不動産投資の融資を巡っては、スルガ銀行の不正融資を発端に、各行が審査の厳格化を進める動きが出ています。
これに加え、新に発覚したフラット35の悪用事例では、不動産会社が主体となって顧客を集めている実態がありました。
不動産に関わる仕事をする上では、当然に知っておかなければいけない話題ですので、この記事にまとめておきたいと思います。
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不動産業界の闇
今回の事件で悪質なのは、不動産業者がセミナーまで開催して顧客を勧誘していた点です。
つまり、「この案件だけ誤魔化してしまおう」という出来心的な不正ではなく、最初から複数案件において不正を働こうとしていたわけです。
セミナーの開催やWEB上の勧誘等は、営業マンが個人的に行う業務ではありませんよね。
普通は、会社からの指示や承認を経て行うものです。
しかし、この不動産業は、特定の社員による犯行とし、当該社員を懲戒解雇して住宅金融支援機構へ届け出ました。
なんだか、きな臭い話ですよね。
不正の手口
今回の不正手口は、実際に居住すると偽ってフラット35を利用させ、実際には投資用不動産(マンション)の購入資金に充てるものです。
一度は実際に住民票を移し、再び住民票を移した後は郵便物を転送するようにして発覚を防いでいました。
不動産業者がこのような悪知恵を与えていた為、金融機関側から不正を見抜き難い状況だったわけです。
借入者は、購入不動産を貸して得た賃料から毎月の返済額を支払っていました。
業界で「なんちゃって」等と呼ばれる手法です。
取引金額を水増しし、少し多めの融資を引き出すケースも横行していたようです。
物件価格を上回る部分については、購入者の借金返済や紹介料等に充てられていたようです。
顧客を勧誘する際には、「借金を低金利なローンに借り換えられ、おまけに不動産投資もできる」等と吹き込み、審査の目を潜り抜ける悪知恵を与えるのです。
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利用客の属性
利用者の多くは、年収250~300万円の若者です。
一番悪いのは、勧誘する不動産業者(又は営業マン)なのは明らかですが、利用客の方も不正な行為であることを承知しています。
このような不正な利用者が増えていくと、営業マンは「みんなやってますよ」等というセールストークをするようになります。
顧客は、「みんなやっているなら大丈夫」という錯覚に陥り、ちょっと信号無視をするような感覚で話に乗ってしまうのかもしれません。
こうして、2年間で150戸前後が契約されており、トータルで数十億円規模の融資が実行されていました。
本来なら、不動産投資などをすることが不可能な人達に話を持ちかけているところも悪質ですね。
今後の動向
このような不正利用の実態は、他の不動産業者からも出てくる可能性があります。
不動産コンサル会社等が元締めとなって顧客を集め、仲介業者と協力して行うケース等も存在しているかもしれません。
当たり前のことですが、こうした事件の発覚により、不正融資に対しての厳格な対応と審査が求められてくるはずです。
ローンを提供している住宅金融支援機構は、契約違反について調査し、不正を確認すれば全額返済を求める方針です。
既に、住宅金融支援機構は、借入者本人に対し、嘘の申告があれば全額返済することへの同意を求めることを決めました。
このような審査と手続きの厳格化によって、不正行為を抑制していく流れが強まることは間違いないでしょう。
まとめ
利用者側は、虚偽申告を指示されても決して従ってはいけません。
貯蓄や収入の乏しい利用者の中には、自己破産に陥る人も出てくるはずですから、上手い話には十分に注意してください。
宅建有資格者は、意思表示(虚偽表示)や住宅金融支援機構について復習し、顧客に対して正しい知識で対応することが求められますね。