この記事は、「無料テキスト 建築基準法 ③」の続きです。
用途地域
用途地域は、都市計画法の中でも出てきましたよね?
都市計画法は、街づくりの計画をするための法律ですが、建築基準法は実際に建物を建てる時の法律です。
この為、建築基準法の中では、用途地域の具体的な内容を定めています。
つまり、何処にどんな建物を建てて良いのかを用途地域ごとに定めています。
どの用途地域の場合も、特定行政庁によって支障等が無いと認められた場合には、例外的にその用途地域で禁止されている用途での建築物が認められますので、このことは頭にいれておいてください。
特定行政庁は、この許可をする場合においては、あらかじめ、その許可に利害関係を有する者の出頭を求めて公開による意見の聴取を行い、かつ、建築審査会の同意を得なければなりません。(但し、建築物の増築、改築又は移転について許可をする場合を除く)
特定行政庁は、公開による意見の聴取を行う場合においては、その許可しようとする建築物の建築の計画並びに意見の聴取の期日及び場所を期日の3日前までに公告しなければなりません。
補 足
建築物の敷地が異なる用途地域にまたがる場合、建築物の用途制限については、敷地の過半が属する地域の規定(制限)に従います。(第91条)
用途地域で建てられる建築物の学習は、市販テキスト等では別表等の図表類で表示されている事が多いと思います。
このような表を覚えられる人は、該当部分を飛ばしてください。
表を覚える気になれない人は、私が以下に要約する内容を覚えて過去問をやりましょう。
第一種低層住居専用地域
第一種低層住居専用地域は、住宅を建築するのに最も適した街並だと考えてください。
その上で、あなたの身近に存在する「閑静な住宅街」を想像しましょう。
車がほとんど通らず、コンビニ等も無い静かな住宅街です。
そのような住宅街で見たことがある建物が、この地域に建てられる建築物ということです。
具体的には以下のような建築物を建てることが許されています。
- 住宅(事務所併用含む)
- 共同住宅、寄宿舎等
- 小学校(大学、高等専門学校、専修学校及び各種学校はダメ)
- 図書館、児童館等
- 神社、寺、教会等
- 老人ホーム、保育所等の福祉施設
- 公衆浴場
- 診察所(小さな町医者)
- 派出所等、公益上必要な建築物
これらに付随するようなものは、建築が可能です。
基本的に、住宅街は人が住むことを最優先に考えた場所ですから、最低限必要な建築物だけしか許可しないということです。
商業的な施設は騒音等を発生させるので、許可されないというイメージを持っておきましょう。
店舗付き住宅を建築することも可能ですが、居住部分が延床面積の2分の1以上で、店舗として使用する部分の面積が50㎡以内でなくてはいけません。
2019年出題有
第二種低層住居専用地域
第二種低層住居専用地域は、少しだけ条件が緩和されると思ってください。
第一種低層で建てられる建築物に加えて、以下のようなものが許されます。
- 店舗、飲食店で床面積の合計が150㎡以内のもの
作業場の面積が50㎡以下であれば、以下の建築物もOKになります。
※ 第一種住居地域以降は、「50㎡以下」のくくりが無くなります。
- パン屋
- 米屋
- 豆腐屋
- 菓子屋
- 洋服屋
- 畳・建具屋
- 自転車屋
住宅街の中には、駄菓子屋さんとか、コンビニ等もありますよね?
小さな飲食店等もあると思います。
住宅街でも、少し車の通りがあるようなエリアです。
このような場所は、第二種低層住居専用地域に指定されていて、上記のような建築物を建てても良いことになっています。
でも、基本的には住宅を建てるのがメインの場所なので、小さな店だけOKにしているということです。
微妙な街並みの違いで分類している事がわかると思います。
第一種中高層住居専用地域
第一種中高層住居専用地域では、低層住居専用地域に建築できる建築物に加えて、以下のようなものが追加されます。
- 大学、高等専門学校、専修学校等
- 病院
- 店舗、飲食店で床面積の合計が500㎡以内のもの
- 自動車車庫で床面積の合計が300㎡以内のもの
- その他、公益上必要な建築物(市民センター等)
老人福祉センター、児童厚生施設は、少し規模の大きなものを想像すれば良いと思います。
自動車車庫は、要するに立体駐車場等です。
第二種中高層住居専用地域
第二種中高層住居専用地域では、店舗、飲食店、事務所で、床面積の合計が1,500㎡以内の建築物が建てられます。
基本的には、第一種中高層と同じ内容で、必要とされる店舗の数や規模等によって第二種と使い分けているイメージです。
第一種住居地域
第一種住居地域では、中高層住居専用地域に建築可能なものに加え、以下のようなものが許されます。
3,000㎡以下であれば、以下のような建築物がOKです。
- 事務所
- 自動車教習所
- ホテル・旅館
- 畜舎
- ボーリング場等のスポーツ施設
- 貯蔵庫
- 50㎡以下の自動車修理工場
- 危険や環境悪化の少ない工場で50㎡以下のもの
第二種住居地域
第二種住居地域では、第一種住居地域で3,000㎡以下だったものが、10,000㎡以下に拡大されます。
これに加え、10,000㎡以下であれば、以下の建築物もOKになります。
- カラオケ店
- 麻雀店
- パチンコ店
- 馬券場
第二種住居地域になると、建築物の規模だけでなく、街の様子としても少し商業的な面が出て来る感じですね。
近隣商業まではいかないけれど、少し娯楽施設もOKにしたいような場所です。
住宅環境としては、少し微妙な場所になってきます。
田園住居地域
改正によって新設された用途地域です。
別記事に概要をまとめていますので、全体像を掴んでおいてください。
参考記事「宅建試験対策|田園住居地域の新設による建築基準法改正点」
準住居地域
ここまでに出て来た建築物に加えて、以下のようなものが建築可能になります。
- 客席200㎡未満の劇場、映画館、演芸場等
- 作業場の床面積の合計が150㎡を超えない自動車修理工場
- 倉庫業倉庫
※ その他、貯蔵庫や立体駐車場の規模に㎡数の制限が無くなります。
近隣商業地域
商業という言葉が入ったことからも想像できると思いますが、近隣商業地域は、小さな商店街等が形成されている地域です。
この地域では、店舗等の㎡数に限度が無くなります。
また、危険や環境悪化の少ない工場で150㎡以下のものがOKになります。
キャバレーや風俗施設以外なら、ほとんどの商業施設が㎡数に関係なく建築できるようになると考えてOKです。
この地域は、近隣住民が買い物をする場所ですから、子供等も訪れますよね?
ですから、夜の商売は禁止なのだと考えれば良いと思います。
参考
200㎡以上の映画館や劇場は、近隣商業地域、商業地域、、準工業地域で建築することができます。
商業地域
商業地域は、その名の通り、完全に商売なら全面的にOKな場所です。
近隣商業地域との違いは、キャバレーや風俗施設についても営業できるようになっている部分です。
準工業地域
準工業地域は、「商業」から「工業」に変化している部分に注目です。
つまり、娯楽よりも事業に使う施設をやや優先しているわけです。
でも、建築できる建物の種類は、商業系とほとんど同じです。
娯楽で縮小した部分としては、個室浴場付の風俗施設が建築できない事だけです。
その代わり、危険や環境悪化のおそれがやや多い工場でも、㎡数の制限が無く建築できるようになります。
自動車工場も大規模なものが建築可能です。
火薬・石油・ガス等の貯蔵庫についても、量がやや多い施設を建築できます。
工業地域
工場的施設が集中することになるので、少し環境が悪くなってきます。
工業地域は、危険性が高く、環境に悪影響のある施設も建築できるからです。
この為、ここまでに許されてきた建築物の中から、建築できないものが出てきます。
この地域では、建築できない建物を覚えましょう。
以下の建築物は建てられなくなります。
- 床面積10,000㎡以上の店舗
- ホテル・旅館
- 劇場・映画館・演芸場等
- キャバレー・風俗施設
- 幼稚園・学校全般(幼保連携型認定こども園を除く) 2019年出題有
- 病院
危険性が大きくて、環境に悪い建築物も多くなるので、多くの人が集まる建造物は許可しないという意図が感じられますよね。
住宅やスポーツ施設の建築に関しては、禁止していません。
一方で、工業地域には働く人達も多く存在しています。
都道府県が条例で定める認定基準を満たすものは、知事から「認定こども園」の認定を受けることができ、このような施設については、例外的に建築が認められています。
少し違和感があるかもしれませんが、子育て支援の一環で限定して認めているのだと考えてください。
工業専用地域
『工業専用』なので、住宅が建てられなくなります。
店舗等についても、物品販売と飲食店以外は全てダメです。
働く人達にとって、無いと困る商売しか認めないという事ですね。
スポーツ施設や遊戯施設も基本的には建築できません。
パチンコ店も建築できないので、かなり厳しい事が想像できますよね。
(10,000㎡以下のカラオケ店は、何故か許されます)
学校全般に加え、図書館や老人ホーム等も建築できません。
※ 福祉センター等、寝泊りが無い施設は建築可
とにかく、人の住む場所では無くなっているというイメージが大事です。
特別用途地区と特定用途制限地域
特別用途地区
特別用途地区は、用途地域の中で定められる特別な地区のことです。
同法では、「用途地域内の一定の地区における当該地区の特性にふさわしい土地利用の増進、環境の保護等の特別の目的の実現を図るため当該用途地域の指定を補完して定める地区」と規定されています。
特別用途地区での建築物の建築の制限又は禁止に関して必要な規定は、地方公共団体の条例で定めることができ、国土交通大臣の承認を得れば、制限を緩和することも可能です。(第49条)
特定用途制限地域
これに対し、特定用途制限地域は、用途地域が定められていない区域で定められる地域です。
こちらは、用途を制限すべき建物について規定するものだと考えてください。
建築物の敷地、構造、建築設備に対する制限
用途地域、特別用途地区、特定用途制限地域、都市再生特別地区又は特定用途誘導地区内における建築物の敷地、構造又は建築設備に関する制限で当該地域又は地区の指定の目的のために必要なものは、地方公共団体の条例で定める。(第50条)
特殊建築物の位置
都市計画区域内においては、卸売市場、火葬場又はと畜場、汚物処理場、ごみ焼却場その他政令で定める処理施設の用途に供する建築物は、都市計画においてその敷地の位置が決定しているものでなければ、新築し、又は増築してはならない。
ただし、特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経てその敷地の位置が都市計画上支障がないと認めて許可した場合又は政令で定める規模の範囲内において新築し、若しくは増築する場合においては、この限りでない。(第51条)
まとめ|勉強のコツ
用途地域については、ネット等でも簡単に一覧表を探すことができます。
覚えやすい方法で全体像を掴んでおき、過去問で記憶をブラッシュアップすれば良いと思います。
新設された田園住居地域については、低層住居専用地域と同様の建築ができ、付随的に農業に関する施設等が追加されます。
無料テキスト「宅建独学用 無料テキスト|建築基準法 ⑤」へ