郊外で営業している不動産仲介会社の大半は、建売住宅や中古物件の販売を生業としていますよね。
コロナウイルスの影響で一時的に業績が悪化するケースが散見される中、自宅で過ごす時間が増えたことを機に、家探しを始める需要が芽生えている様子も出てきました。
特に、都内での家探しが活発で、某企業では問い合わせ件数が倍増しているそうです。
明るい兆しが出てきている一方で、これからの感染拡大や、経済の落ち込みによる影響は計り知れない部分があるのも確かです。
このような状況下で、「今後の不動産業界はどうなってしまうのか」と不安を感じている人もいるでしょう。
事実、不動産業界には、新たな火種が出現していると思います。
この記事では、業界人だからこそ見える不動産会社の新たな倒産リスクについてご紹介したいと思います。
飯田グループの経営方針で不動産仲介会社に危機!?
飯田グループホールディングス(IGHD)は、飯田産業を中心とするグループです。
建売住宅のシェアとしては紛れもなく日本一の企業で、不動産仲介業者では知らない人はいない規模の会社です。
実は、飯田産業(IGHD)傘下には、仲介業を行う会社もあります。
また、グループ内の各企業の中には、建売の自社販売を行なう会社もあります。
そして、IGHDでは、将来的には全体の30%を自社販売にするという目標を掲げています。
元々は、全体の3%程度を自社売りしていましたが、この比重を高める事で案件数の減少に対応しようというわけです。
仲介手数料での収入が消える!?
もしも、IGHDが自社売りの目標を達成したら、街の不動産業者にはどれほどの影響があると思いますか?
これは、IGHDの売上を見れば一目瞭然です。
実は、IGHDが自社売りの目標を達成すると、約126億円分の仲介手数料が無くなる計算になります。(2020年3月期 売上約1兆4000億から計算)
年間で、不動産仲介会社の売上が約126億円も減少するわけですから、相当数の倒産が発生しても全く不思議ではないでしょう。
上場企業には優秀な人材も多いですし、効果的な戦略を立て必ず目標を実現していきます。
つまり、その日は必ず来るという事なのです。
不動産業界にとっては、あまり良い話ではありませんね。
生き残る企業はデジタル化する
2020年1月以降、リモートでの働き方等が模索され、「働き方が変わる」等と漠然とした評論をする人が増えました。
もはや、こんな事は当たり前になってきており、あえて言う程の事では無くなっていますよね。
もう一歩踏み込んで、「具体的にどう変わるのか」に言及しなければ、記事としての価値もない気がします。
私は、個人的に「デジタル化する」という意味を履き違えている人が多いと感じます。
これを、単純に「IT化」とか、「リモート化」といった事だと思っているのは、少し浅い理解だと思うのです。
「働き方が変わる」という言葉の本当の意味は、『時間で給料を払う時代から、結果に対して報酬を支払う様態に変わる』という事だと思うのです。
リモートやシステムの導入については、そのためのツールでしかありません。
ある意味でアメリカ的な実力主義社会となり、仕事の成果に対して人材価値を見出す時代になると思います。
メタバースと電子契約による危機
近い将来、おそらくメタバース事業が充実し、電子契約が常識化した状態になります。
要するに、不動産契約を自宅で行うという選択をする人達が増えてくるわけです。
これもデジタル化の1つとして捉えておかなければならない変化だと思います。
最終的には、メタバース世界の中で営業活動を行うようになるのかもしれません。
メタバース世界で土地が売られ、投資先として成立し始めれば、現実世界の不動産価値にも大きな影響が出ます。
アナログ的な仕事だけをしている不動産業者は、どんどん時代の波に飲み込まれていくことになりそうです。
家電業界が不動産会社を買収する動き
ヤマダ電機がヒノキヤグループをTOB(株式公開買い付け)によって買収することが明らかになりました。
ヒノキヤは、土地活用やリフォーム等、幅広い不動産分野で業績を伸ばしてきた有名企業です。
「頑張れば買収できる」という規模の優良企業については、今後も家電業界が目を付けるのではないかと思います。
住宅と家電は、とても密接な消費関係があります。
既存の販売物件に備える家電等を、全てヤマダ電機の製品に指定するだけで大幅な利益増につながるでしょう。
ヤマダ電機やヨドバシカメラのような家電販売企業が不動産建築会社の筆頭株主になるということは、その会社の『建物コンセプトが変わる』という事に繋がります。
これは、業界的にもとても大きな変化になる予感がしています。
住宅の流行が変わる!
住宅販売においては、一種の流行のようなものがあります。
例えば、大震災の後は、「耐震」について各社が競い合う流れがありましたし、オール電化やソーラーパネル等が流行した時期もありました。
今ではすっかり当たり前になった「対面キッチン」についても、流行が常識化した例だと思います。
家電業界の会社が筆頭株主としての影響力を発揮し始めると、建物のコストを設備に向けていく傾向が強まりそうですよね。
すると、戸建商品の標準設備の常識が変わる事になります。
今までは標準装備されなかった家電が備えられるでしょうし、「家電を購入した分だけ仲介手数料を値引く」といったサービスを始めることもできます。
要するに、「建物の仕様や構造」をアピールする時代から、「家電設備ありき」の潮流が生まれる可能性が高まるわけです。
10万円給付の効果もあり、家電業界は業績好調のようです。
コロナウイルスで勝ち組となった家電企業は、今が不動産会社を買収するチャンスと見ています。
これも、新しい変化の兆しだと思います。
まとめ
不動産業界に限らず、ここ数年が生き残りの分かれ目になる企業は多いでしょう。
大手の経営方針が変われば、下請けの経営状況も変わります。
不動産業界には、今、新たな火種がくすぶり始めています。
様変わりする業界の未来を、今から考えておかなくてはなりませんね。