行為能力についての宅建独学テキストを作成しました。
宅建の試験では、最初の数問の中で行為能力についての肢が見られることが度々あります。
とても簡単な内容なので、民法の基礎部分的なサービス問題として出題されているように感じます。
つまり、民法の中でも得点しやすい部分という事ですから、主要部分はきちんとおさえておきましょう。
未成年者の法律行為
第5条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
単に権利を得る法律行為とは、何かを無料でもらう行為等のことで、負担や管理費用がついていないものを「単にもらうだけ」と言う意味です。
義務を免れる法律行為とは、やらなくてはいけない事を免除してもらうような場合です。
例えば、借りていたお金を「あれ、もういいよ」等と言われて返済せずに済むようになった場合等です。
単に権利を得、又は義務を免れる法律行為以外は、法定代理人の同意が必要で、同意が無いときには取消ができるという事です。
「目的を定めて処分」の意味は、「お昼代」等のように、明確な目的で渡したお金、といった感じです。
昼飯に使うのであれば、未成年者でも渡した金額の範囲内で自由に決められるという事です。
「目的を定めないで処分を許した」とは、「好きなものを買いな」と言って渡したお金のようなものです。
どちらも未成年者が自由に処分できると言っているだけです。
(未成年者の営業の許可)
第6条 一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。
2 前項の場合において、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、その法定代理人は、第四編(親族)の規定に従い、その許可を取り消し、又はこれを制限することができる。
事業をしようとする未成年者がいて、法定代理人がそれを許した場合、一人前のビジネスマンとして扱われます。
ビジネスに関しては、「未成年だから」という理由で保護されなくなるという事です。
未成年者ですから、事業に失敗する可能性もあります。
客観的に見て、事業を継続させることができないと判断できる事由があるときは、法定代理人が許可を取り消すことができると言っています。
後見開始の審判
第7条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
精神上の障害によって物事を理解する能力を欠く人には、その人を見守る人(後見人)が必要ですよね。
サポートすべきレベルを判断するのが、後見開始の審判です。
第8条 後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。
成年被後見人を見守る人のことを成年後見人と呼びます。
後見開始の審判を受けた人は、成年被後見人と呼ばれます。
「被」という文字が付くのが本人です。
第9条 成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。
平成20年度 出題(正解肢)
成年被後見人が行った法律行為は、事理を弁識する能力がある状態で行われたものであっても、取り消すことができる。ただし、 日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りではない。
第10条 第7条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判を取り消さなければならない。
精神上の障害が回復した場合の事を言っています。
家庭裁判所は、請求があれば必ず取り消さなければなりません。
保佐開始の審判
第11条 精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第七条に規定する原因がある者については、この限りでない。
精神上の障害によって、能力が「著しく不十分」である場合は、保佐開始の審判になります。
能力を「欠く」まではいかないけれど、普通の人に比べれば著しく不十分というレベルの場合です。
第12条 保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人を付する。
後見人の時と同じ理屈で、名称が変わるだけです。
第13条 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。
一 元本を領収し、又は利用すること。
二 借財又は保証をすること。
三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
四 訴訟行為をすること。
五 贈与、和解又は仲裁合意をすること。
六 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
七 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
八 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
九 第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。
被保佐人の場合、後見人に比べれば、物事を判断する力が少し残っています。
ですから、同意が必要となる法律行為を重要な事項に限定しています。
宅建では、後見人との違いが理解できていれば充分だと思いますので、各項目まで覚える必要は無いと思います。
後見の場合と同じく、精神上の障害が回復した等、原因が消滅した時は、家庭裁判所は請求によって保佐開始の審判を取り消さなければなりません。
補助開始の審判
第15条 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第七条又は第十一条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
2 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
保佐の場合よりも、更に軽度な能力不足の場合、補助開始の審判をすることができます。
判断力が残されている人なので、補助開始の審判には本人の同意を必要とするという点がポイントになります。
補助開始の審判を受けた者は、被補助人となり、これに補助人が付けられます。
精神上の障害が回復した等、原因が消滅した時は、家庭裁判所は請求によって補助開始の審判を取り消さなければなりません。
ポイント
精神上の障害による能力の欠如は、最も重い症状の場合が「後見」、重いのが「保佐」、やや重いのが「補助」という三段階になっています。
補助の場合だけは、本人の同意が必要であることを覚えておきましょう。
第21条 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。
まとめ|勉強のコツ
行為能力に関する条文は、他にもあります。
しかし、宅建の試験では、今回のテキストに載せた内容だけ覚えておけば充分だと考え、いくつかの条文を省略しました。
仮に、未出題の条文から出題されたとしても、基本的知識があれば消去法的に判断できるレベルである可能性が高いと思います。