広島で起きた記録的な大雨による土砂災害を受けて、土砂災害防止法が改正されたのをご存知でしょうか。
要配慮者利用施設の避難体制の強化を図る為、平成29年6月19日に法改正されています。
近年の水害の増加(熊本豪雨等)に伴い、宅建の試験でも関連した部分から出題があるかもしれません。
そこで、宅建業法等と関連する部分や、土砂災害についての知識等について試験対策的にまとめておきます。
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土砂災害防止法とは?
2019年7月、熊本県を中心に九州地方で記録的な豪雨が数日続きました。
台風シーズンに向かうこともあり、引き続き土砂災害等が広がることが懸念されます。
このような土砂災害に備えるためにあるのが、土砂災害防止法です。
土砂災害防止法の正式名称は、「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」と言います。
土砂災害から国民の生命を守るため、土砂災害のおそれのある区域について危険の周知や警戒避難態勢の整備等を行い、人的被害等を未然に防ぐためのものです。
土砂災害の種類と区域
土砂災害防止法では、土砂災害について以下のように分類しています。
- 急傾斜地の崩壊
※傾斜度が30度以上である土地が崩壊する自然現象
- 土石流
※山腹が崩壊して生じた土石等又は渓流の土石等が一体となって流下する自然現象
- 地滑り
※土地の一部が地下水等に起因して滑る自然現象又はこれに伴って移動する自然現象
土砂災害警戒区域
急傾斜地の崩壊等が発生した場合に、住民等の生命又は身体に危害が生じるおそれがあると認められる区域で、危険の周知、警戒避難体制の整備が行われます。
要するに、やや危険な場所で、イエローゾーンとも呼ばれます。
土砂災害特別警戒区域
急傾斜地の崩壊等が発生した場合に、建築物に損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる区域で、特定の開発行為に対する許可制、建築物の構造規制等が行われます。
かなり土砂災害の可能性が高い場所で、レッドゾーンとも呼ばれます。
宅建業法との関連性
土砂災害警戒区域等については、宅建業法第35条第1項に基づく重要事項説明の対象とされています。
契約者が取得又は借りようとしている宅地や建物が土砂災害警戒区域内(イエローゾーン)にある場合には、その事を説明しなければなりません。
また、取引対象物件が土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)にある場合には、その制限の概要を説明する必要があります。
土砂災害防止法の改正で、都道府県知事は、土砂災害に関する基礎調査の結果を広報やインターネットで公表しなければならない事になりました。
この為、都道府県が実施した基礎調査の結果についても、取引の判断に重要な影響を及ぼす事項だと考えられています。
土砂災害警戒区域等に指定される可能性がある地域であることについては、説明義務として明記されていませんが、ここまで説明することが望ましいとされています。
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災害警戒レベルって何?
土砂災害防止法とは別の話ですが、関連する情報してもう一つご紹介しておきたいと思います。
「避難勧告等に関するガイドライン」(内閣府が平成31年3月に改定)についてです。
この中で、住民は、「自らの命は自らが守る」意識を持ち、自らの判断で避難行動をとるとの方針が示されました。
また、自治体や気象庁等から発表される防災情報を用いて住民がとるべき行動を直感的に理解しやすくなるよう、警戒レベルという基準を取り入れることになりました。
具体的には、5段階の警戒レベルを明記し、防災情報が提供されます。
警戒レベル3以上では、自己判断で避難を開始する意識が必要になります。
警戒レベル5
警戒レベル5は、既に災害が発生している状態を示します。
何らかの災害がすでに発生している可能性が極めて高い状況で、命を守るための最善の行動をとる必要があります。
警戒レベル5の状態では、「大雨特別警報」や「氾濫発生情報」が提供されます。
警戒レベル4
警戒レベル4は、自治体等が避難勧告の発令を検討する状況にあります。
すぐに避難が必要になる可能性があるレベルですので、自治体からの避難勧告の発令に留意する必要があります。
また、避難勧告が発令されていなくても、危険度分布や河川の水位情報等を用いて自ら避難の判断をすべき警戒レベルです。
警戒レベル4では、「土砂災害警戒情報」・「高潮特別警報」・「高潮警報」・「氾濫危険情報」・「危険度分布(薄紫表示)」等の情報を参考にしてください。
警戒レベル3
地元の自治体が避難準備・高齢者等避難開始の発令を検討する状況です。
避難に時間のかかる高齢者等の行動が必要とされる状況が近いと考えましょう。
自治体からの避難準備・高齢者等避難開始の発令に留意するとともに、危険度分布や河川の水位情報等を用いて高齢者等の方は自ら避難の判断をする必要があります。
警戒レベル3では、「大雨警報」・「洪水警報」・「高潮注意報」・「氾濫警戒情報」・「危険度分布(赤表示)」を参考にします。
警戒レベル2
警戒レベル2では、『警戒レベル2相当』と『警戒レベル2』の2段階に分類されています。
警戒レベル2相当では、「氾濫注意情報」・「危険度分布(黄色表示)」が提供されます。
避難行動の確認が必要とされる警戒レベルとされており、ハザードマップ等により、災害が想定されている区域や避難先、避難経路を確認しておく「準備段階」だと考えましょう。
警戒レベル2では、「大雨注意報」・「洪水注意報」・「高潮注意報」が提供されます。
まだ注意喚起の段階ではありますが、避難場所や緊急時の行動について確認しておくべき状況です。
警戒レベル1
警戒レベル1は、災害への心構えを高める必要があることを示します。
最新の防災気象情報等に留意することを促し、住民が災害への心構えを高めるための警戒レベルです。
この状況下では、「早期注意情報」として今後の動向や予想等について情報が提供されます。
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近年の異常気象や、活発な火山活動等によって、ハザードマップの役割は大きくなってきたと感じます。 予測することが困難な災害が増加していますが、ハザードマップと防災マップを活用できれば、被害を事前に予測し ...
まとめ
近年は、世界的にも水害が増加していますよね。
土砂災害への意識も高まっていますから、宅建での出題も充分に考えられます。
重要事項説明における土砂災害情報の扱いには注意しておきましょう。
また、「土地に関する知識」として出題される可能性もありますので、この記事でご紹介したような概要くらいは頭に入れておくと良いでしょう。