不動産営業 基礎知識

実例で学ぶ不動産契約の解約トラブル

不動産の取引では、契約内容に応じて契約書の記載内容を考えなければいけない部分(特記事項等)があります。

このような部分の記載内容については、営業個人が考えて記載する場合も多いです。

法務課等がチェックする体制が無い会社では、営業マンの独断による記載が原因となって、後に大きなトラブルに発展することがあります。

この記事では、実際の訴訟事例を題材にして、不動産トラブルの原因を実例紹介していきます。



手付解除のトラブル事例

買主Aは、宅建業者である売主Bから直接に土地を購入しました。

そして、その売買契約書には、以下のような文言が記されていました。

相手方が契約の履行に着手するまで、又は、平成12年5月26日までは手付解除できる

 

契約後、売主Bは、契約締結から二日後に「履行の着手」と認められる行動をとりました。

しかし、その直後に買主Aから自己都合による手付解除の申し出を受けたのです。

 

買主Aは、売り主が履行に着手したとしても、平成12年5月26日までは手付解除できるという解釈をしていたからです。

これに対し、売主Bは、自分が既に契約の履行に着手していることを理由に、手付解除は認められないと主張しました。

 

買主Aの気持ち

売主Bは、確かに義務の履行に着手しましたが、契約書には日付による期限も記載されています。

ですから、Aはこう考えました。

履行の着手と、記載期限のどちらか遅い時期まで解除できるはずだ

 

この為、平成12年5月26日が到来するまでは手付が解除できるはずだと考えたのです。

確かに、契約書に記載されている文言は、買主Aの主張のように解釈することもできそうです。

 

契約の解除については、不動産の取引で比較的に起こりやすいアクションですので、このような基本的な知識は、しっかりと身に付けておかなければなりません。

さて、皆さんは、どちらの主張が正しいと思いましたか?

 

避けられたはずの問題

この契約書に記載した文言は、解釈の方法が2通り発生してしまう書き方をしている事が問題でした。

読む人によって解釈が分かれてしまうような表現をした文言は、重大なトラブルを招くことになるということです。

 

法務課等の部署がある会社なら別ですが、小規模の不動産会社では不動産営業が各自で慎重に作成するしかないのが現状です。

ですから、営業マンが各自でこのような意識を持ち、日頃から法的知識等について自己啓発していく必要があります。

特に、法律上で「無効」とされる事柄については、普段から意識しておきましょう。

 

トラブルを無くすためのポイント

  • 関連する条文を確認してみる
  • 有識者に確認する
  • 分かり難い表現を避ける

 

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訴訟の結果

この解約トラブルは訴訟に発展し、裁判所の判決を受けることになりました。

第一審では、売主Bの主張が認められましたが、控訴審の判決は買主Aの主張を認めました。

 

売主Bは宅建業者であるわけですから、不動産取引に疎い消費者に対し、きちんとした説明をすべき立場にあります。

ですから、宅建業者が買主の手付解除権を制限するような特約をするのは「無効」というのが判決上の見解です。

 

売主Bの主張を認めれば、「買主の手付解除権を業者が制限できる」ということになりますから、納得の判決ですよね。

平成12年5月26日までと期限を示しておきながら、売主Bの履行着手でこれが消えるのはおかしな事です。

 

売主Bの言い分が正しいのなら、Bの履行着手によって、手付解除期間が2日間だけだった事になってしまいます。

これは、あまりにも買主に不利ですよね。

わざわざ日付を指定して記載したのですから、この期限を下回る制限は買主に不利と言わざるを得ないと言うのが裁判所の結論です。(名古屋高裁・判決平成13.3.29)

 

言われてみれば納得の結末ですが、第一審では売主Bの主張が認められた事実もあります。

何故、一審では認められたのかと不思議に思いますよね。

 

これは、売り主Bの行動に何も違反がないからです。

Bは、売った不動産に対して買主に引き渡すための行動を迅速にとっています。

この事自体に何も問題がないので、買主側の都合で解約された場合には被害者になるわけです。

 

今回のトラブルは、あくまでも契約書上の「文章」が悪かったという話なのです。

このような事情から、本件の判断が難しくなった部分があったのだと思います。

 

条文を確認してみよう

今回のお話は、民法 第557条(手付)と、宅地建物取引業法 第39条(手付額の制限等)の観点から、一定限度において無効とされている事例でした。

もしも、契約書作成の際に、条文をよくチェックしていれば、未然に防げたトラブルだったかもしれません。

 

民法第557条

買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。

宅地建物取引業法 第39条

2 宅地建物取引業者が、みずから売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手附を受領したときは、その手附がいかなる性質のものであつても、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手附を放棄して、当該宅地建物取引業者はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。

3 前項の規定に反する特約で、買主に不利なものは、無効とする。

 

まとめ

不動産営業が行う契約業務は、関係者の権利に大きな影響を与えるものです。

業務に慣れていく程、このような意識が薄れやすいものですから、常に気を引き締めていきましょう。

特約の効力そのものに関する文言については、慎重にその有効性を検討する必要があります。

社内の有識者に相談する等、必ず自分以外の目を入れる事を徹底しましょう。

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