民法の『代理』についてテキストを作成しました。
試験でも良く出る箇所ですので、民法の中でも優先的に学習すべき部分だと思います。
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代理とは
代理人が本人(依頼人)のためにした意思表示の効果は、本人がした意思表示と同じ効果となります。
本人に代われるので「代理」なわけです。
「私は代理人です」等と、代理人として本人のためにすることを示した場合、その意思表示は、本人に直接効果が生じるということです。
しかし、代理人も一人の人間ですから、自分自身の為に行う意思表示もありますよね。
ですから、何も説明なく示した意思表示は、原則として自己のためにしたものだとみなされます。
但し、意思表示の相手側が、代理人が本人(依頼人)のためにすることを知っているとか、知ることができたときには、本人の意思表示として扱われます。
同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできません。
但し、債務の履行を行う場合と、本人があらかじめ許諾した行為については、代理可能です。
代理人は、行為能力者であることを要しません。
つまり、未成年者でも代理人になれるということです。
本人の責任で代理人を選べると解釈すれば良いと思います。
代理権は、以下の事由によって消滅します。
- 本人の死亡
- 代理人の死亡
- 代理人が破産手続開始の決定を受けた
- 後見開始の審判を受けた
- 委任による代理権は、委任の終了
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代理行為の瑕疵
代理行為の瑕疵(かし)とは、代理人に錯誤(勘違い)があったとか、詐欺や脅迫をされていたといったケースの事です。
民法第101条では、このような代理行為の瑕疵についての善意・悪意の判断は、代理人に起きた事を基準に考えると規定しています。
代理人が受けた意思表示についても、代理人の立場を基準に善意・悪意を判断します。
しかし、代理人が本人から委託された通りに行動した場合もあるはずですよね。
例えば、本人が意図的に錯誤させるような指示を出していた場合等です。
このような場合に、本人が「代理人が勘違いしていただけだ」等と言い逃れの主張をされると困ります。
そこで、第101条2項では、本人は「代理人は過失なくその事を知らなかったのだ」と主張することはできないと規定しています。
本人の過失によって知らなかった場合も、同様にそれを主張できません。
これを踏まえて、条文を読んでみてください。
第101条 意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。
2 特定の法律行為をすることを委託された場合において、代理人が本人の指図に従ってその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。
ポイント
直近では、平成26年度の問2で出題がありました。
「事実の有無は、代理人について決するものとする」の部分を誤った表現にし、誤肢として出題されています。
今後、具体的な事例を用いた問題が出題される事もあるかもしれませんが、おそらくは消去法でも導き出せるような形になると思います。
問題のレベルが高くなるとは思えないので、ここを掘り下げて学習するよりは、基本的な事を幅広く覚えた方が良いと思います。
復代理人
復代理人とは、代理人が更に代理人を立てる場合の話です。
復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表します。
代理人は、そもそも人の代わりをするための役割を持っているのですから、復代理人を選任する場合には、それなりの理由が必要です。
委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することはできません。
法定代理人の場合は、自己の責任で復代理人を選任することができます。
もしも、復代理人を選任することになった場合は、その選任と監督について、代理人は本人に対して責任を負います。
但し、本人の指名に従って復代理人を選任したときは、代理人の責任とはなりません。
本人が選任した復代理人であっても、代理人がその人物を不適任又は不誠実であると知っていて、本人に通知しないとか、復代理人を解任するという行動をとらなかった時には、代理人にも責任が生じるので、この点は注意が必要です。
平成29年 出題(正解肢)
- 売買契約を締結する権限を与えられた代理人は、特段の事情がない限り、相手方からその売買契約を取り消す旨の意思表示を受領する権限を有する。
- 委任による代理人は、本人の許諾を得たときのほか、やむを得ない事由があるときにも、復代理人を選任することができる。
- 夫婦の一方は、個別に代理権の授権がなくとも、日常家事に関する事項について、他の一方を代理して法律行為をすることができる。
補 足
夫婦の一方が代理する日常家事に関しては、民法761条と関連しています。
日常の買い物等について、夫婦間でいちいち契約や委任をする事が無いことからも類推できると思います。
表見代理
表見代理とは、代理権が無い人物を真実の代理人だと信じてしまうような、正当な理由がある場合に、その取引は有効なものとされるという制度の事です。
誰か(第三者)に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その他人が第三者との間でした代理行為について、その責任を負います。
但し、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知っていた場合、又は自己の過失によって知らなかったときには、表見代理は成立せず、責任問題にはなりません。
代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができません。
つまり、代理権が無くなった事を、過失無く知らなかった人に対しては対抗できない(責任が生じる)という事です。
但し、第三者の過失によってその事実を知らなかったときは、その第三者に対抗できます。
平成17年度 出題(正解肢)
【前提条件】
買主Aが、Bの代理人Cとの間でB所有の甲地の売買契約を締結する場合
Bが従前Cに与えていた代理権が消滅した後であっても、Aが代理権の消滅について善意無過失であれば、当該売買契約によりAは甲地を取得することができる。
無権代理
代理権が無い者が、他人の代理人として契約を行った場合、本人が追認をしなければ、本人に対して効力を生じません。
追認とは、過去に遡って認める事です。
追認をする場合も、拒絶をする場合も、その相手方に対して行わなければ、その相手方に対抗することができません。(相手方が事実を知った場合を除く)
この場合、相手方は、本人に対して相当の期間を定めて、追認をするかどうかを催告できます。
この催告に対して本人が確かな答えを出さないときは、追認を拒絶したものとみなします。
追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生じますが、これにより第三者の権利を害することはできません。
無権代理の取消等
代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができます。
但し、契約の時に代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、取消しできません。
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負います。
但し、以下の場合は適用されません。
- 代理権を有しないことを相手方が知っていたとき
- 過失によって知らなかったとき
- 他人の代理人として契約をした者が行為能力を有しなかったとき
平成24年度 出題(正解肢)
【前提条件】
A所有の甲土地につき、Aから売却に関する代理権を与えられていないBが、Aの代理人として、Cとの間で売買契約を締結した場合。なお、表見代理は成立しないものとする。
- Bの無権代理行為をAが追認した場合には、AC間の売買契約は有効となる。
- Bの死亡により、AがBの唯一の相続人として相続した場合、AがBの無権代理行為の追認を拒絶しても信義則には反せず、AC間の売買契約が当然に有効になるわけではない。
- Aの死亡により、BがDとともにAを相続した場合、DがBの無権代理行為を追認しない限り、Bの相続分に相当する部分においても、AC間の売買契約が当然に有効になるわけではない。
3番については、共同相続人全員が共同して無権代理行為を追認しない限り、無権代理人の相続分に相当する部分においても、無権代理行為が当然に有効となるものではない、とする判例がある為です。
判例まで勉強させようという趣旨ではなく、消去法で解く問題だと考えてください。
この問題は、相続の知識との複合問題である事もあり、宅建の問題としてはレベルが高い部類になります。
問題が解けなくても、焦る必要はありません。
まとめ|勉強のコツ
このテキストでは、ほとんど条文を掲載していません。
しかし、宅建の試験対策上で必要となる個所を盛り込んであります。
このテキストを読んで、過去問での出題箇所をチェックするだけで試験対策が完了できるように作成したつもりです。
代理に関する問題は、平成20年から平成29年までの間で6回も出題されています。
勉強量が少ない割に出題率が高い部分なので、通勤時間等を利用して、しっかり読み込んでおきましょう。