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不動産営業のつくり方

不動産業界の慣習と信義誠実の原則

不動産業者に仕事を依頼する際には、業界での暗黙のルールを知っておくとスムーズに話が進みます。

一般のユーザーでも、最低限は守らなければならないマナーのようなものがあり、これに反する態度をする人は、不動産業者から相手にされなくなる事もあります。

不動産業界は、皆さんが思っている以上に「信義則」の精神が強く働いている業界です。

TV等では、悪い業者ばかりが目に映るかもしれませんが、一般的な不動産業者の慣習等を知っておくことも大切な事だと思います。

 

信義則とは

不動産の契約には、「信義誠実の原則」という言葉が良く出てきます。

業界内では、略称として「信義則」と言ったりします。

簡単に言えば、物事に「筋を通す」という事であり、相手の期待を裏切らない誠実な対応をするという事です。

 

皆さんの不動産業者に対するイメージがどのようなものかは分かりませんが、私が知る限りでは、不動産業界は意外に「筋を通す」という事に厳格な業界です。

特に、この業界に長い人達は、意識することなく自然と筋道を通した対応をする人が多いです。

 

勿論、中には無法者のような業者もいるでしょうが、やがて業界内で噂となり、取引禁止にされるといった事もよく起こります。

具体的には、以下のようなシーンで信義則が意識されていると感じます。

 

  1. 契約の申込み時の対応
  2. 売却依頼への対応
  3. 仲介手数料の支払い
  4. 情報の厳守
  5. 不正な行為の依頼

 

申し込みへの対応

たとえば、建売物件の場合なら、週末に物件を見学する人が多い為、複数の顧客から申し込みが重なることがあります。

売主側とすれば、同日の申し込みであれば、少しでも高い金額で申し込みをしてきた人を「一番手」にしたいと考えそうですよね?

 

不動産業者は、当然にそのような対応をしていると思う人もいると思います。

しかし、実際には、多くの売主が先着順できちんと対応します。

仮に、数分後に100万円高い金額で申し込みが入ったとしても、順番を守ってくれる売主は意外に多いのです。

 

これも、業界特有の信義則の精神です。

例外的に、価格を優先する業者もいますが、このような会社は評判が悪くなり、業界内でも異色な存在になる傾向があります。

 

不動産業者(同業者)は、営業マンがどれだけ苦労して申し込みを獲得したかを理解しています。

ですから、1秒でも早く申し込みを入れた相手を尊重し、優先するのです。

 

FAXやメールの受信時間を基準にする等、申し込み金額に関わらずに対応してくれる事もよくあります。

融資が確実に受けられる状況(確実に買える状況)で、営業担当者に「1番手でお願いします」と言われ、これを承諾した以上は、約束を守るのが暗黙のルールです。

このような対応が信頼関係を生み、「また取引したい会社」という気持ちへと繋がっていきます。

 

こうして、業界内での信頼を築いていくことで、「営業マンに売ってもらえる業者」になるわけですね。

各営業マンは、過去の取引や業界での噂を根拠にして、売主(建築会社)に対して「好き・嫌い」の感情を持っているものです。

 

そして、「〇建設の物件は絶対に売らない」等と決めている人さえいます。

最前線で活躍する営業マン達に嫌われる会社は、物件を紹介してもらえなくなる事に繋がるわけです。

目には見えない部分ですが、販売促進を考える上では、かなり大きな影響がある部分だと感じます。

 

売却依頼への対応

不動産業者に売却の依頼を出す際にも、信義誠実の原則は作用しています。

依頼する側は意識していないかもしれませんが、仕事を受ける側(不動産会社)は、この信義誠実の原則をとても重要視しています。

 

具体的には、「失礼なことを言う相手」とか、「モラルが低い」といった相手を嫌うという事です。

例えば、仕事を受ける側の気持ちを考えず、手当たり次第に業者問い合わせをし、査定の競争をさせるといった人です。

 

エンドユーザーでよくあるのは、一般媒介契約を複数締結するケースです。

不動産業者は、専任で任せてくれる信頼感を大切にしますから、基本的にはこのような相手を嫌います。

 

つまり、「どのような頼み方をしたら一生懸命やってくれるのか」という事を、依頼する側が意識することも大切なのです。

貴方に任せます」という明確な姿勢が、不動産取引においては大変重要視されることを覚えておくと良いと思います。

このような誠実さが感じられない場合、業者側から切られる(真剣に相手にされない)可能性が高まります。

 

仲介手数料の支払い

業者間での取引を想像した時、仲介手数料の取り扱いについてどのようになるか想像してみてください。

お互いに不動産のプロなのですから、実態としては「仲介」という感覚ではないですよね?

 

素人から見れば、「お互いプロだから仲介手数料は無しで」という話になるのではないかと思う人もいるのではないでしょうか。

ところが、実際にはこれが全くの逆なのです。

 

プロだからこそ、仲介手数料の大事さを知っていて、「手数料は当然に発生する」というのが業界の常識です。

どんな業者でも、決められた通りの手数料をきっちり支払ってくれますし、後から「ちょっと負けて」等という話も一切ありません。

 

ですから、手数料を半分にする等の交渉は、基本的には相手に失礼な行為とも言えます。

業者側からすれば、「あなたの仕事は通常の半分の価値しかない」と言われているのと同じだからです。

手数料の交渉は、明確な理由を付けて、きとんと行ってください。

 

この業界では、マナーの悪いことをすると、たちまち相手にされなくなり、今後の取引を停止される可能性さえあります。

意外に、律儀で誠実な業界だと思いませんか?

 

情報の厳守

不動産業界には、「情報とスピードが命」という人が多いです。

そして、この業界で一流と言われるような人達に、スピード感の無い人は皆無です。

ですから、モタモタしている相手や、素人っぽい業者等を嫌います。

 

また、情報面では、新規物件や未公開の売り物等、社外秘の情報については、その取扱いを慎重にしなければなりません。

無神経な行動をとる人は、嫌厭されると思ってください。

 

このような配慮ができない業者(又は担当者)は、物件情報がもらえなくなります。

最悪の場合、本当に取引をしてもらえなくなることもあります。

 

売主の意向等により、内々で話を進めたい案件等もありますから、勝手に査定をするとか、断りも無く情報を流すような行為はタブーです。

言わないで」とか「やらないで」と約束したことは、厳守するのが暗黙のルールです。

 

そして、お互いのメリットを明確にした上で、誠実に仕事を依頼する事です。

不動産は高額な資産ですし、様々な権利が絡んでいますので、進め方がとても重要です。

 

不正行為の依頼

不動産の仕事には、紹介料(建物受注等)が発生することがあります。

これ自体は、違反ではありませんし、慣習として常識化しています。

 

仕入の仕事の場合には、仲介手数料とは別に、担当者ボーナス(個人への報酬)を付ける業者もいるくらいです。

小さな会社に多い動きですが、これらの話は、業者側が仕事欲しさに持ちかける性質のものです。

 

一方で、紹介者側から仲介手数料からのフィーバックを求めるといった行為は、意味が全く違ってきますので注意が必要です。

この場合、請求金額によっては不正な行為になりますし、相手に対してフィーバックを強要することにもなります。

ですから、余程の信頼関係がなければ、持ちかけること自体がリスクです。

 

不動産業者に対してのことに限りませんが、業法が存在している事業においては、不正に繋がる行為を依頼しないことが基本です。

コンプライアンスに厳格であるべき業種なので、大手不動産会社等は、このような取引をした社員は処分又は解雇されます。

 

きちんとした会社である程、グレーな話はきっぱりと断ります。

信義則の精神は、このような面でも意識されていると感じます。

 

取引停止の種類

不動産業界において「取引停止」には二つの意味があります。

1つは、業法に違反し、法律に基づいて業務停止処分になるという意味です。

もう1つは、社内ルールによって、特定の会社(社長が指定した会社)との取引を禁止されることです。

 

大手不動産会社でも、このような社内ルールが存在し、特定の業者に対して取引を断らなければならないことがあります。

過去の取引において、信義則に反する行為をされた等、取引停止の理由は様々ですが、全社員に通達され、本当に二度と取引しなくなります。

ですから、この業界では、誠実に対応(又は依頼)するということは、基本中の基本です。

 

信念と収益

サービス業において、「お客を選ぶ」のはあまり良くないない行為とされますよね。

しかし、不動産業界については、「信念に基づいてお断りする」という事がよくあります。

常識の無い相手は、購入の意思を見せていても断る」という意味での選別です。

 

例えば、とても大きな金額の取引が前提とされている話であっても、依頼者(又は関係者)等に不信感を抱くような要素が多ければ、あえてお断りすることも多い業界です。

何故なら、不動産業界ではトラブルを最も大きなリスクと考えているからです。

 

仮に、300万円の仲介手数料が貰える仕事があったとします。

普通に考えれば、多少我慢してでも対応する額の利益に見えますよね。

でも、この業界では、建売物件の契約を2つ程度成約すれば、この程度の利益はすぐに稼げてしまうのです。

 

また、契約から引き渡しまでに数カ月かかるような案件についても、少し考え方が変わってくる部分があります。

例えば、売買の仲介会社では、3カ月間あれば、建売の契約が2~3本決められる可能性がありますよね?

 

売上にすると、500万円~600万円程度にはなると思います。

一方、数カ月かかるプロジェクトの仲介手数料が600万円だった場合、どちらを取るべきかという思考も必要になります。

 

そもそも、利益の大きい業界なので、トラブルで時間をとられる可能性が高い案件よりも、気持ち良く取引して数をこなした方が良いのです。

それに、一つの契約が崩れた場合、後者では利益がゼロになるリスクがあるわけです。

 

きちんとした対応ができる業者には顧客も集まりますから、ある程度は案件の内容や、顧客の人柄等によって選別していく必要があるのです。

不動産業者が仕事を欲しがっていると思っている人が多いのですが、彼等が欲しがっているのは「まともな案件」なのです。

 

心意気での取引

利益の都合も大切ですが、「心」の部分も大切ですよね。

不動産業界には、義理や人情で仕事をする人達もたくさんいます。

 

利益の大小ではなく、「助けてあげたい」という気持ちを持てる相手には、意外に協力してくれる人もいます。

私自身、現役時代から「仲介手数料の額よりも顧客の人柄」という指針で顧客選別をしていました。

 

結果、トラブルは一度も起こしたことはありませんし、正解だったと確信しています。

同僚などのトラブルを見ていると、「お金」の部分を優先しているとか、顧客や関係者の事を考えていない人である事が多いのです。

結局は人が絡む仕事ですし、権利関係も大きな仕事なので、「人選び」が最も重要なのかもしれませんね。

 

まとめ

不動産業界の慣習に不慣れな人は、この業界に精通した人達の感覚がわからないかもしれません。

はじめは分からない事も多いと思いますが、根底にあるのは正義です。

どんな行動や態度が正義なのか、という視点を持っていれば、相手に失礼な結果にはならないですよね。

何気ない発言や、悪気の無い行動が、あなたの信頼を失墜させているかもしれません。

不動産業者と付き合うコツは、「信義誠実の原則」にあることを覚えておきましょう。

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