民法の中でも、相続に関連するについては、毎年出題されています。
相続関連の勉強範囲は広く、本試験での出題も複数の条文から複合的に作成される事が多いです。
条文を1つずつ勉強していくのは大変ですので、要点だけ説明したテキストを作成しました。
試験で問われそうな部分にクローズアップしていますので、一通り理解してから過去問をやってみてください。
相続の基本
相続は、誰かが死亡することによって、被相続人(死亡者)の住所において開始されます。
相続に関する費用は、相続人(相続する人)に過失が無い限りは、その相続財産の中から捻出します。
相続人としての権利は、胎児として存在した時点で、既に生まれたものとみなされます。
但し、死産だった場合は適用されません。
相続人には、相続のやり直しを求める権利があります。
例えば、相続手続きに不可解な部分がある等、自分の権利を侵害された時に相続のやり直しを請求する権利です。
これを、相続回復請求権と言い、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅します。
相続開始の時から20年を経過したときも、同様に消滅します。
民法では、亡くなった人が遺言を残さなかった時の考え方を定めていて、これを『法定相続』と呼びます。
これに対して、遺言の場合は、法律ではなく本人の意思です。
遺言書が有効なものであれば、その内容が優先されます。
妻と子の法定相続権
被相続人の配偶者は、生きていれば常に相続人となります。
そして、被相続人の子は、第一順位の相続人だと覚えておいてください。
ここで言う「子」には、養子・非嫡出子(結婚していない相手との間にできた子)も含まれ、実子と同じように扱います。
「(妻+優先順位の高い相続人)=相続できる人達」という式で覚えてもOKです。
妻が死亡している時には、子供達だけで遺産を分けます。
被相続人の子は、第一順位だからです。
法定相続の場合、内縁の妻(籍を入れていない)は、相続人にはなりませんので、注意しましょう。
もしも、被相続人の子が相続開始前に死んでしまった場合、その子供(死亡者から見て孫)がいれば、代わりに相続人となります。
孫が、被相続人の子と同じ順位の扱いをされます。
これを、代襲相続と言います。
被相続人が自分の子を法的に廃除していた場合でも、代襲相続は発生します。
被相続人が廃除した子だけを飛ばすことになり、その孫には、廃除した子の分の相続権が移るということです。
但し、被相続人の子が、自ら相続を放棄した場合には、代襲相続は発生しません。
考え方としては、被相続人の子の相続権は一代で消えず、次の世代の誰かが必ず引き継ぐという事です。
被相続人の子が死亡している場合は、孫や曾孫にその相続権が移っていくと考えて下さい。
被相続人に子孫が存在しない場合には、次の順位者へと権利が移るという仕組みです。
また、以下のようなケースに該当する者は、そもそも相続人になることができませんので、順番を飛ばされます。
- 刑に処されている
- 被相続人が殺害されたことを知り、これを告発せず、又は告訴しなかった
- 詐欺又は脅迫による相続
- 遺言書の偽造・隠匿等
親と兄弟の法定相続権
被相続人と配偶者の間に、子孫が存在しない場合には、第二順位へと権利が移ります。
第二順位となるのは、被相続人の直系尊属です。
直系尊属とは、親とか祖父母等、自分よりも先に産まれた親族の事です。
自分に近い親族が優先となりますので、まずは両親ということになります。
整理すると、子供がいない夫婦の場合、妻とその直系尊属が相続人になるという事です。
妻が死亡していて、子や孫もいない場合は、直系尊属だけで相続します。
第三順位は、被相続人の兄弟姉妹です。
直系尊属がこの世にいない場合、被相続人の妻と、被相続人の兄弟姉妹が相続します。
妻が死亡していて、高順位の相続人がいない場合、兄弟姉妹だけで相続します。
第三順位までの相続人が全く存在しない場合、特別縁故者が相続人の候補となります。
特別縁故者とは、被相続人と一緒に暮らしていた人や、療養看護をしていた人、特別な縁故があった人等のことです。
特別縁故者に該当するかどうかは、家庭裁判所が判断します。
特別縁故者も存在しない場合は、国庫に帰属します。
推定相続人の廃除
推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
参 考
廃除は、遺言でもする事もできます。
廃除は、いつでも取消しができます。
法定相続の割合
法定相続人の相続割合については、試験でも良く出題されていますので、しっかりと覚えておきましょう。
同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、以下のように定められています。
配偶者と子が相続人であるときは、各2分の1ずつです。
複数の子がいる場合、全体の2分の1を子の人数で割って分け合います。
相続財産が1億円の場合なら、妻が5千万円、子供達で5千万を分けるという事です。
但し、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1です。
つまり、父違い又は母違いの兄弟は、普通の兄弟の半分というルールにされています。
配偶者と直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、3分の2とし、直系尊属の相続分は、3分の1です。
配偶者と兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は、4分の1です。
平成26年度 出題
Aには、父のみを同じくする兄Bと、両親を同じくする弟C及び弟Dがいたが、C及びDは、Aより先に死亡した。Aの両親は既に死亡しており、Aには内縁の妻Eがいるが、子はいない。Cには子F及び子Gが、Dには子Hがいる。Aが、平成26年8月1日に遺言を残さずに死亡した場合の相続財産の法定相続分として、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
- Eが2分の1、Bが6分の1、Fが9分の1、Gが9分の1、Hが9分の1である。
- Bが3分の1、Fが9分の2、Gが9分の2、Hが9分の2である。
- Bが5分の1、Fが5分の1、Gが5分の1、Hが5分の2である。
- Bが5分の1、Fが15分の4、Gが15分の4、Hが15分の4である。
ポイント
- 内縁の妻は相続人になれない。
- 相続人は、B・F・G・Hの4人である
- FとGとHの3人は、代襲相続人である
- FとGは、Cの相続分を半分ずつ受け継ぐ
- Hは、Dの相続分をそのまま受け継ぐ
- Bは、他の兄弟の2分の1の相続権利者
Aの相続人は、本来はB・C・Dの3人です。
そして、この3人の相続割合は、Bが1だとすると、CとDは2になるように分配されます。
これを分数にすると、Bは5分の1、CとDは5分の2ずつとなります。
FとGは、5分の2を半分ずつ分けますので、5分の1ずつもらうことになります。
平成13年度 出題
被相続人Aの相続人の法定相続分に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
- AとBが婚姻中に生まれたAの子Cは、AとBの離婚の際、親権者をBと定められたが、Aがその後再婚して、再婚にかかる配偶者がいる状態で死亡したときは、Cには法定相続分はない。
- Aに実子がなく、3人の養子がいる場合、法定相続分を有する養子は2人に限られる。
- Aが死亡し、配偶者D及びその2人の子供E、Fで遺産分割及びそれに伴う処分を終えた後、認知の訴えの確定により、さらに嫡出でない子Gが1人いることが判明した。Gの法定相続分は1/10である。
- Aに子が3人あり、Aの死亡の際、2人は存命であったが、1人は既に死亡していた。その死亡した子には2人の嫡出子H、Iがいた。A死亡の際、配偶者もいなかった場合、Hの法定相続分は1/6である。
特別受益者の相続分
相続の方法の一つに、遺贈というものがあります。
遺贈は、遺言によって財産を贈ることです。
遺贈は、相続人以外の相手にもすることが出来ます。
相続開始の際、被相続人から遺贈を受けた者が含まれていた場合、その相続人だけに特別な受益があった可能性がありますよね。
公平な相続をする為に、このような生前贈与的な受益があった部分は、法定相続で受け取る相続割合の中からその遺贈分を除いた残額を相続分にすると規定しています。
遺産の分割
遺産分割協議という言葉を聞いたことがありませんか?
民法では、被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができるとしています。
そして、遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができます。
ここまでで勉強した法定相続分や、その割合というのは,遺言書がない場合に備えて法律で相続分の基準を示しているものです。
ですから、法定相続割合の通りに遺産分割をしなければいけないという趣旨ではありません。
つまり、法律で決められている相続割合は、自分達の話し合いで変更して構わないのです。
考えてみれば、親戚で話し合ってトラブルなく相続できるのなら、初めから法律で決める必要など無いですよね。
法定相続とその割合は、困った時のための指標(見本)として規定しているといった感覚で理解すれば良いと思います。
遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生じますが、第三者の権利を害することはできません。
被相続人は、遺言で、遺産分割の方法を定めることができ、また相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることもできます。
相続の承認と放棄
相続には、「単純承認」と「限定承認」の2種類があります。
また、一定の手続きを経て相続を放棄することもできます。
単純承認は、ありのまま相続を承認することです。
条文では、「無限に被相続人の権利義務を承継する」と表現されています。
故人の債務等、マイナスの資産が含まれていても、そのすべてを引き継ぎます。
限定承認は、相続資産から債務等を差し引き、残った部分だけ引き継ぐものです。
限定承認をするには、相続があったことを知った時から3カ月以内に、相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認する旨を申述しなければなりません。
限定承認の手続きは、相続人全員で共同して行う必要があり、独断では出来ません。
また、3カ月以内に限定承認又は相続の放棄をしない場合は、相続人は単純承認したものとみなされます。
相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときについても同様に単純承認したことになります。
相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければなりません。
そして、放棄が行われると、その相続に関しては、初めから相続人ではなかったものとみなされます。
平成28年度 出題(正解肢)
【前提条件】
甲建物を所有するAが死亡し、相続人がそれぞれAの子であるB及びCの2名である
- Bが甲建物を不法占拠するDに対し明渡しを求めたとしても、Bは単純承認をしたものとはみなされない。
- Cが甲建物の賃借人Eに対し相続財産である未払賃料の支払いを求め、これを収受領得したときは、Cは単純承認をしたものとみなされる。
- Cが単純承認をしたときは、Bは限定承認をすることができない。
遺言
民法では、15歳に達した者が遺言をすることができるとしています。
遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができません。
そして、遺言をする時には、能力を有している(正気である)ことが必要です。
また、遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができません。
遺言の方式には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つがあります。
定期的に遺言を作成していると、遺言書が複数存在する事もあるでしょう。
前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます。
要するに、一番後に書かれた遺言を優先するという事です。
自筆証書遺言
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文と日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければなりません。
これらの要件を満たさない場合は無効な遺言となってしまいます。
2019年1月に法改正された部分がありますので、以下に条文を記載しておきます。
第968条 2019年法改正
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び指名を自筆し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。
この場合において、遺言者は、その目録の毎業(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
現代では、パソコンによって書類を作成することが多い為、これに対応するための条文です。
但し、全てのページに署名と押印が必要となる点がポイントです。
公正証書遺言
公正証書によって遺言をするには、証人二人以上の立会いにより、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授します。
この際、公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させることも要件になっています。
そして、遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押します。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言者が署名して押印した証書を、同一の印章を用いて封印します。
そして、遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述することによって行います。
公証人は、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押します。
秘密証書による遺言は、秘密証書遺言としての方式に欠ける部分があっても、自筆証書遺言の要件を具備している時は、自筆証書による遺言としてその効力を有します。
平成17年度 出題(正解肢)
適法な遺言をした者が、その後更に適法な遺言をした場合、前の遺言のうち後の遺言と抵触する部分は、後の遺言により取り消したものとみなされる。
医師の立会い
成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時に遺言をする場合には、医師2人以上の立会いがなければならない。
遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。
証人と立会人の欠格事由
以下の者は、遺言の証人又は立会人となることができません。
- 未成年者
- 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
- 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
特別の方式
遺言には、特別な方式ですることができるものがあります。
これは、遺言の中でも番外編的な部分ですから、試験でも出題される可能性が低いと思います。
ですから、予備知識として、読んでおく程度で良いと思います。
病気などによって、死亡の危急に迫った者が遺言をする時は、証人三人以上の立会いをもって、その一人に遺言の趣旨を口授することで遺言ができます。
伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所に在る者は、警察官一人及び証人一人以上の立会いをもって遺言書を作ることができます。
船舶中に在る者は、船長又は事務員一人及び証人二人以上の立会いをもって遺言書を作ることができる。
船舶が遭難した場合において、当該船舶中に在って死亡の危急に迫った者は、証人二人以上の立会いをもって口頭で遺言をすることができます。
口がきけない者が遺言をする場合には、遺言者は、通訳人の通訳によりこれをしなければなりません。
証人が、その趣旨を筆記して、これに署名し、印を押し、かつ、証人の一人又は利害関係人から遅滞なく家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じません。
遺言の効力
遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生じます。
遺言に停止条件を付し、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、条件が成就した時からその効力を生じます。
受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも遺贈の放棄をすることができます。
遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生じます。
また、遺贈の承認と放棄は、撤回することが出来ません。
遺留分
遺留分とは、被相続人の兄弟を除く法定相続人が、法律上で最低限保障されている相続財産の割合の事です。
被相続人が、家族に相続財産が残らないような遺言書を残して亡くなった場合でも、残された遺族に最低限受け取れる権利を規定しているわけです。
直系尊属のみが相続人である場合は、被相続人の財産の3分の1がもらえる、というような割合が定めてありますが、宅建の試験ではこれを計算する問題までは出題されないと思います。
遺留分の意味と、権利について理解しておけばOKです。
平成24年度 出題
【前提条件】
Aは未婚で子供がなく、父親Bが所有する甲建物にBと同居している。Aの母親Cは平成23年3月末日に死亡している。AにはBとCの実子である兄Dがいて、DはEと婚姻して実子Fがいたが、Dは平成24年3月末日に死亡している。
- Bが死亡した後、Aがすべての財産を第三者Gに遺贈する旨の遺言を残して死亡した場合、FはGに対して遺留分を主張することができない。
遺留分侵害額請求権
近年、相続法改正によって、遺留分の請求方法に変化がありました。
これまでは、遺留分は「侵害された遺産そのものを取り戻す権利」で、遺留分減殺請求権と呼ばれていました。
法改正によって、これが「遺留分侵害額請求権」と改められ、遺産そのものではなく「お金を請求する権利(債権的権利)」に変更されています。
不平等な遺言や贈与によって遺留分を侵害された法定相続人が、侵害した人へ遺留分の取り戻しをお金で請求するできるわけです。
その権利を「遺留分侵害額請求権」と言うと覚えておきましょう。
この請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅します。
相続開始の時から10年を経過したときも、同様に消滅します。
因みに、遺留分侵害額請求権は時価で計算することができます。
つまり、不動産についての請求をする場合、相続税路線価ではなく、市場での取引価格で考える事が出来るという事です。
平成27年度 出題(正解肢)
被相続人がした贈与が遺留分減殺請求(現在は改正されています)により全部失効した場合、受贈者が贈与に基づいて目的物の占有を平穏かつ公然に20年間継続したとしても、その目的物を時効取得することはできない。
補 足
この問題は、複合的知識が必用になりますので、少し難しい正解肢に見えると思います。
しかし、この問題は、他の肢が間違いであることが容易に見抜ける内容で、消去法的に正解できるものでした。
本来のレベルを超えている内容なので、今後の出題の可能性は低い部分と考えます。
遺留分の放棄
相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
遺留分の放棄は、生前に行うこともできますが、後から撤回はできません。
また、遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼしません。
その分だけ、他の相続人の相続金額が増えるわけでは無いということです。
配偶者居住権
2020年法改正
配偶者居住権は、2020年4月の民法(相続法)改正で、新しく新設された権利です。
遺産分割時に、遺言等によって配偶者に居住権を権利として取得させられるようになりました。
試験対策として重要な部分は、赤文字又は下線で表示していますので、意識して学習してください。
(配偶者居住権)
第1028条 被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。
2 居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。
3 第九百三条第四項の規定は、配偶者居住権の遺贈について準用する。
(審判による配偶者居住権の取得)
第1029条 遺産の分割の請求を受けた家庭裁判所は、次に掲げる場合に限り、配偶者が配偶者居住権を取得する旨を定めることができる。
一 共同相続人間に配偶者が配偶者居住権を取得することについて合意が成立しているとき。
二 配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるとき(前号に掲げる場合を除く。)。
(配偶者居住権の存続期間)
第1030条 配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間とする。ただし、遺産の分割の協議若しくは遺言に別段の定めがあるとき、又は家庭裁判所が遺産の分割の審判において別段の定めをしたときは、その定めるところによる。
(配偶者居住権の登記等)
第1031条 居住建物の所有者は、配偶者(配偶者居住権を取得した配偶者に限る。以下この節において同じ。)に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負う。
2 第六百五条の規定は配偶者居住権について、第六百五条の四の規定は配偶者居住権の設定の登記を備えた場合について準用する。
(配偶者による使用及び収益)
第1032条 配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用及び収益をしなければならない。ただし、従前居住の用に供していなかった部分について、これを居住の用に供することを妨げない。
2 配偶者居住権は、譲渡することができない。
3 配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物の改築若しくは増築をし、又は第三者に居住建物の使用若しくは収益をさせることができない。
4 配偶者が第一項又は前項の規定に違反した場合において、居住建物の所有者が相当の期間を定めてその是正の催告をし、その期間内に是正がされないときは、居住建物の所有者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者居住権を消滅させることができる。
メモ
配偶者居住権は、所有権で家を持つ場合に比べ、価値が低くなる(評価額が圧縮できる)為、税制面での恩恵もあります。
2次相続時に、本来の価値での相続税を支払う必要もない為、相続税対策としても有効な面があり、コンサルティング業務等では常識化していく知識になると思います。
まとめ
不動産の売却案件において、相続に絡んだ仕事は増加傾向にあります。
不動産コンサル業のよる土地活用提案等の際にも、相続の知識は不可欠です。
宅建の本試験では、このような時代背景を考慮して、相続からの出題に力を入れているのかもしれませんね。
相続に関する勉強のコツは、要点の概要を掴み、法定相続の計算をマスターする事です。