思考のヒント

売主直売に対する考え方

 

今回は、当サイトの愛読者の方(不動産営業職の方)からいただいたお悩みについてです。

いただいたご質問を題材に、記事を作成しました。

営業職の経験が無い方には理解しにくいお話かもしれませんので、予めご承知おきください。

営業職においては、不動産以外のジャンルでも同じような葛藤が生じる場面があると思います。

質問者様の悩みと葛藤について、皆さんそれぞれの立場に当てはめて一緒に考えてみてください。

 

質問の内容について(概略)

不動産仲介で顧客に紹介できる物件の中には、売主が直売をしている物件があります。

売主側の会社の営業マンから購入すれば、仲介手数料はかかりません。

一方、このような物件を売主会社ではない一般の不動産仲介会社(街の不動産屋)が客付けする場合、仲介手数料がかかります。

 

この事を正直に言うべきか・・という問題もありますし、顧客からこの事実について質問されたときにもベストな返事のしかたに迷うところです。

質問者様は、このような部分で少し迷いがあり、悩みと葛藤が生じているということでした。

ご本人様に承諾をいただきましたので、実際のメール文を掲載しておきます。

詳しくは以下のメール内容をご覧ください。

 

実際のメール内容

2021年10月で業界に入って2年になる40歳男性です。
まだまだわからないことが多く、いつも色々な記事を読み返しては参考にさせていただいております。
顧客が少なく、売り上げも無く辛い時期もこちらの記事の御陰で現段階では乗り越えてこれております。
誠にありがとうございます。

今現在悩んでいることがあります。
それは売主様から直接購入出来る物件の仲介手数料についてです。
大手で販売を不動産屋に任せているような物件は問題無いのですが
主に自社で販売活動を積極的に行っており、販売件数を増やしたいがために
地域の不動産屋にも紹介を促しているような売主様の物件です。

私は自分の長所として、顧客に嘘をつかない、つけない性格だと把握しており、
お客様に対し嘘を言って購入を煽ったりしたことはありません。

(プラスになっているかどうかは正直わかりません。)

その中でそのような物件をお客様と内覧し、諸費用に関する説明をする際に
仲介手数料の金額算出方法と、この物件を購入した際に発生する仲介手数料金額を説明します。
毎回仲介手数料をいただくつもりで案内をしておりますが、心の中では
「このお客様は直接売主様にいけば購入費用がおさえられるのに」
と常に思ってしまいます。
勿論契約から引き渡し、その後のアフターフォロー等も手を抜かず全力で取り組んではおりますが
どうしても後ろめたさが抜けないのです。
まだまだ自分に自信が無いからかもしれないです。
お客様が仲介手数料の意味を理解し、尚「あなたの紹介(仲介)で家を購入したいからお願いします。」
と言っていただけるような営業マンを目指しているのですが、中々そうもいかないのが現状です。
何か前向きに考えることができる思考はありませんでしょうか?

また当初仲介手数料に納得していただけていた顧客から
「直接売主に行けば仲介手数料はかからないんですよね?」
と言われた場合どう答えることが正解でしょうか?
私は迷わず「仰る通りです。」と答えてしまっております。
仲介を入れることのメリットも自分なりには説明しているのですが
その程度では高額な仲介手数料をいただく理由にはならないと勝手に思ってしまっております。
現状仲介手数料を減額、もしくは無しにしてくれれば私にそのまま仲介して欲しいと
言っていただけるお客様ばかりではあるのですが、その都度まだまだ自分には
実力と魅力が無いのだなと落ち込んでおります。
ネガティブな質問になってしまい誠に申し訳ございません。
お忙しいと思い、このような質問をするかずっと迷っておりましたが
この度書き込ませていただくことにしました。

無理にご返信いただかなくとも結構です。
もし記事等に追記していただけると嬉しいです。
長文失礼いたしました。
いつも心の支えになっております。
誠にありがとうございます。

 

営業マンの葛藤

営業職なら、誰もが「こちらの都合」と「顧客の利益」の間で苦しむシーンがありますよね。

私も、営業時代に同じような事で悩んだ経験があります。

そして、後ろめたい営業活動をせず、上手く立ち回る方法を考え続けました。

 

営業マンの立場からすれば、正直なところ契約が欲しいわけですから、顧客の耳に入れたくない情報もあります。

だからといって、それを隠す必要はないと思いますし、必ず上手い伝え方があるものです。

 

また、全てを正直に言えば良いということでもないと思います。

例えば、お客さんが着ている服があまり似合っていないと思っても、それを伝える人はいませんよね。

 

つまり、主観的な意見は排除して良いですし、むしろ排除しなければなりません。

質問者様のケースで言えば、このお客様は直接売主様にいけば購入費用がおさえられるのにと思ってしまっている部分が主観になります。

 

実際、そうなのでしょうが、購入費用よりも信頼をとる顧客もいますから、自分から決めつける必要はないと思います。

 

確かに、営業マンの説明の仕方や、見せ方の工夫等は、一歩間違えると『嘘』と言われる可能性があります。

私は、『顧客への見せ方を考える』という捉え方をすることも大切だと思います。

 

顧客にとって気分よく購入できるなら、多少は見せ方を変えても良い部分があるとも思います。

具体的を挙げないと誤解を生むかもしれませんが、『嘘をつかずに見せ方を変える』という技術は、考え抜くことで見つかると思います。

 

ご質問への回答

今回のメールのご質問(お悩み)については、同じような悩みを持たれている仲介営業マンもいると思います。

ここでは、私なりの答えについて、簡単にご紹介しておきたいと思います。

 

営業マンの葛藤について

営業活動の中では、担当者の優しさや、誠実さがマイナスに働く事があります。

顧客にとっては有難い(プラスの)行動なのですが、営業マン本人にはマイナス影響となる行動や言動があるということです。

 

長所というのは、短所と表裏一体なので、このような事は結構起こります。

いわゆる『ただのいい人』になってしまう営業マンは、このようなマイナス影響が出すぎてしまった人なのです。

 

質問者様の例で言えば、「売主から買えば購入費用が抑えられるのに」と考えてしまう優しさです。

とても良い事なのですが、営業上では少し障害になる感情でもありますよね。

 

私も、特定の顧客に対して「仲介手数料を安くしてあげたい」と思うことがありました。

でも、それをしたら自分の仕事の価値を自ら減らすことになりますし、会社に対しても背信的行為になります。

 

考えてみれば、仲介手数料は必ず値引きしてあげることが出来る状態にあります。

では、その事を言わないことが嘘かと言えば、そんなことはありませんよね?

 

自分から「値引きできます!」とか「値引きします!」というヨワヨワな営業では、会社からも怒られてしまいます。

それに、きちんと仕事をしようと思っているからこそ言わないという側面もあると思います。

 

仲介手数料の考え方

マトモな営業マンがよく陥るのは、『自分の仕事に仲介手数料分の価値があるのだろうか』と考えてしまう事です。

不動産の仕事が専門的とはいえ、内容的にそんな価値はないとか、普通に考えて高すぎる等と考えていませんか?

顧客に嘘をつけない性格の人は、このような部分を深刻に考えすぎてしまうことも多いです。

 

大前提として、この仕事はボランティアではなくビジネスとして正しいサービスをする意識を持たなければいけないという現実があります。

そして、仲介手数料には相場や法規定があるのですから、不当な請求とか、詐欺の類ではない!という自信を持ってください。

 

仲介手数料が高額なのは貴方のせいではなく、宅建業法と相場が決めた事です

 

ですので、「業界の慣習として貰わなければいけないもの」と考えるしかないわけです。

どこの不動産屋に行っても同じなのですから、『どうせ払うなら自分が担当で良かったですね!』と思える仕事をすれば良いと思います。

 

そこに善悪とか、損得の感情を持つべきではなくて、【他の営業との比較】の方が大事です。

周囲の営業マンよりも良い仕事をしているならば、充分に貴方に仲介手数料を払う価値があるということです。

 

どんな職業でもそうですが、仕事の対価は必ずしも等価で受け取るものではないです。

割の良い仕事もあれば、そうでない事もあるものですよね。

 

本来、野球選手とかサッカー選手のプレーに、何億円もの価値があるでしょうか。

冷静に考えれば、スポーツをしているだけなのですが、彼等のサラリーは非常に高いですよね。

芸能人とか、様々な専門家も同じです。

 

不動産の仕事については、資格取得の勉強量や、実務的な知識等によってトラブルを見守れる能力に価値があるということです。

 

万が一、何か起きた時のためのサポート保険的な価値もありますから、今すぐその価値を出さなければいけないという意味のものでもないわけです。

このように、プロになる程、自分の仕事の価値を考える時期があります。

 

そして、その結果、お客様に仲介手数料について真の価値を納得していただくために「何をすべきか」・「何を伝えるべきか」を追求することになっていき、それぞれの答えを手にするわけです。

 

伝えるタイミング

質問者様の記述によれば、顧客を物件案内した後、物件の諸費用等を説明する際に仲介手数料の話をしている様子があります。

私の場合ですが、売主直売可能の物件を案内する場合には、一番最初(案内出発前など)にある程度の説明をします。

 

最初に告げる」という事が誠実だと思いますし、顧客が気に入ってからだと言い出しにくくなりそうですよね(笑)

 

もし、この物件を売主から直接購入されたい場合は、遠慮なく必ず私に声をかけると約束してもらえませんか?」と念を押す営業マンもいました。

最悪の場合、分かれでも良いという覚悟なのでしょう。

これも、1つの対策ではあると思います。

 

営業スタイルの問題でもありますし、ここは安易に文章で書くと誤解を招く可能性がありますので、無料記事上で明記することは避けたいと思います。(質問者様には、直接お返事をします)

尚、有料記事の方には、この辺りの事を詳しく記述してあります。

 

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思考について

質問者様の文中には、「あなたから家を購入したい」と言ってもらえる営業マンを目指しているものの、なかなかそうもいかない現状があるというお悩みもありました。

前向きに考えるための思考法についても質問されています。

 

これについては、営業マンの選別眼とか、自分が行うサービス内容の量等によって考え方を変える必要があると思います。

要するに、ご質問者の仰る通り、顧客のタイプによって思考を変えざるを得ない部分があるという事です。

 

こちらがいくら一生懸命に営業活動をしても、「営業マンのために仲介手数料を払えない」と考える顧客もいますよね。

明らかに、他決(売り直)になる可能性が高い顧客です。

 

おそらく、質問者様の場合、そのような考え方を責める人でもないと思います。

むしろ、「そりゃそうだよな」と納得してしまう部分が多いですよね。

私もそうでした。

 

そこで、私がとった行動は、「顧客を選別する」というものでした。

自分に合う人、自分の気持ちが伝わる人を選ぶわけです。

売り主から直接購入しそうな人は、はじめから相手にしないというスタイルです。

 

とはいっても、反響数が少ない時にはそうも言っていられませんよね。

そんな時は、ロング客を掘り起こしたり、「覚悟を決める」という思考をしました。

 

ここで言う覚悟とは、「たぶん分かってもらえないタイプだけど、損する覚悟でやろう」と決めてしまうのです。

最後の手段なので、なるべく普段から顧客が途切れないようにする努力をし、それでもダメだったときやる事ですが・・。

 

これは、恋愛に例えると分かり易いと思います。

尽くした相手にフラれたらショックが大きいですよね。

 

ですから、はじめからフラれる覚悟でやるという事です。

自分で「フラれてもいい」と決めることで、ダメ元的な感情が生まれ、少し気持ちが楽になります。

 

でも、本当はフラれたくありません。

だから、できるだけ自分を好きになってくれそうな相手に告白するのです。

 

この為、私は自分に合っていると感じた顧客は、時間がかかりそうな相手でも一生懸命やっていました。

売主の仲介手数料無料の問題は、顧客選別の時点である程度の方向性が決まると思います。

 

顧客への回答について

直接売主から買えば、仲介手数料はかからないんですよね?」と聞かれた場合、どう答えるのかという質問がありました。

 

これも正解というものは無いのでしょうが、私なりにいくつか選択肢は持っていました。

 

この質問をされた時には、私も「その通りです」と答えます。

それと同時に、「でも、それがどうしてかご存知知ですか?」という質問を投げかけ、必要な事を説明することもありました。

 

問い合わせの段階等でこのような質問が出る顧客の場合、私はあまり積極的に追わないかもしれません。

 

また、「当社がご案内した物件については、仲介の対象になりますので、もし直接のご購入をされたいというお気持ちがあるようでしたら、案内コースから外させていただきます」等と伝えることもありました。

 

少し勇気がいるセリフかもしれませんが、本心が分かりますし、既存物件で思う存分勝負できるようになるので全く問題ありませんでした。

 

話をまとめると、私は、顧客の「売主から購入したい」という気持ちを尊重します。

その代わり、こちらも損をさせられないようにキッチリ線引きをするというイメージです。

 

自分が市場の中で最も良いと思う物件が「売直の物件」だったなら、その通りに伝えると思います。

それでも私で購入してくださるのであれば、最大限のサポートをお約束しますというスタイルです。

 

建売物件の場合、売直物件と同等かそれ以上の物件が存在していることも多いですから、営業マンが自信を持って勧められれば負けないのではないでしょうか。

変に思い悩まず、堂々と貴方が勧めたい物件で勝負していくことが重要だと思います。

 

仲介手数料をいただく理由

質問者様の文章の中に、「その程度では高額な仲介手数料をいただく理由にならない」という一文がありました。

これについて少し補足させていただければと思います。

 

おそらくですが、2年前後のキャリアとのことですから、仲介手数料の意味や、重要性について理解が浅い部分があるのではないかと推察しております。

 

実は、仲介業者の責任を巡った裁判事例は本当にたくさんあります。

免許更新の時にもらえる冊子の中には、このような事例が記載されていますので、是非読んでおかれると良いです。

 

契約から10年以上が経過してから仲介業者が訴えられたケースもありますし、判例を見る度に仲介業務の責任の重さを痛感します。

 

この仕事は、何かあったときには多額の賠償金を支払うこともあり得ます。

このような事業リスクと責任を負う為、仲介手数料は高いわけです。

 

逆に、いくら貰えば社長として責任を負えるかを考えてみると良いかもしれません。

物件が高額である程、その賠償額も大きくなりますので、仲介手数料は物件価格に比例して高額になるのです。

 

多くの営業マンは、自分の仕事量だけで仲介手数料の価値を計ろうとします。

でも、それは大きな間違いだと思いますし、過去の判例等について勉強不足でもあると思います。

 

まとめ

このお話の本質は、仲介手数料の真の意味(価値)を知ることに通じています。

営業マンが、本当の仲介業務の価値を理解し、自分のリスクマネージメント力に自信をつけていくことができれば、おのずと答えが見えてくるのではないでしょうか。

営業マンの経験や意識によって、契約書や重説の作成にも個人差が出ます。

判例等を多く学び、できるだけ顧客のリスクを排除する視点を持って書類を作成できる場合、そこには大きな価値があると思います。

皆さんに、「他の営業マンと一緒にしないでほしい」と思えるくらいの知識があれば、仲介手数料は安く思えてくるのではないでしょうか。

また、その自信と実力が、他決や仲介手数料の値引きを防止することにも繋がっていきます。

顧客に自分の価値を伝える方法についても、研究が必要という事です。

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