責任が発生します。
これは、宅建業法の中で細かく規定されていますので、宅建受験生には説明不要な部分かと思います。
実務の視点から申し上げると、机上で勉強する以上の責任があると感じますし、実際に多くの裁判が起こされています。
意外に知られていませんが、不動産取引でのトラブルで仲介業者の責任が問われた裁判はたくさん存在しているのです。
仲介手数料の意味
仲介手数料は、契約業務の他に、不動産業者にそれだけの責任を負わせるという意味があります。
雇っている不動産営業マンの人件費や、広告費等もかかりますので、これらの必要経費を除いた部分が本当の報酬ということです。
1つの契約が完結するまでに2カ月程度かかるのが普通ですし、その間の人件費だけでも馬鹿になりません。
そもそも、集客にもお金がかかっているので、一概に報酬額が高いとは言い切れない面もあるのです。
先程の話にもあったように、仲介業者に過失があった取引については、その責任を問われて賠償命令が出ることもあります。
不動産取引というのは、向こう数十年に渡って重大な責任を負う業務ということなのです。
今月契約した顧客から、数年後に訴えられることもあるわけですから、経営者にかかるリスクと責任は大きなものです。
逆を返すと、顧客側はトラブルが発生した時に業者に頼ることができ、責任追及することができる相手が得られるメリットがあります。
もしも、貴方が不動産会社の経営者だったら、訴えられるかもしれないリスクをいくらで引き受けられるでしょうか。
経営者は、人件費や広告費などを差し引いて手元に残る金額で、長期に渡って責任を負う事になります。
そう考える(視点を変える)と、仲介手数料が高いものだと思えなくなってきませんか?
仕事量は関係ない
新人の仲介営業マンは、自分の仕事はとてもこんな金額を貰う程のものではない等と感じています。
自分の仕事にそこまでの価値があるのか疑問に思っている人がいるという事です。
これは大きな勘違いで、そもそも営業マン個人の働きに対する報酬ではないのです。
会社が長期的に追う責任と、不動産取引を専門知識によって安全に完結させるための手数料です。
物件価格が高額になる程、その賠償リスクも高くなるので、物件価格に応じて金額が変わる仕組みになっているわけです。
営業マンの立場からすれば、やっている仕事内容は同じなので、「同じ仕事でこんなに違うのはおかしい」と感じることもあるでしょう。
でも、やっている仕事内容だけではなく、会社が負うリスクの大きさで金額が決まっている事を理解しましょう。
ここを勘違いしている人は、顧客に対して仲介手数料を請求することに躊躇するようになり、仲介手数料を安くして契約しようとします。
むしろ、営業職の方々は、自信を持って仲介手数料をいただけるような仕事をすべきですよね。
まとめ
不動産取引で発生する仲介手数料が高額なのは、それだけ大きな責任を負う仕事だからです。
そして、業界慣習としての歩合支払いや、広告費があることも考慮されていると思います。
顧客の絶対数が少ない業種でもありますので、法律上でも一定の利益確保を認めなければ不動産業自体が成り立たないのです。
近年は、仲介手数料を無料にして契約をする業者も増えてきていますが、案件によってはきちんと手数料を払って契約した方が良いケースもあると思います。
購入者の方々は、法定手数料の意味をきちんと理解した上で判断されると良いでしょう。
そして、営業マン側は、本来の意味をしっかりと理解し、きちんとした仕事をして顧客と会社の利益を守ることが大切ですね。