このテキストは、「民法(抵当権)の宅建独学用 無料テキスト」の続編です。
根抵当権は、抵当権の勉強と併せて学習しておくと良いと思いますが、本試験では圧倒的に抵当権からの出題が多いです。
抵当権の勉強を終えてから取り掛かるようにしましょう。
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根抵当権とは
まず、「根抵当権とは何か」をわかりやすく説明しておきますね。
普通の抵当権は、借金の金額が確定していますよね。
登記簿を見ると、抵当権の金額が記載されているので、いくらの借入れをしたのかが一目瞭然です。
これに対して、根抵当権は、借金の金額に幅を持たせているものだと思えば良いのです。
例えば、「1億円まで借りられる」という登記をして、その範囲内でお金を借りるのです。
このような上限額のことを極度額と言います。
なんで極度額を設定するのかというと、貸し借りの頻度が多い目的に適しているからです。
事業等で利用する融資等、お金を調達する度に抵当権設定費用がかかるのでは、コストも労力も無駄ですよね。
そこで、クレジットカードのように極度額を設定しておき、その範囲内でお金を借りられるようにしたのが根抵当権だと思ってください。
抵当権の場合、借金が弁済されて債権が消滅すれば、抵当権も消滅します。
この事を、法律用語では「附従性がある」という言い方をします。
しかし、根抵当権の場合、借入が無い状態でも「借りられる権利」が根を張るように残っています。
つまり、根抵当権には「附従性が無い」わけです。
条文では、以下のように記載されていますので、ざっと確認しておきましょう。
(根抵当権)
第398条の二 抵当権は、設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。
2 前項の規定による抵当権(以下「根抵当権」という。)の担保すべき不特定の債権の範囲は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して、定めなければならない。
3 特定の原因に基づいて債務者との間に継続して生ずる債権又は手形上若しくは小切手上の請求権は、前項の規定にかかわらず、根抵当権の担保すべき債権とすることができる。
根抵当権の被担保債権の範囲
第398条の三 根抵当権者は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額を限度として、その根抵当権を行使することができる。
2 債務者との取引によらないで取得する手形上又は小切手上の請求権を根抵当権の担保すべき債権とした場合において、次に掲げる事由があったときは、その前に取得したものについてのみ、その根抵当権を行使することができる。ただし、その後に取得したものであっても、その事由を知らないで取得したものについては、これを行使することを妨げない。
一 債務者の支払の停止
二 債務者についての破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は特別清算開始の申立て
三 抵当不動産に対する競売の申立て又は滞納処分による差押え
試験対策としては、確定した元本並びに利息その他の定期金、損害賠償等に対しても根抵当権の範囲が及ぶ事を覚えておけば良いと思います。
極度額を超えられない事にも注意しましょう。
第398条の四 元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができる。債務者の変更についても、同様とする。
2 前項の変更をするには、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない。
3 第一項の変更について元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなす。
この条文で大事なのは、根抵当権の範囲を変更する際には、後順位の権利者や第三者の承諾がいらないという部分です。
試験対策上は、この部分だけ覚えておけば十分だと思います。
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根抵当権の極度額の変更
第398条の五 根抵当権の極度額の変更は、利害関係を有する者の承諾を得なければ、することができない。
範囲の変更に承諾がいらない一方で、極度額の変更には利害関係者の承諾が必要だという部分が試験対策上のポイントです。
根抵当権の元本確定期日の定め
第398条の六 根抵当権の担保すべき元本については、その確定すべき期日を定め又は変更することができる。
2 第398条の四第二項の規定は、前項の場合について準用する。
3 第一項の期日は、これを定め又は変更した日から五年以内でなければならない。
4 第一項の期日の変更についてその変更前の期日より前に登記をしなかったときは、担保すべき元本は、その変更前の期日に確定する。
根抵当権の元本の確定期日の変更は、後順位の権利者や第三者の承諾がいらないという事です。
根抵当権の被担保債権の譲渡等
第398条の七 元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができない。元本の確定前に債務者のために又は債務者に代わって弁済をした者も、同様とする。
2 元本の確定前に債務の引受けがあったときは、根抵当権者は、引受人の債務について、その根抵当権を行使することができない。
3 元本の確定前に債権者又は債務者の交替による更改があったときは、その当事者は、第五百十八条の規定にかかわらず、根抵当権を更改後の債務に移すことができない。
元本の確定とは、期日を決めて返済日と清算額を確定させることです。
返済期日も返済額も確定していない状態で権利行使するのはダメという事です。
「根抵当権の元本確定前に譲渡された権利者は、権利行使をすることができない」と機械的に覚えてしまいましょう。
平成12年度 出題(正解肢)
根抵当権の被担保債権に属する個別の債権が、元本の確定前に、根抵当権者から第三者に譲渡された場合、その第三者は、当該根抵当権に基づく優先弁済を主張できない。
平成23年度 出題(正解肢)
元本の確定前に根抵当権者から被担保債権の範囲に属する債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することはできない。
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根抵当権者又は債務者の相続
第398条の八 元本の確定前に根抵当権者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債権のほか、相続人と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に取得する債権を担保する。
2 元本の確定前にその債務者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債務のほか、根抵当権者と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に負担する債務を担保する。
3 第398条の四第二項の規定は、前二項の合意をする場合について準用する。
4 第一項及び第二項の合意について相続の開始後六箇月以内に登記をしないときは、担保すべき元本は、相続開始の時に確定したものとみなす。
相続開始の合意についても、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しないという部分がポイントです。
根抵当権の処分
第398条の十一 元本の確定前においては、根抵当権者は、第376条第一項の規定による根抵当権の処分をすることができない。ただし、その根抵当権を他の債権の担保とすることを妨げない。
2 第377条第二項の規定は、前項ただし書の場合において元本の確定前にした弁済については、適用しない。
根抵当権は、他の債権の担保とすることは可能だが、他の債権者の利益のためにその順位を譲渡し、若しくは放棄することはできないという事だけ理解すればOKです。
因みに、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権自体を譲り渡すことはできます。
ここは、解釈が難解な部分ですので、出題の可能性は低いのではないかと思います。
条文の存在を知っている程度で良いと思います。
まとめ
根抵当権は、事業等で設定される事が多いこともあり、本試験ではあまり重要視されていないようにも見えます。
とはいっても、何度か出題されていますので、根抵当権の意味と基本的なルールくらいは知っておきたいところです。
過去問での出題範囲は狭いですし、将来に新しい部分から出題される可能性も低めだと思います。
時間が足りない人は、冒頭から第398条の七までの勉強だけに絞っても良いと思います。