不動産業界では、年明けに「新春キャンペーン」等と題して建売住宅の売り出しを行う業者がいます。
デパート等で例えれば、お正月セールに似た取り組みです。
今回は、この新春売り出しで起こった、とても珍しい購入者の話をお届けします。
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買い物客に暇つぶし
これは、実際にある営業マンに起こった話です。
新春の売り出し現場を任され、朝から現場に待機していた新人営業マンがいました。
そこへ、店長がやって来て、その新人営業と「暇だなぁ」等と雑談をしていたそうです。
そして、「ただ暇を潰しているのは勿体ないから何かしよう」ということになり、店長から一つの提案が出ました。
顧客に飛び込んでいく勇気を養うために、通行人に声をかけてみようという事になったのだそうです。
店長は、度胸をつけさせる意味でやらせただけで、数名に声をかけたらそれで合格にするつもりだったそうです。
その新人は、素直に店長の指示に従い、通行人に声をかけ始めました。
「よろしければ内覧いかがですか?」といった感じで声をかけていき、すぐに慣れてきた様子でした。
店長は、内心よくやったと思い、「もういいよ」と声をかけたそうです。
しかし、その新人は「どうせ暇なので」と言って、そのまま続けたのだそうです。
なかなか根性のあるエピソードで、店長も期待の新人として見るようになったようでした。
そして、この努力が思わぬ方向へと進んでいくことになります。
買い物帰りの客
通行人の多くは、年始から営業をしているスーパーマーケットの買い物客でした。
日用品や食品を買いに来た人を相手に声をかけても、あまり意味のない行動に思えます。
通行人の男性から「買い物客に営業してもダメだよー」なんて冷やかされたりもしたそうです。
そんな中、少し前に声をかけた40代後半位の男性が、買い物袋をぶらさげて再び通りがかりました。
新人営業は、「お買いものお疲れ様でした!」と声をかけたそうです。
すると、男性が立ち止まって、「正月から大変だねぇ、何時までやるの?」等と声をかけてきました。
その流れから、「誰も見てくれないので、内覧してくれませんか?」と誘ってみると、その男性は「暇だから別にいいけど」と内覧をしてくれたそうです。
男性は、「結構いいねぇ」等と物件を見てくれましたが、当然ながら物件を検討するわけではありませんでした。
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通行人の心の変化
ここまでは、ただの買い物帰りの通行人だった男性が内覧をしただけの話です。
結論から言うと、この男性はこの新人営業を通して一戸建を購入することになりました。
この話の肝は、何によって通行人の心に変化が起こったのかを知ることだと思います。
ここからは、その変化のプロセスを簡単にご紹介します。
内覧を通じて少し打ち解けたことで、男性から「俺もそろそろマンションでも買おうとは思っていたんだけどね」という言葉を聞くことができました。
そこで、新人営業は、翌日にマンションと戸建を見比べてみることを提案し、約束をもらったのです。
ここまでの流れを見る限り、男性の心を変化させたのは、新人営業の積極性と言って良さそうです。
人それぞれの頑張り方というものがありますが、このケースにおいては、彼だからこそ得られた結果だと思います。
ただの買い物客だった人でも、よく話を聞いてみればチャンスがあったのです。
仲良くなることで、自分を顧客だと思っていない潜在的なニーズを持っている人に辿り着いた事例です。
通行人に家を売るという営業活動は、決して確率が良い方法ではありません。
ですから、彼のような努力をしても大抵は無駄に終わります。
ですから、あまりマネはしないほうが良いと思います。(笑)
でも、チャンスはどこにでもあって、努力は報われるものだと感じるエピソードですよね。
因みに、この新人営業は、1年後には支店で上位争いができるレベルまで成長しました。
前向きな気持ちを持つことで、一瞬で活路が開ける事もある仕事なので、彼のようなタイプは早く成長できるのだと思います。
福の神のような人
先程とは別の話で、もっと驚く体験を目にしたこともあります。
通行人に家を売るよりも珍しい事ですから、相当なものですよね。(笑)
ある営業マンが、50代前後の男性から売り出し現場で声をかけられました。
男性から、「家は買わないけれど、実家を売りたいんだよね」と相談をされたのです。
現地待機をしていると、本当に色々な事があるものです。
比較的に経験のある営業マンだったので、その場で話を聞き、夕方に査定をする約束をしました。
しかし、この案件は、男性の妻が手配した業者が専任で販売することになり、その営業マンは仕事をもらうことができませんでした。
その男性は、この事を申し訳ないと謝り、とても心苦しそうだったそうです。
営業マンも「気にしないでください」と気持ちよく案件を終了していました。
一攫千金の案件へ
罪悪感を抱いていたその男性は、それから半年くらい経って再び店に現れました。
男性は、「あの時は悪いことをしちゃったね」と、律儀にも当時のことを謝り、続けてこう言いました。
「親が亡くなって、土地を売らなければいけなくなったから、今度こそあんたにお願いしようと思ってね」
これでだけでも、営業として最高に嬉しい出来事です。
しかし、朗報はそれだけでは終わりませんでした。
なんと、その親の所有していた土地というのが数億円の土地だったのです。
この営業マンは、この取引だけで一年分の仲介手数料を稼いでしまいました。
この話には、まだ続きがあります。
取引が無事に終わった後、その男性から「実は、もう一つあったんだよね」と言われます。
そして、この土地もまた数億円の土地でした。
まさに一攫千金というやつで、福の神のような顧客ですよね。
滅多にある話ではないものの、不動産の仕事にはこんなサプライズもあるという事です。
基本的には地道に努力する仕事ではありますが、なかなか夢のある職業だと思いませんか?
まとめ
年明けのタイミングで動き出す人は多く、普段の売り出し現場よりも様々なことが起こりやすいのだと思います。
今回ご紹介したケースは、私が見聞きした中でもかなり珍しい事例ではありますが、どちらも本当にあった話です。
売り出し現場に立つときには、そんなドラマを期待して頑張っていきたいですね。