今回は、PayPay(ペイペイ)のキャンペーンについてです。
100億円キャンペーンで話題になったPay決済ですが、どうやってキャンペーン資金を調達しているのかと不思議に思った事はありませんか?
100億円とはいかなくても、キャンペーンを行うには多額の資金が必要になります。
たった1円を付与するだけでも、相手が1億人いれば1億円かかるのです。
この記事では、キャンペーンのカラクリについて少し掘り下げてみたいと思います。
キャンペーンの歴史
2018年12月、PayPayの「100億円あげちゃうキャンペーン」が起爆剤となり、一気に電子決済への関心が高まりました。
それにしてもすごい金額のキャンペーンですよね。
このキャンペーンは、2019年3月末までの予定だったのですが、還元総額の上限に達したことを理由に、開始から僅か10日間で終了する結末となりました。
駆け込み需要で決済が集中し、約1時間半サービス停止になる時間帯も発生したそうです。
ペイペイアプリのダウンロードも、かなり急速に進んだものと思われます。
その後、通常の還元率0.5%に戻されて運用されましたが、嵐のように過ぎ去ったキャンペーンだった・・というのが個人的な印象です。
100億円の謎
そもそも、100億円をどうやって回収しようとしているのか、不思議に思いませんか?
どんなに儲かっている企業でも、100億円という投資は大きなものです。
コマーシャル効果を期待していたとしても、CMに100億円も払う企業は稀でしょう。
テレビで宣伝するよりも遥かに高額の出費になるわけですから、下手をするとキャンペーンの発動で株価が暴落しかねない話です。
ソフトバンクとすれば、100億円をかけてスマホ乗り換えを促すキャンペーンでもやった方が、よほど効果的な投資になりそうな気がしませんか?
例えば、乗り換え時にかかった費用分だけペイペイで還元されるようにする等、ペイペイと本業を組み合わせることもできたはずです。
ペイペイ自体を普及させるよりも、他社からの乗り換えを爆発的に伸ばした方が先々の利益は大きい気もしますよね。
ですので、あえてそれをしなかった理由があるということになります。
今回、ペイペイの利用者は爆発的に増加しましたから、キャンペーン自体は大成功と言って良いでしょう。
しかし、100億円の出所について、「どうやって捻出したの?」という疑問が残るのです。
資金確保のカラクリ
このキャンペーンは、購入金額の20%が還元されるというのが基本ですよね。
そして、運が良ければ購入額の10万円まで還元される場合がある、という内容でした。
還元率20%分が100億円に到達するには、500億円以上の消費が必要です。
今回のキャンペーンにより、個人消費者は10日間で500億円以上の消費をペイペイで行ったわけです。
単純なカラクリとして見えてくるのは、企業側がペイペイ運営会社に対して支払うフィーバック収入を利用する仕組みです。
クレジットカードの利用時と同様に、ペイペイで買った金額の数パーセントが手数料として(企業側からソフトバンクとヤフーに)支払われるはずですよね。
これを、自分達で受け取らずに、顧客自身に返す形をとれば、その分は費用が一切かかりません。
仮に、この手数料が10%だとすれば、ソフトバンクとヤフーが負担する還元費用は実質的に10%分だけで良いことになります。(計20%の還元となる)
500億円の消費に対して10%の手数料とすれば、一気に50億円以上の削減ができたことになりますね。
商品を販売する企業側が、自動的に50億円を還元することになるからです。
ソフトバンクとヤフーとすれば、50億円の元手で、100億円あげると宣伝できるのです。
しかも2社で行うキャンペーンなので、これを半分ずつ(25億)にできます。
ソフトバンク単体から見れば、25億の投資で100億円の効果があるイベントが可能になるということです。
後述しますが、この仕掛けにはまだ続きがあります。
企業側にもメリット
クレジットカードやその他の電子マネーを導入する場合、端末の設置に初期投資がかかることが多いそうです。
カードを使われると手数料をとられて利益が減る上に、端末に初期投資までしなければならないので、店側からすれば「なるべく導入したくない」という事になります。
ここに目を付けたのが、ペイペイの仕組みですよね。
QRコードで決済が可能なペイペイの場合、店側の導入費用が殆どかからないのです。
使う側も、使われる側も便利になる仕組みですね。
ペイペイが爆発的に普及してくれれば、店側の導入も自然に広がります。
こうして、クレジットカードよりも身近なキャッスレスツールとなれば、全国の販売店から手数料が自動的に入ってくることになります。
そして、忘れてはいけないカラクリがもう一つあります。
還元した100億円分のキャッシュは、再び個人消費者によって来年度以降にペイペイで使用されるという事実です。
この時、ヤフーとソフトバンクが店側から受け取る手数料が発生するならば、今度は両社が還元を受ける番です。
これが、仮に10%だとすれば、来年度には10億円が両社に戻ってくるという事です。
政府の2019年度予算には、消費税増税の還元策(5%還元)に2,798億円を計上したそうです。
このような社会情勢も追い風になることは間違いないでしょう。
投資した先行費用は、確実かつ速やかに回収できるという目算があるわけですね。
来年、早い段階でユーザーの還元分使用額が100億円を超えれば、普及率や定着率を分析できます。
結果次第では、もっと大きなキャンペーンを実施する可能性もあるかもしれませんね。
おそらく、次回はもっと爆発的な広がりをみせることでしょう。
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キャンペーン第二弾
2019年2月、ペイペイの100億円キャンペーンの第二弾が発表されました。
前回と比べて少しルールも変わりました。
1回の買い物で付与される還元額の上限を千円とする対策が講じられ、キャンペーンの延命を狙った変更となったのです。
また、前回は30日間の利用上限が25万円でしたが、これを5万円に引き下げています。
前回よりも、より日常的なシーンで使用されることになり、コンビニ等での使用がメインとなった印象です。
2019年5月8日からは、支払いのたびにもらえる利用特典の「PayPayボーナス」付与率を3%に引き上げることになっています。(従来は0.5%)
「第2弾100億円キャンペーン」で展開している「やたら当たるくじ」の内容も一部リニューアルしました。
2019年6月1日以降は、20回に1回の確率で最大1,000円相当のPayPayボーナスが付与される「PayPayチャンス」として継続実施されていきました。
キャッシュレス決済の課題
消費税の軽減を電子マネーポイント等で受け取らせようとする動きから見て、日本政府もキャッシュレス化を推進したいようです。
近い将来には、年金等がポイントで支給される時代が来るのかもしれません。
キャッシュレス化によって効率化できる部分があるのは理解できますが、セキュリティーの問題や法整備にも心配が大きいところです。
もしも、かつてないような規模のサイバー犯罪等が起こった時、運営会社が保証できるような額ではない規模の損失が発生します。
あまり知られていませんが、ロシア、アメリカ、中国、インド、北朝鮮等に比べ、日本のサイバー防衛対策や技術的進歩はかなり遅れているそうです。
キャッシュレス化のデメリットは、このようなリスクと、日本の災害事情にあると言えそうですね。
まとめ
企業は経済主体ですから、ただお金をバラ撒くだけということは有り得ません。
キャンペーン等のイベントには、先を見越した収益計画があるのです。
実際のカラクリについては、企業秘密ということになりますから、今回のお話は私の推察にすぎません。
キャンペーンについては、消費者にとって損なことはありませんし、企業側も消費を促してもらえる経済効果があったと思います。
結果的に見て、非常に見事な戦略でしたね。