リスク回避 不動産売買

不動産仲介業者のトラブル事例と訴訟結果

不動産の仕事は奥が深く、何年も後になってから大きなトラブルに発展する事があります。

一般の人達(これから家を買う人)からすれば、どんなトラブルが起こる可能性があるのか想像がつかないものだと思います。

これから不動産営業マンになる人や、宅建受験生についても、実際のトラブル事例を通じて学んでおくことは有意義な事ですよね。

現役で働いている不動産営業マンでさえも、訴訟事件に詳しい人はそれほどいません。

これは、注意すべきポイントを知らない営業マンが多いという事を意味しています。

あなたの身にも起こり得る事ですので、頭の隅に置いておくと良い情報だと思いますよ。

 

相続税(節税)対策の不動産購入での事例

顧客Aから節税のための不動産購入を依頼された媒介(仲介)業者が、顧客にある物件を勧めました。

顧客Aは、価格が高いことを理由に、他の物件を探して欲しいと依頼しましたが、結局は「他に適当な物件はない」という仲介業者の勧めに従う事にしました。

 

しかし、この物件は、この仲介業者が1カ月前に安値で買い取っていて、顧客Aに売った代金との差額(約1500万円)を自社の利益にしていました。

この事を知った顧客Aは、仲介業者の不法行為ないしは債務不履行を理由として訴訟を起こしました。

 

この訴訟の判決

判決では、仲介業者の債務不履行責任を認め、転売した際に発生した差額を賠償するように命じました。(東京地裁・判決平成6.9.21)

顧客Aは、節税のために購入するという目的を告げているわけですし、一度「価格が高い」という意思表示もしています。

信義誠実の原則から生ずる一定の義務が果たされていないのは明らかですよね。

 

この契約は、実質的には媒介ではなく、売主として物件を紹介しているのと同じ事ですよね。

宅建業者として受け取ることが出来る媒介報酬の制限を潜脱する目的での売買形態である点も、宅建業法上で問題があります。

 

テナント契約での訴訟事例

ラーメン屋の開業を予定している顧客Bが、媒介業者から紹介されたテナントを契約しました。

重要事項説明書は、元付け業者が作成した為、客付け側の媒介業者は、よく物件の調査をしないまま、この内容を信じていました。

 

しかし、この物件は、根抵当権者Cの申し立てによって競売開始予定による差押登記がなされていたのです。

 

開業して2年以上経ち、借主(顧客B)は、裁判所からの引渡し命令によってこの事実を知りました。

退去を余儀なくされたBは、差押登記の事実をしっていれば、損害は回避できたと考え、訴訟を起こしました。

 

この訴訟の判決

裁判所は、この媒介業者に調査義務違反があったとし、損害賠償請求を認めました。

(東京地裁・判決平成4.4.16)

媒介業者の善管注意義務の範囲内で対処すべき事項が多く、媒介業者に不注意や過失があったということですね。

この案件も、契約から2年を超えて発覚しており、契約が終わったからと言って安心できない業種だと痛感する事例です。

適当な契約をしていると、ある日突然にこのような事態に発展しますので、充分に注意しましょう。

 

調査や説明不足で損害賠償請求された事例

先程の事例もそうでしたが、仲介業者による調査不足や、説明不足が原因となっている契約トラブルは多いです。

身近な契約で起こり得る事例について、簡単にまとめておきますので、頭に入れておきましょう。

 

浸水履歴

媒介業者が市役所で調べた浸水履歴について、顧客に対して曖昧な伝え方をするとか、重要事項説明書・契約書への記載が不十分な状態で契約をし、争いに発展した訴訟例があります。(東京地裁・判決平成29.2.7等)

 

今後、浸水履歴の調査については、市役所に聞くだけでは足りないと判断されるケースも出てくる可能性があります。

顧客が浸水について懸念しているならば、媒介業者は、その懸念についてできる限りの調査方法を検討しなければ、義務を果たしたとは言えません。

 

近年は、大雨や洪水被害が増えていますので、契約時の説明には注意が必要です。

周辺の土砂災害等についても、同様に調査・告知が必要だと考えましょう。

 

土壌汚染と地盤調査

化学物質等による土壌汚染や臭気被害等があった土地が、建売用地として再販売されることがあります。

この際、売主業者は、汚染除去のための適切な処置をした上で販売をすることになります。

 

このような物件については、媒介をする業者は、売主への慎重な聞き取り調査を行い、きちんと経緯等を契約書類に記載することが大切です。

裁判によって、土壌汚染によって土地の価値が下がる分について、損害賠償請求を認めた事例もあります。

 

地盤調査についての方法や、経緯等も、トラブルが発生しやすい事項ですので、注意しましょう。

地盤が軟弱なことによって被る改良費用と、土地価格の減額分等が損害賠償の対象となる可能性があります。

 

建物の用途変更の調査

建物の用途変更については、法改正等によって複雑になっている部分があります。

例えば、介護やデイサービス施設に使用する目的で借りた物件について、契約後に用途変更が認められない事が判明するといったトラブルが発生しています。(東京地裁・判決平成28.3.10)

 

検査済証がないと建物の用途変更ができないケース等がありますので、役所調査については事前にしっかりと行う必要があります。

説明義務違反とみなされないよう、誠実な調査と報告を行うことが肝心です。

 

埋設管の調査

媒介業者には、埋設管についてあまり詳しい人はいません。

この為、市役所で埋設管調査を行い、その際に交付される図面等を添付するだけで済ませている営業マンも少なくないでしょう。

 

管の口径だけ説明すれば足りるという感覚を持っている人は、この機会に意識を改めましょう。

埋設管で最も重要なのは、「どこを通っているか」(使用権利に関わる部分)です。

 

実際の訴訟事例では、水道の施設整備負担金の有無や、埋設管の詳細について説明が不十分なことを理由に、媒介業者への損害賠償請求が認められています。

売主側の調査を信じ、買主側で調査を行わないのは、違反行為だと認識しましょう。

 

接道義務の取り扱い

最後に、仲介業者を介して中古物件を購入した人の訴訟事例をご紹介しておきます。

不適切接道に関するトラブル事例です。

 

建築基準法には、接道義務という規定があります。

建物建築の際に、敷地が道路に2m以上接していなければいけないというルールです。

 

この物件は、「43条但し書き道路」という、ちょっと特殊な接道状況でした。

原則として再建築ができない土地として扱われる為、価格は少し安くなります。

 

この土地の前所有者(売主)は、昭和50年に建築確認を取得していました。

購入者は、自分は将来に土地を売るので再建築の予定はありませんでしたし、「将来、売れない土地ではないです」という説明を受けていたので、気にせず購入しました。

 

確かに、販売自体はできるのですが、一般的な土地価格よりも価値が低くなることを説明しなければ、説明義務を果たしたことにはなりません。

 

それから15年の月日が経ち、15年間暮らした家を売却しようと決断します。

不動産業者に買い取りの相談をしたところ、「この物件は、接道義務を満たさないから建築確認が取得できない為、買取不可」と言われます。

 

買取業者としては、これを理由に買取りを断るしかなかったというわけです。

所有者は、慌てて15年前の契約書を確認しましたが、契約書と重要事項説明書のどちらにも「将来に建築確認が取得できない」とは書いてありませんでした。

 

それに、担当者からは、口頭ではあるものの「将来に売却はできます」と言われていました。

これで、訴訟を決意することにし、裁判となったわけです。

 

そして、この中古物件について、適正価格との差額返還を要求したのです。

また、借入額に発生する利息についても相当額を返還するよう求めました。

 

これに対し、不動産業者は、「この物件は、絶対に将来の建替えが不可能だとは言い切れず、過去に建築確認を取得したことがある物件なのだから、説明義務は無いのではないか」と主張してきました。

また、15年間、実際に使用してきた利益があり、納得できないと主張したのです。

 

この訴訟の判決

判決では、不動産業者の説明義務違反が認められ、契約者の損害賠償請求を一部認める内容となりました。(千葉地裁・判決 平成23年2.17)

 

具体的には、「説明義務違反によって不利益を被ったのだから、裁判所が認定した適正価格との差額を支払いなさい」と命じています。

これに加え、住宅ローンの利息部分についても相当額の支払いが命じられました。

 

建物付の売買では、「過去に建築確認が取れているから適法だ」という判断はできず、安易な解釈や判断は危険だということが学べる事例ですね。

不動産は、調査をしてみないと分からない部分がたくさんありますから、契約時にはしっかりと確認と説明を行う必要があります。

 

まとめ

仲介手数料をもらう不動産会社は、今回ご紹介したようなリスクを背負って仕事をしていることを意識しなければなりません。

働いている営業マン達も、「会社が責任をとればいい」という感覚ではなく、宅建士としての責任感を持って仕事をする必要があります。

建売の場合、売主側でも契約書等のチェックを行いますが、担当者がミスをしないとも限りません。

仲介業者としての説明責任は、自分で調査した事実であることに意味があります。

他社の調査にまかせてしまうと、今回の記事のような訴訟事件に巻き込まれ、同罪とされる可能性があるわけです。

調査と説明はしっかりと行っていきましょう!

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