不法行為について、宅建独学用の無料テキストを作成しました。
宅建の本試験でよく出題されている部分は、過去問での確認もできるようにしておきましたので、効率よく学習できると思います。
不法行為による損害賠償
第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
故意(意図的)の場合でも、過失(落ち度)の場合でも、誰かの権利を侵害したら損害賠償する責任を負うという規定です。
例えば、自宅に車が突っ込んできたとしましょう。
それが、自分を恨んで意図的にやった事でも、操作ミスでも、損害賠償責任が発生しなければ困りますよね。
操作ミスはわざとではないから損害賠償責任は無いなんて言われたら被害者はたまったものではありません。
そう考えると、当然の規定に思えるはずですから、暗記の必要も無いでしょう。
(財産以外の損害の賠償)
第710条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
(近親者に対する損害の賠償)
第711条 他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。
責任能力
第712条 未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
第713条 精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでない。
(監督義務者等の責任)
第714条 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
責任能力が無い者による損害賠償責任は、監督義務者にあります。
但し、監督義務者が、その義務を果たしていても起こり得るような場合は除かれています。
(使用者等の責任)
第715条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
経営者と従業員に当てはめて考えると分りやすいと思います。
(注文者の責任)
第716条 注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文又は指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない。
この条文は、ハウスメーカー等の建築会社の仕事に関わりが深い内容です。
出題の可能性があるので、内容は覚えておきましょう。
(土地の工作物等の責任)
第717条 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
これも条文の理解を問う問題が出そうな雰囲気を持っている条文です。
賃貸物件の管理業務をする人達に重要な知識だからです。
占有者が損害発生の責任を負うのは、損害防止のための注意をしていなかった場合ですので、ひっかけ問題に注意しましょう。
(動物の占有者等の責任)
第718条 動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。
2 占有者に代わって動物を管理する者も、前項の責任を負う。
宅建には関係が無さそうな内容にも思えますが、賃貸物件で動物を飼う人もいますので、出題されないとは言い切れません。
念のため、読んでおくだけで良いと思います。
(共同不法行為者の責任)
第719条 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
2 行為者を教唆(キョウサ)した者及び幇助(ホウジョ)した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。
教唆とは、そそのかす事です。
幇助とは、手助けをする事です。
平成19年度 出題(正解肢)
・不法行為による損害賠償の支払債務は、催告を待たず、損害発生と同時に遅滞に陥るので、その時以降完済に至るまでの遅延損害金を支払わなければならない。
・不法行為によって名誉を毀損された者の慰謝料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明しなかった場合でも、相続の対象となる。
・加害者数人が、共同不法行為として民法第719条により各自連帯して損害賠償の責任を負う場合、その1人に対する履行の請求は、他の加害者に対してはその効力を有しない。
(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
第724条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。
とても有名な条文で、法律系資格の受験生で知らない人はいないと言っても良いくらいです。
不法行為は、「知って3年、行為から20年で消滅」と暗記してしまいましょう。
平成26年度 出題(正解肢)
不法行為による損害賠償請求権の期間の制限を定める民法第724条における、被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいう。
平成17年度 出題(正解肢)
【前提条件】Aは、所有する家屋を囲う塀の設置工事を業者Bに請け負わせたが、Bの工事によりこの塀は瑕疵がある状態となった。Aがその後この塀を含む家屋全部をCに賃貸し、Cが占有使用しているときに、この瑕疵により塀が崩れ、脇に駐車中のD所有の車を破損させた。A、B及びCは、この瑕疵があることを過失なく知らない。
・Bは、瑕疵を作り出したことに故意又は過失がなければ、Dに対する損害賠償責任を免れることができる。
・Cは、損害の発生を防止するのに必要な注意をしていれば、Dに対する損害賠償責任を免れることができる。
・Dが、車の破損による損害賠償請求権を、損害及び加害者を知った時から3年間行使しなかったときは、この請求権は時効により消滅する。
まとめ|勉強のコツ
不法行為の出題箇所は、限られた部分に集中しています。
内容的に考えても、今後もその傾向は続くと思います。
不法行為は、他の部分と組み合わせやすい内容ですから、複合的に出題されていく可能性があります。
頻出条文については、しっかり覚えておきましょう。