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不動産営業のつくり方

認知症がもたらす相続時の金融リスク

日本は、高齢者の人口割合が世界で最も高い水準にある国です。

ですから、認知症の人口割合が世界で最も高いということにもなるでしょう。

近年、高齢化社会の新たな問題点として、認知症による金融リスクが注目を集めています。

相続が発生した際、認知症は大きな障壁となり、大きなリスクに繋がります。

この記事では、認知症が原因となって派生する様々なリスクと、個人でできる5つの対策についてご紹介します。

認知症と株式投資

株式投資をしていた高齢者は、塩漬け株を持っていることが多く、家族も詳細を把握していないケースがあります。

専門家の間では、このような人達(株主)の高齢化(認知症発症等)が懸念され始めました。

 

将来、認知症になった高齢者が保有する株式は、日本の株式市場全体の10~15%を占める可能性があると言われています。

これは、認知症患者の増加によって、日本の株式市場の流動性が悪化することを示唆しています。

私達が思っていた以上に、株式市場への影響が大きい潜在リスクとして注目され始めているわけです。

 

認知症の診断を受けると、自己資産を自由に動かすことができなくなります。

成年後見制度等を利用し、専門の司法書士等をつけていたとしても、資産を動かすための手続きにはとても時間がかかるのです。

 

株価の評価は、相続が発生した時(死亡時)で算出される為、急落の時期に重なると、大きな損失にも繋がることになります。

リーマンショックやコロナショックのような時期に相続が発生した場合、多額の相続資産を失うかもしれないのです。

 

一般的に、株式市場は流動性が悪化すると、ポジションを閉じる動き等が出やすくなり、下落に繋がることが多いです。

車の運転と同じように、株式市場からの撤退についても「免許返納」と同じ感覚で遂行しなければならない時代なのではないでしょうか。

 

認知症で不動産向け融資が危ない?!

不動産投資向けの融資割合は、全体の70%前後が60歳以上の人に対して行われているそうです。

しかも、最も多いのは、70歳以上の人に対する融資である実情があるのです。

 

相続税対策を意識する年齢は、60歳を超えているケースが多く、見方によっては「認知症が近い人達への融資」とも言えそうですよね。

通常の融資よりも、流動性が損なわれる可能性が高い為、これが不良債権として焦げ付いた時には、金融機関に大きな損害が発生するかもしれません。

 

高齢化に伴って、所有物件の経年劣化と空室率増加等に上手く対応できない等、賃貸経営での運用状況が悪化するリスクも高まります。

 

債務者に認知症患者が増えると、金融機関側がいざという時、自由に担保物件を売却することができず、資金回収が大幅に遅れる可能性が懸念されています。

このような問題が、金融機関の不良債権の増加に繋がれば、大きな社会問題となるでしょう。

 

認知症で住宅ローンもリスク増加

銀行等が個人向けに融資敷いている住宅ローンの債務者についても、全体の4割程度は高齢者である現状があります。

これは、年金収入になってからも、住宅ローンを払い続けるような返済計画で借り入れしている人がたくさんいるからです。

 

40歳で家を購入した場合、35年の住宅ローンの完済は75歳です。

繰り上げ返済ができない人は、年金から住宅ローンを支払うことになるわけですが、将来に年金の支給額が減額される可能性は高いでしょう。

 

金融機関としては、こちらも同時進行で不良債権リスクが高まっていくことになります。

この問題は、第二のサブプライムショック懸念となりそうだと思いませんか?

 

近い将来、これが顕在化した場合、金融株をはじめとしたショック安を誘発する可能性があります。

日本株へ投資する外国人投資家からも嫌気される事柄です。

東京市場の流動性は著しく失われ、毎日がお盆期間のような閑散相場となるかもしれません。

 

高齢化に備える金融対策

日本人は、複数の銀行に口座を持っている人が多い国です。

これは、ペイオフ制度の存在や、年金や給与振り込み等の口座を分ける習慣があるからです。

 

日本人は、用途に合わせて口座を持つ傾向がありますが、世界的には一つにまとめるのがスタンダードのようです。

フランスやドイツ等、ヨーロッパ諸国では通帳は多くても2つまでというのが常識となっています。

 

複数の口座があると、相続の際にも時間がかかる要素が増えます。

保有株式を売却できたとしても、直結する口座が動かせない状態では遺産分割もスムーズにはいかないでしょう。

 

日本でも、国の政策等によって、一定の年齢を超えた人達に限定して、口座の統合メリットを付与するべき時代なのかもしれません。

個人の対策としては、一定の年齢に達したら、以下にご紹介する5つの対策を講じていくのが理想です。

 

実際には、なかなか難しい状況の人も多いとは思いますが、残された人達の事も考えて、検討していく必要があると思います。

 

  1. 資産の組み換えを進める
  2. 不動産の管理方法を整理する
  3. 口座を1つにまとめていく
  4. 良い司法書士をみつける
  5. 遺言を作成しておく

 

1.資産の組み換えによるリスク対策

保有資産については、早い段階から時間をかけて組み替えていくことが有効な対策となります。

例えば、株の保有数を減らす(又は保有しない)という行動をとれば、資産を現金に組み替えたことになります。

 

一時的な損失は生じるケースは多いですが、資産の組み換えが全て完了した時に、その損失を取り戻せるようなプランがある事も多いです。

 

例えば、株式や価値の低い不動産資産を売却し、都心部の収益物件に資産を移します。

すると、複数あった資産が一つに統合された形になります。

 

しかも、都心部の区分所有物件は借地権割合が高い為、相続時の評価額が大幅に下げることができます。

空室率も低く、流動性も高い資産なので、生前贈与等で直系卑属へと手渡すことができる資産形成ができます。

 

投資金額が大きいので、利回りは低い傾向となりますが、ローリスクローリターンな優良資産と考えれば、子供達が長く持つことで資産組み換え時の損失を取り返すことができるわけです。

また、更に有益な物件に買い替えるという選択肢も出てくるのです。

 

2.不動産投資の運用委託

優良な資産への組み換えが終わったら、資産の管理について考えていきましょう。

これまで、自分で物件を管理していた人等は、自分が認知症になった時の事を考えて、管理委託先の選定を進めておくことが有効です。

 

また、空室が出た際の対処や、リフォーム業者の指定等があれば、細かく文書にしておくと良いと思います。

認知症によって運用状況が悪化すれば、せっかくの不動産投資が台無しになってしまいますから、しっかりと準備をしておきましょう。

 

3.口座をまとめる

複数の口座を持っている人は、一定の年齢に達したら、できるだけ1つの口座に統合しましょう。

認知症になった時や、相続時の手続きがかなり軽減されます。

 

金融機関の数が多いと、同じような手続きを口座の数だけ行わなければなりません。

受け継ぐ側からすると、時間的にも精神的にも疲れる作業です。

親族間の金銭トラブルにも繋がりやすい問題ですので、少しずつ進めておくと良い金融対策です。

 

4.法律家(司法書士等)を探す

認知症や相続対策を考えると、信頼できる法律家への相談が必要になることも多いです。

遺言書を作成するにしても、成年後見制度を利用するにしても、司法書士や弁護士等の法律家に相談することになると思います。

 

民法の改正によって、自筆証書遺言が行いやすくなりましたが、その活用が広がるにはもう少し時間が必要にも思えます。

法律的に無効となる遺言書を作成しても意味がありませんから、様式等についてはよく勉強する必要があります。

 

法律家にもモラルの低い人はいますから、相談する相手を選別することが大切です。

悪い法律家」を選ぶと、資産処分等で権利を悪用されるおそれがあります。

 

どんな業種にも法を守らない人が存在するのでしょうし、お金目当てに悪事を働く輩がいます。

時間をかけて、誠実で信頼できる法律家を見つけておくことも有効な対策の一つだと思います。

 

5.遺言書を作成する

法律上で無効とならない手続きによって遺言書を作成しておくと、親族間でのトラブルを避けることができます。

また、法律の許す範囲で、自分の好きなように資産を分け与える事ができます。

 

資産の大きさに関わらず、このような準備をしておいてあげることが、残された人達に対する礼儀だと心得ましょう。

遺言書は、自分に残された最後の仕事だと思って取り組んでください。

 

まとめ

認知症人口が増加すると、株式・銀行・不動産等に悪影響が生じます。

また、世の中に危機感を持たせるレベルの大きなショック(株価暴落等)が起こると、多額の資産を失う可能性が高いです。

このような事態を回避するには、事前の対策について広く周知し、それぞれが実行していくことが必要です。

相続対策とも直結する部分ですので、身近にいる親族等が、高齢者に行動を働きかけていく努力も大切ですね。

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