不動産鑑定評価基準で1問得点するための無料テキストを作成しました。
ちょっと視点を変えた実践的なテキストにしていますので、読んでおくだけで1問とれるかもしれません。
少しでも皆さんの理解が進めば幸いです。
テキストの趣旨
不動産鑑定評価基準の内容には、聞きなれない言葉や、難しい表現が多い特徴があります。
この為、単に内容を整理してあるだけのテキストでは理解が進まない人も多いのではないかと思います。
対策が難しく感じてしまうので、捨て科目にする人もいるかもしれませんね。
実際、地価公示法の方が対策がしやすいので、そちらに賭けるのも一考です。
本試験での出題傾向としては、用語の定義や鑑定方法の説明文について正誤を問うだけの形式が多いです。
鑑定評価は、相続の際の土地評価等にも重要な役割を果たしますので、今後は少し違う形態で出題される可能性もあるかもしれません。
このテキストでは、ひとまず正誤の判断に必要な知識を身に付け、正解確率を上げていくという方針で作成しています。
オススメの勉強法
不動産鑑定評価基準の勉強は、過去問をテキストにしてしまうのが一番だと思います。
かなり個人的な見解ですが、確実に1問をとりにいくには、モチベーション的に辛い内容だと思うのです。
説明文には、難解な表現も多いですし、実務上であまり使わない知識だからです。
そこで、正解肢をジャンルごとに整理し、これをテキストとして考える勉強法を提案したいと思います。
赤文字の部分を中心に読み、なんとなく覚えていく勉強法です。
本試験で実際に出題されたポイントだけを、そのまま学習していくわけです。
この勉強法でも十分効果があると思いますし、暗記と過去問を同時進行で行う事ができるというメリットもあります。
実際、私はこの勉強法で合格しましたので、それほど的外れでもないはずです。
他の法令では、複合問題や、細かい部分を聞いている形式等がありますので、この勉強方法が講じ難い部分があります。
地価公示法が出題される年には、不動産鑑定についての勉強が無駄になってしまうという事情もありますから、ここは効率の良い方法を選びたいところですよね。
このようなテキストの趣旨に同意見の方だけ利用してください。(笑)
鑑定評価基準の超簡単説明
過去問テキストを読む前に、最低限の事項を超簡単に説明しておきます。
まず、貴方が世の中の牛乳の価格(時価)を決める人になったと考えてください。
突拍子もない例えですが、少しお付き合いください。(笑)
そうしたら、まずは現在の価格とか、現存するメーカー数とかを調べて相場を掴みますよね。
この段階を、鑑定評価上では、基本的事項の確定と呼びます。
次に、貴方は、価格が変動する要因を考えるでしょう。
例えば、猛暑で牛の乳が出ないとか、牛乳を飲む人が減っているとか、景気の影響とか、新たな法規制等の有無等です。
これらを、不動産鑑定評価基準では、「一般的要因」と呼びます。
一般的要因の種類は、自然的、社会的、経済的、行政的といった要因名が付けられていますので、このような文言が出てきたら、正常な価格をつけるための考慮材料の一種だと思ってください。
また、同じ地域の中でも、山の上の遠い場所等は、輸送費等の関係で単価が高くなることもあるでしょう。
工場から近くて安くできる場合もあるかもしれません。
これを、地域要因と言います。
また、牧場によっては、ジャージー牛等の外国種の牛乳をつくることによって、単価を上げている場合もありますよね。
餌に特別なコストをかけ、製品価値を上げる牧場もあるかもしれません。
このような事情を、個別的要因と言います。
3つの評価法
不動産鑑定評価基準の勉強で、最も実務で役立つ部分は、3つの評価方法です。
試験対策的にも、今後の知識としても、以下の3つは覚えておくと良いと思います。
- 原価法
- 取引事例比較法
- 収益還元法
原価法は、もう一度同じ不動産を取得した時にかかる想定費用で評価する方法です。
取引事例比較法は、周辺の取引例を参考に、様々な要因について事情補正等をして評価する方法です。
収益還元法は、その不動産が将来に発生させる収益を考慮して評価する方法です。
簡単すぎる説明ではありますが、詳しくは過去問テキストの中で学習していきましょう。
過去問テキスト
平成28年出題
同一需給圏とは、一般に対象不動産と代替関係が成立して、その価格の形成について相互に影響を及ぼすような関係にある他の不動産の存する地域をいうが、不動産の種類、性格及び規模に応じた需要者の選好性によって、その地域的範囲は狭められる場合もあれば、広域的に形成される場合もある。(平成28年度)
試験に出すような内容なのかは疑問ですが、言っている事は当たり前の話です。
一応、私なりに通訳しておきますね。
同一需給圏とは、物件を探すエリアだと思えば良いと思います。
一定の地域内では、同じような条件の不動産同士が相場に影響し合いながら価値を形成します。
そして、不動産の形や状況、ユーザーの好み等によって、地域内での局地的な人気が起こる事もあれば、広範囲に探すことができる場合もあるという事を説明しています。
よく考えれば、そりゃそうだって話ですよね。
平成24年出題
不動産の価格を形成する要因とは、不動産の効用及び相対的希少性並びに不動産に対する有効需要の三者に影響を与える要因をいう。不動産の鑑定評価を行うに当たっては、不動産の価格を形成する要因を明確に把握し、かつ、その推移及び動向並びに諸要因間の相互関係を十分に分析すること等が必要である。(平成24年度)
これも、簡単に説明しておきます。
不動産の価格形成は、「その物件が何に使えるのか」、「どれくらい珍しいのか」、「欲しがっている人の数」が要因になっています。
これらを前提に、冒頭で説明した牛乳の話のように、諸要因を分析していくことが必要だと言っています。
法律的に説明すると、いたずらに難しくなってしまうだけで、内容的には当たり前の話なのです。
不動産の鑑定評価における各手法の適用に当たって必要とされる事例は、鑑定評価の各手法に即応し、適切にして合理的な計画に基づき、豊富に秩序正しく収集、選択されるべきであり、例えば投機的取引と認められる事例は用いることができない。(平成24年度)
売り急ぎ、買い進み等の特殊な事情が存在する場合等は、事情補正や時点修正をすることでその事例を用いることができますが、投機的な取引は事例として用いる事ができません。
投機的な取引は、本来の相場から乖離し過ぎる可能性が高いからです。
時点修正とは、時間の経過によって変動する価格の修正のことです。
例えば、現在の取引と、数年前の取引事例の相場が変わっていないか考慮する事です。
取引事例比較法においては、時点修正が可能である等の要件をすべて満たした取引事例について、近隣地域又は同一需給圏内の類似地域に存する不動産に係るもののうちから選択するものとなるが、必要やむを得ない場合においては、近隣地域の周辺の地域に存する不動産に係るもののうちから選択することができる。(平成24年度)
平成22年出題
不動産の効用及び相対的希少性並びに不動産に対する有効需要の三者に影響を与える要因を価格形成要因といい、一般的要因、地域的要因及び個別的要因に分けられる。(平成22年度)
定義の話なので、そのまま覚えるしかない内容ですね。
繰り返し出題されるかどうかは分かりませんが、なんとなく理解しておくと良いと思います。
正常価格とは、市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をいう。(平成22年度)
正常価格の意味は、この設問の通りです。
これが正解肢だと判別できるように、何度か読んで頭に入れておきましょう。
取引事例に係る取引が特殊な事情を含み、これが当該取引事例に係る価格等に影響を及ぼしているときは、適切に補正しなければならない。(平成22年度)
これは、事情補正及び時点補正の事です。
平成20年度出題
土地についての原価法の適用において、宅地造成直後と価格時点とを比べ、公共施設等の整備等による環境の変化が価格水準に影響を与えていると認められる場合には、地域要因の変化の程度に応じた増加額を熟成度として加算できる。(平成20年度)
少し補足説明しておきます。
これは、宅地造成直後と、価格を決める時点での価値を比べた時の話です。
この間、時間経過による環境変化が価格に影響すると認められる場合、整備等で増加した増加額を加算できるという事です。
要するに、造成時と比べて価値が上がった分は加算していいよって話です。
平成19年出題
不動産の価格を求める鑑定評価の基本的な手法は、原価法、取引事例比較法及び収益還元法に大別され、原価法による試算価格を積算価格、取引事例比較法による試算価格を比準価格、収益還元法による試算価格を収益価格という。(平成19年度)
3つの評価法を詳しく説明した問題です。
取引事例比較法の適用に当たって必要な取引事例は、取引事例比較法に即応し、適切にして合理的な計画に基づき、豊富に秩序正しく収集し、選択すべきであり、投機的取引であると認められる事例等適正さを欠くものであってはならない。(平成19年度)
再調達原価とは、対象不動産を価格時点において再調達することを想定した場合において必要とされる適正な原価の総額をいう。(平成19年度)
平成17年出題
不動産の鑑定評価によって求める価格は、基本的には正常価格であり、正常価格とは、市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をいう。(平成17年度)
資産の流動化に関する法律に基づく評価目的の下で、投資家に示すための投資採算価値を表す価格を求める場合は、正常価格ではなく、特定価格として求めなければならない。(平成17年度)
収益価格を求める方法には、直接還元法とDCF(Discounted Cash Flow)法とがあるが、不動産の証券化に係る鑑定評価で毎期の純収益の見通し等について詳細な説明が求められる場合には、DCF法の適用を原則とする。(平成17年度)
ここまで覚える必要は無い気がしますが、正解肢として出題されたことがあるので、掲載しておきました。
平成16年出題
不動産鑑定評価基準にいう「特定価格」とは、市場性を有する不動産について、法令等による社会的要請を背景とする評価目的の下、正常価格の前提となる諸条件を満たさない場合における不動産の経済価値を適正に表示する価格をいう。(平成16年度)
平成13年出題
取引事例比較法とは、まず多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行い、これらに係る取引価格に応じて事情補正及び時点補正を行い、かつ、地域要因の比較及び個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考量し、これによって対象不動産の試算価格を求める手法である。(平成13年度)
平成11年出題
取引事例比較法における取引事例は、近隣地域又は同一需給圏内の類似地域に存する不動産に係るものでなければならないが、必要やむを得ない場合には、近隣地域の周辺の地域に係るものから、また対象不動産の最有効使用が標準的使用と異なる場合等には、同一需給圏内の代替競争不動産に係るもののうちからも選択できる。(平成11年度)
取引事例で用いるのは、似たような物件でなければダメですよね。
でも、数が少ない等、適当な事例が無い場合等には、少し範囲を広げるしかありません。
また、対象不動産が、普通の使い方と異なるような場合には、同じような使い方をするライバル物件でも比較できるという事です。
まとめ|勉強のコツ
過去問をテキスト化するという方法は、幾分説明不足に感じる部分もあるかもしれません。
問題文自体が説明文のようなものなので、まずは大凡の意味を理解するのがコツだと思います。
実際に出された形なので、本来はこれ以上のテキストはないのです。
実務経験がない人には、理解が難しい表現も多いので、あまり時間をかけずに赤文字を意識して読んでおき、時間が余れば過去問をやり込んでみると良いと思います。
今回の過去問テキストは、平成11年から平成28年度までの過去問から抜粋しています。
余裕があれば、これより前の過去問に挑戦してみて下さい。