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宅建民法|売買の独学無料テキスト

民法の売買について、宅建独学用のテキストを作成しました。

近年の傾向としては、売主の担保責任についての出題が見られますので、ここを重要視したテキストになっています。

最終修正日:2020年2月6日

 

売買

売買は、不動産の仕事に関係が深い部分ですので、従来の宅建試験でもよく出題される傾向がありました。

2020年の民法改正後は、かなりの範囲に渡って条文が変わる為、しばらくは過去問対策ができない状況です。

 

重要条文を覚えておき、改正前の民法の考え方との違い等を理解する必要があります。

特に、瑕疵担保責任に代わって登場した追完請求権(第562条)には注意しましょう。

 

民法第555条~第557条

第555条 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

 

特に説明の必要がないかもしれませんが、「相手に財産権の移転を約束できない状況では契約の効力は発生しない」と覚えた方が分かり易いかもしれません。

 

第556条 

 売買の一方の予約は、相手方が売買を完結する意思を表示した時から、売買の効力を生ずる。

 前項の意思表示について期間を定めなかったときは、予約者は、相手方に対し、相当の期間を定めて、その期間内に売買を完結するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、相手方がその期間内に確答をしないときは、売買の一方の予約は、その効力を失う

 

ここでは、「それ、買います」という予約の事を規定しています。

口約束でも、その意思表示によって効力を生じるという事です。

売る側は、「買うのか、買わないのか決めてください」と催促できます。

決められた期間内に返事をしなければ、予約は取消しなるという事が書いてあるだけです。

 

2020年法改正

第557条 買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りではない。

557条は、実務上(売買の取引)でもよく使う条文です。

2020年の改正によって、文言が改められましたが、事実上の変化はないと考えて良いです。

改正前の条文では、倍額の償還について解釈に誤解を生む表現があった為、これを改めただけだからです。

 

履行の着手とは、要するに売買に必要な動きをした事を言いますが、どこまでを履行の着手と言うのかについては、これまで判例の見解に頼る部分がありました。

一般的な不動産売買で例えれば、売主が登記手続きを行ったとか、買主が支払いの為の現金を用意して引渡しを求めたといった行動が、「履行の着手」です。

その取引をする為に、一定の労力を費やして実際の行動を起こしたという状況を想像すると良いと思います。

 

買主側から契約をキャンセルする場合は、手付金を放棄すれば良いと言っています。

売主からキャンセルする場合は、預かった手付金の返還と、手付金と同額を支払えば解約できるという事です。(=倍額を現実に提供)

 

どちらも、相手が履行に着手した後だと、この条文を根拠にはキャンセルができなくなります。

自分の着手は関係ありませんので注意してください。(平成21年度に誤肢として出題されています)

 

売買の効力

ここからは、他人物売買と売主の担保責任について学んでいきます。

試験でも比較的頻繁に出題されている部分です。

 

一般的な考え方として、誰かの物を勝手に売ることはしませんし、法律的にもできなそうですよね。

でも、民法においての売買では、他人の物を売った場合の事が普通に書いてあります。

 

なんでそんなことにしているのかは、こう考えると良いと思います。

誰かが貴方の所有物を売る約束をしてきたとしても、「売らないよ」と言えばいいですよね?

 

断った時点で契約が成立しないと定めておけば、「他人の物を勝手に売ってはダメです」と規定しているのと同じようなものですよね。

そんな視点で臨んでみてください。

 

売主の責任等

他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負います。(第560条)

このように定めておけば、一度自分の手にできない物は、結局は売れないという結果になりますよね。

 

売主が、他人の権利を売却した後、それを取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができます。

 

この場合、契約の時においてその権利が売主に属しないことを知っていたときは、損害賠償の請求をすることができません。(第561条)

買主側は、売主の物だと思って契約していた時には保護されますが、相手が他人の物を売っているのだと知っていたのであれば、損害が出ても自己責任という事です。

 

第562条 追完請求権

2020年法改正

(買主の追完請求権)

第562条

1.引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる

2.前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。

 

法改正によって、数量不足に対しても不適合責任が追加されています。

不動産における数量不足とは、土地面積が小さかった場合等を意味します。

実際、公簿売買で取引した場合等には、実際の面積と僅かに差違が生じることがよくあります。

契約書に、不足面積について精算しない旨の特約等が無い場合、原則として562条の考え方になるというのは、実務上でも影響の大きい事です。

 

第563条 代金の減額請求

2020年法改正

(買主の代金減額請求権)

第563条

1 前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。

2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。

一 履行の追完が不能であるとき。

二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。

三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。

四 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。

3 第一項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。

 

これまで民法で使われていた『瑕疵』という言葉が使われなくなり、今後は『契約不適合』という表現になります。

契約時の条件に適合していないことに対して、何らかの行動を起こしていくというイメージです。

 

これまで「瑕疵担保責任」と呼ばれていたものが、「買主の追完請求権」という形に生まれ変わったと考えてください。

実務上では、特約等によって、この条文内容を緩和する規定を設けるケースもあります。

 

瑕疵の場合、「隠れた」という要件がありましたが、この要件は廃止されました。

隠れていない瑕疵でも、瑕疵自体があるのですから、状況によって売主に債務不履行責任を認める必要があるという趣旨です。

 

ポイント

改正前は、無過失責任だったが、改正後は、故意過失がないと責任追及できない(過失責任)である点に注意しましょう。

 

損害賠償請求と解除権

2020年法改正

(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)

第564条

前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求並びに第五百四十一条及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない。

 

第566条 地上権等がある場合

地上権等がある場合等における、売主の責任はどうなるのかが規定されています。

 

第566条では、「売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる」と規定しています。

 

要するに、善意の買主であれば、地上権等の権利があっても目的が達成できない場合に解除できるという事です。

この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができ、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から1年以内にしなければなりません。

 

第567条 目的物の滅失等

2020年法改正

(目的物の滅失等についての危険の移転)

第567条

1.売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。以下この条において同じ。)を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、買主は、その滅失又は損傷を理由として、履行の追完の請求代金の減額の請求損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。この場合において、買主は、代金の支払を拒むことができない

2.売主が契約の内容に適合する目的物をもって、その引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず、買主がその履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその目的物が滅失し、又は損傷したときも、前項と同様とする。

 

売買契約等では、結局のところ「特約」等でこの内容とは違う規定を設けることも多いと思います。

しかし、特約に書かなければ、前提としてこのような規定が適用される事を覚えておく必要があるわけです。

 

帰責事由が、売主・買主のどちらにも無いような(どちらの責任でもない)場合、赤文字部分の請求権は無く、買主はお金を払わなければならないという事です。

 

第568条 競売における担保責任

2020年法改正

(競売における担保責任等)

第568条

1 民事執行法その他の法律の規定に基づく競売(以下この条において単に「競売」という。)における買受人は、第541条及び第542条の規定並びに第563条(第565条において準用する場合を含む。)の規定により、債務者に対し、契約の解除をし、又は代金の減額を請求することができる。

2 前項の場合において、債務者が無資力であるときは、買受人は、代金の配当を受けた債権者に対し、その代金の全部又は一部の返還を請求することができる。

3 前二項の場合において、債務者が物若しくは権利の不存在を知りながら申し出なかったとき、又は債権者がこれを知りながら競売を請求したときは、買受人は、これらの者に対し、損害賠償の請求をすることができる。

4 前三項の規定は、競売の目的物の種類又は品質に関する不適合については、適用しない。

 

第569条  売主の担保責任

第569条 債権の売主が債務者の資力を担保したときは、契約の時における資力を担保したものと推定する。

2  弁済期に至らない債権の売主が債務者の将来の資力を担保したときは、弁済期における資力を担保したものと推定する。

債権の売主が債務者の資力を担保したということは、契約時の資力を担保したものと推定しましょう、ということです。

要するに「担保したこと」になるのか、ならないのかの判断基準を定めています。

 

第570条 買主による費用の償還請求

第570条   買い受けた不動産について契約の内容に適合しない先取特権、質権又は抵当権が存していた場合において、買主が費用を支出してその不動産の所有権を保存したときは、買主は、売主に対し、その費用の償還を請求することができる。

 

第571条は、法改正により削除されています。

 

第572条 担保責任を負わない旨の特約

第572条  売主は、第562条第一項本文又は第565条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。

 

契約書で、担保責任を負わない特約を記したとしても、売主が数量不足や欠陥等を知っていてそれを告げなかった時は責任を免れる事はできません。

また、売主が取引の目的物を誰か関係の無い人に売るとか、他物件の設定を行うといった事をすると同じく責任を免れることができないということです。

 

代金の支払い等

営業くん
簡単な内容なので、条文で確認しておきましょう

 

(代金の支払期限)

第573条 売買の目的物の引渡しについて期限があるときは、代金の支払についても同一の期限を付したものと推定する。

 

(代金の支払場所)

第574条 売買の目的物の引渡しと同時に代金を支払うべきときは、その引渡しの場所において支払わなければならない。

 

(権利を失うおそれがある場合)

第576条 売買の目的について権利を主張する者があるために買主がその買い受けた権利の全部又は一部を失うおそれがあるときは、買主は、その危険の限度に応じて、代金の全部又は一部の支払を拒むことができる。ただし、売主が相当の担保を供したときは、この限りでない。

 

(抵当権等の登記がある場合)

第577条 買い受けた不動産について抵当権の登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、その代金の支払を拒むことができる。この場合において、売主は、買主に対し、遅滞なく抵当権消滅請求をすべき旨を請求することができる。

 前項の規定は、買い受けた不動産について先取特権又は質権の登記がある場合について準用する。

 

第578条  前二条の場合においては、売主は、買主に対して代金の供託を請求することができる。

 

まとめ|勉強のコツ

売主の担保責任については、今後も定期的に出題される可能性が高そうです。

しかし、細かい部分を深く聞いてくる問題ではなく、基本的な条文理解を目的としているレベルだと思いますので、対策は比較的容易です。

過去問で良く出されている第567条付近は、特にしっかりと勉強しておきましょう。

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