2019年度の試験範囲に影響のある改正点については、受験生達の関心事だと思います。
2019年度についても、民法の一部改正等に伴って、試験範囲とされる法令に変化があります。
この為、テキストの再購入に悩む人も多いのではないでしょうか。
そこで、2019年度の法改正に伴う勉強範囲の変更点と、今後の動向等について受験生の参考になる情報をまとめておきます。
宅建の改正ポイント
2018年7月13日に、「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)」が成立し、公布されました。
詳細は、法務省のサイトで確認できます。
宅建の試験は、試験実施年度の4月1日時点で施行されている法令が対象となります。
つまり、2019年4月2日以降に施行される法改正は、2019年度の試験対象外ということです。
今回の相続法の改正は、原則として、公布の日から1年以内を超えない範囲内で施行されることになっています。
今回、少し紛らわしい事になっているのは、公布の日から2年を超えない範囲で施行するとされている部分があるからです。
2019年度の改正ポイントは、以下の通りです。
詳細は、次項以降で説明していきます。
- 民法の「相続」の一部(自筆遺言)
- 建築基準法(施工例含む)の一部
- 農地法の一部
相続法の改正内容
相続法の改正内容については、主に以下の5つになります。
- 配偶者住居権が創設される
- 自筆証書遺言の財産目録がパソコンで作成可能になる
- 法務局で自筆証書遺言の保管制度を創設
- 介護や看病をした親族の金銭請求権が可能になる
- 相続預貯金債権の仮払い制度の創設
この中で、自筆証書遺言の方式緩和(2番目)については、平成31年1月13日から施行されます。
それ以外については、公布の日から2年を超えない範囲で施行されるのです。
要するに、2019年度の宅建本試験には、2番目の部分だけが出題範囲となるという事です。
1.配偶者住居権の創設
被相続人(死亡した人)が所有する家に、その配偶者が住んでいる場合は多いですよね。
このような人達が、心無い親族達から家を追い出されないようにしてあげるために創設された制度だと思ってください。
相続開始時に該当建物に住んでいた配偶者は、終身または一定期間、その建物を無償で使用することができる権利です。
具体的には、建物についての権利を「配偶者居住権」と「負担付きの所有権」とに分類します。
こうすることで、遺産分割の際に、配偶者は「配偶者居住権」を取得し、配偶者以外の相続人が「負担付きの所有権」を取得することができるようにしたのです。
配偶者居住権は、自宅に住み続けることができる権利ですが、完全な所有権ではありません。
ですから、第三者への売却や、賃貸借による利益を受けることができませんが、その分、相続評価額を低く抑えることができるようになっています。
2.自筆証書遺言の緩和措置
「自筆証書遺言の方式緩和措置」については、2019年度の宅建試験の出題範囲に含まれますので注意しましょう。
これまでの自筆証書遺言は、全てを自書によって作成する必要がありました。
現在は、パソコンで書類を作成するのが一般的になりましたので、これに対応すべく改正されたというわけです。
今回の改正により、遺言書に添付する相続財産の目録は、財産目録の各ページに署名押印すれば、パソコンで作成しても良いということになりました。
各ページに署名押印があれば、通帳をコピーして添付することも許されます。
3.法務局が自筆証書遺言を保管
これまで、公正証書ではない遺言書については、自宅に保管されるのが常識でした。
しかし、紛失や不正な書き換えの問題も多いのが実情だったのです。
相続紛争を防止するという社会的要請に答える形で、法務局で自筆証書遺言の預かり業務が開始されます。
こちらも施行は4月以降となりますので、2019年度の試験範囲には含まれません。
4.親族の金銭請求権
長男の妻などのように、相続人になれない親族が被相続人の介護や看病をさせられるケースは多いです。
しかし、これまでの法律では、遺産を受け取る権利が発生せず、不公平な実態がありました。
このような不公平を解消するために、相続人ではない親族でも、以下のようなケースに該当すれば、金銭の請求ができるようになります。
- 無償で被相続人の介護や看病に貢献した
- 被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした
5.預貯金債権の仮払い
これまでは、当面の生活費や葬儀費用の支払い、相続債務の弁済についての払い戻しは不可能でした。
被相続人に関するお金が必要になっているのに、相続人は遺産分割が終了するまで預貯金の払戻しができないという問題があったのです。
そこで、このような相続人の資金事情に対応するための改正が行われます。
この法改正によって、遺産分割前にも預貯金債権の内、一定額については家庭裁判所の判断を経ずに金融機関で払戻しができるようになります。
法改正(民法)の概要
2017年5月に成立している「民法の一部を改正する法律」の施行が、2020年4月1日からとされています。
先にご紹介した相続法の改正と合わせ、債権に関する部分にも変化が起きます。
つまり、2020年は宅建受験生にとって大改正の年!ということなのです。
司法書士や行政書士等、多くの法律系資格に関係する改正となるのは間違いありません。
主な改正点については、以下の通りです。
- 保証人の保護で、根保証契約が無効
- 公証人の保証意思確認手続きの新設
- 約款取引の規制等
- 法定利率の改正
- 消滅時効に関する改正
- 意思能力について明記
- 賃貸借について
特に、消滅時効と賃貸借については、不動産と関係が深い部分ですので、2020年度での出題の可能性が高いと思われます。
試験範囲の変更点(民法)
例年、当年度の法改正情報については、4月以降にならないと情報が少ないですよね。
スクール各校としては、情報が確定してからでないと発信することができない事情があるのだと思います。
でも、1月から早々に勉強を開始する人もいるはずです。
そんな方々に向けて、2019年度の民法(相続)の改正による試験範囲の変更点を書いてみました。
民法については、「自筆証書遺言の方式が緩和された」という部分が変更点です。
詳しくは、相続のテキストを読んでください。
建築基準法の改正ポイント
平成30年9月25日(火)に施行されている改正点についてまとめておきます。
この改正内容は、2019年度試験の出題範囲となります。
出題の可能性が高いと感じる部分もありますので、要チェックです。
詳しくは、ホームページにある出題予想の記事内で説明しています。
- 木造建築物等である特殊建築物の外壁等を防火構造とすべき木造の特殊建築物の範囲が見直されました。
- 接道規制の適用除外に係る手続が合理化され、一定の基準(建築基準法施行規則に規定)に適合する建築物について、建築審査会の同意が不要となっています。
- 接道規制を条例で付加できる建築物の対象が拡大されました。袋路状道路にのみ接する大規模な長屋等の建築物について、条例により、共同住宅と同様に接道規制を付加することが可能になります。
- 老人ホーム等(老人ホーム等の共用の廊下等)の容積率規制について、共同住宅と同様に、共用の廊下・階段の床面積を容積率の算定対象外としています。
- 日影規制を適用除外とする特例許可を受けた建築物について、一定の位置及び規模の範囲(位置及び規模の範囲については、関係政令の整備等に関する政令に規定)内で増築等を行う場合には、再度特例許可を受けることが不要となりました。
- 仮設興行場等の仮設建築物の設置期間の特例を規定しました。
仮設建築物のうち、オリンピックのプレ大会や準備等に必要な施設等、特に必要があるものについて、建築審査会の同意を得て、1年を越える存続期間の設定を可能としました。
その他所要の改正
宅配ボックス設置部分を容積率規制の対象外とする改正が行われ、オフィス・商業施設などにも宅配ボックスを設置しやすくする動きが進んでいます。
公布:平成30年9月12日(水)
施行:平成30年9月25日(火)
-
-
建築基準法の改正点|2020年度宅建試験範囲
直近で改正された建築基準法の改正点の主要部分について、実際の条文で該当箇所がわかるようにしておきます。(条項の変更や、試験への影響が小さいと思われる部分は省略しています) 赤文字の部分が法改正で改めら ...
(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});
農地法の一部改正
平成30年11月16日施行の改正内容について別記事にまとめています。
試験での出題ポイントも記載されていますので、チェックしておきましょう。
-
-
農地法の改正点(2020年度 宅建試験対策)
2019年以降の農地法及び農地法施行規則の一部改正について、試験対策用に変更点をまとめました。 2020年度以降の本試験では、新しい出題形式として出現するかもしれませんので、目を通しておくと良いと思い ...
2018年度の法改正
2018年度(平成30年度)に行われた法改正についても抜粋しておきます。
宅建業法34条 媒介契約書
宅建業法35条 重要事項説明
宅建業法37条 重要事項の記載事項等
その他、新しい用途地域として田園住居地域が新設されました。
2019年度 試験難易度
2018年度は、受験者のレベルが高く、合格判定基準が37問以上の正解となりました。
これを受け、2019年度の合格目標は、必然的に高まる事になるでしょう。
こう聞くと、少し気が重くなる人もいるかもしれませんが、今からお伝えする事をよく覚えておいて欲しいと思います。
2018年についての合格点が高いのは、試験内容の難易度が下がったからではありません。
試験概要にある通り、この試験では、宅地建物取引業に関する実用的な知識を有するかどうかを判定することに基準が置かれています。(宅建業法施行規則第7条)
2018年度は、この試験で求められる実用的な知識の内、当然に回答できなければならない問題数が多かっただけで、難易度自体が変化しているわけではないのです。
ですから、2019年度についても、実務的に必要な知識の基準を満たす勉強さえすれば、必ず合格できます。
それよりも、想像しなくてはいけないのは、2020年度に受験する事になった場合ではないでしょうか。
ここまでの内容を読んだ人なら、誰もがこう思ったと思います。
「2019年で合格しておかないと、翌年はもっと苦労することになる!」
2020年は、受験生にとって、例年よりも確実に勉強量が増える年になります。
過去問では見たことがないような設問も増えるはずです。
このことを肝に銘じて、残りの時間を有効に使って欲しいと思います。
合格するための得点配分とスケジュールが、いつも以上に大切な年になると思います。
以下の記事に、要点をまとめておきましたので参考にしてください。
参考記事
-
-
宅建士試験の出題配分を分析予想 2019年度版
2018年の本試験は、例年よりも合格判定基準点が高くなり、37問以上の正解が必要となる結果でした。 2019年度の宅建士試験を確実に合格するためには、今までとは少し見方を変えなければいけない部分も出て ...
テキストの再購入
2019年度の試験が再受験となる人達については、テキストを新しくするべきか迷う人もいるでしょう。
資格系の本は、冊数を限定した出版となりますので、比較的に割高ですよね。
一昔前であれば、法改正ポイント等が心配な人は再購入するのがベストだったと思います。
しかし、現在ではネットにたくさんの宅建独学サイトが存在していますし、時期は遅くなりますが、資格スクール等でも要点をアナウンスしてくれるはずです。
個人的には、基本的な部分は変わりませんので、無駄な出費をする必要はないと思います。
新しく買った方が良いという記事は、本を売ることによって利益が見込めるサイトに多いのではないかと思います。
勿論、買い直すのは自由ですし、悪いことではありません。
私がここで申し上げたいのは、「昨年のテキストでも合格できる」という事です。
出来る限り早めに法改正に対応させますので、よろしければ当サイトの無料テキストも使ってみてください。
無料テキスト
-
-
宅建独学サイトの無料テキストと出題予想
これまでに書いてきた宅建に関する重要記事と、流し読み用の無料テキストを一つの記事にまとめて使いやすくしました。 この記事をお気に入りに入れておけば、テキストを持ち歩いているのと同じ状態にできるというわ ...
まとめ
ついこの間、本試験が終わったと思ったら、あっという間に年度が変わりますよね。
年度が変わると、早くも「本試験まであと〇ヶ月」といったカウントダウンを目にするようになります。
2019年度は、2020年の法改正を見据えて、確実に合格したいと考える人も増えます。
それに、今年は、「令和元年合格」という、おめでたいオマケ付きです。
ですから、早めのスタートを切って、出来る限りの努力をしておくことをオススメします。
日常で余った時間や、通勤通学等の移動時間は、全てテキストの精読に使うくらいの気持ちで頑張ってみてください。