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宅建無料テキスト 都市計画法

都市計画法の無料テキスト④(宅建独学用)

この記事は、「都市計画法の流し読みテキスト③ 」の続きです。

今回は、開発許可についてのテキストになります。

実際の法令では、もう少し早い段階で出て来る部分ですが、この法律の概要を知った上で学習した方が理解しやすいので後回しにしました。

不動産の仕事をする上でも関わりの深い部分ですので、試験でも出題されやすい事項です。

最終修正日:2020年12月

 

開発行為の許可

まずは、「開発行為とは何か」という理解が必要です。

開発行為とは、簡単に言えば、広い土地を改良して工作物等を造る行為のことです。

 

補足

都市計画法上では、「主として建築物の建築または特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更」と記載されています。

そして、都市計画区域又は準都市計画区域内において開発行為をしようとする者は、あらかじめ都道府県知事の許可を受けなければなりません。(都市計画法 第29条抜粋)

ただし、例外についても規定されていますので、これについては後述します。

 

主として建築物の建築または特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更が開発行為なのですから、ここで言う「建築物」と「特定建築物」について理解しておく必要があります。

 

特定建築物とは

特定工作物は、第一種特定工作物と第二種特定工作物に分けられます。

第一種特定工作物は、工場プラント等、周辺環境を悪化させる可能性があるような建築物です。

第二種特定工作物は、ざっくり言えば大規模な工作物のことです。

 

特定工作物の代表例

  • 1㌶以上のスポーツ施設(第二種) 2019年出題有
  • 1㌶以上の遊園地(第二種)
  • 1㌶以上の墓地(第二種)
  • ゴルフ場(第二種)
  • コンクリートプラント等工場設備(第一種)

工場等の建築物は、環境を悪化させる可能性があるので、その内容等を細かくチェックする必要がありますよね。

ですから、面積に関係なく開発許可が必要だと考えてください。

 

スポーツ施設、遊園地、墓地等は、元々ある程度の広さが必要であることが明らかな建築施設ですよね?

安全性や用途も知れていますから、大規模(1ヘクタール以上)の場合だけ開発許可を義務付けていると考えれば良いでしょう。

 

ゴルフ場については、大抵の場合1ヘクタール以上の面積になるとは思いますし、あまり面積で縛る意味もないでしょう。

それに、農薬等を使用する施設なので、全て開発許可が必要としていると考えれば筋が通るのではないでしょうか。

 

要するに、特定工作物の場合、「行政が念入りにチェックしたほうが良いケース」に開発許可がいるわけですが、小規模な開発行為については更に範囲を縮小し、個別に規定しています。

 

とにかく、開発許可が必要となるケースは、通常の建築確認申請でチェックを行うだけでは足りないという規模・内容であることが要件になっていると考えましょう。

このような考え方を理解しておくだけで判断できる設問もありますので、覚えておくと良いと思います。

試験対策としては、「原則として開発許可の手続きが必要になるケース」を覚える事が重要です。

 

ポイント

逆を返せば、第二種特定工作物で面積規定を下回る小規模のスポーツ施設、遊園地、墓地等は、第二種特定工作物に該当しない為、開発許可がいらないということです。

 

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開発許可が不要な場合

開発許可とは、都道府県知事に申請をして開発行為の許可をもらう事です。

大規模な特定工作物とは別に、開発許可ナシでOKというケースを規定していますので、こちらも覚えておく必要があります。

以下のような小規模な開発行為の場合には、開発許可が不要となります。

  • 市街化区域内で、規模が1,000㎡未満 2019年出題有
  • 区域区分が無い地域で、規模が3,000㎡未満
  • 準都市計画区域内で、規模が3,000㎡未満 2019年出題有
  • 都市計画区域と準都市計画区域以外の場所で、10,000㎡(1㌶)未満の開発行為
  • 市街化区域外で、農林漁業者の使用する建築物 2018年、2019年出題有
  • 非常災害のため必要な応急措置の場合
  • 通常の管理行為・軽易な行為その他政令で定める場合
  • 公益上必要な建築物で、周辺環境等に支障が無い場合
  • 国又は地方公共団体の計画事業として施工する開発行為要協議

市街化調整区域内には面積規模の例外規定がありませんので、何㎡でも許可がいります。

2019年出題有

ポイント1

公益上必要な建築物とは、「駅舎・図書館・博物館・公民館・変電所」等を言います。

 

ポイント2

開発許可が不要な最低面積は、地方自治体の条例で個別に定めることもできます。

実際、都市部の一定地域では、最低500㎡未満の規模とされています。

人が多い場所では、街の利便性等に大きな影響を与える可能性がありますので、できるだけ開発許可にかかるようにしているということです。

条例では、最低面積を300㎡まで引き下げることが可能です。

 

国又は地方公共団体の計画事業として施工する開発行為は、以下のようなものです。

都市計画事業、市街地再開発事業、住宅街区整備事業、土地区画整理事業、防災街区整備事業等

これらは、別の申請手続きを経ているので、開発許可は不要です

 

開発許可の申請

開発許可の申請手続きは、都道府県知事に対して行います。(第30条)

申請時には、開発の区域、規模、用途、設計図書等を添付して申請します。

 

事前に協議や同意を得る必要のある関係者、又は権利者等がいれば、同意書等の書類も添付する必要があります。

例えば、設置される公共施設を管理する者がいる場合などは、協議が必要という事です。

 

法令上で開発許可をOKにするための基準(第33条)があり、都道府県知事は、この基準に適合した申請は許可しなければなりません

しかし、物事に『基準』を設ける場合には、その場所とか環境によって条件を調整する必要がありますよね?

開発許可の場合も同じで、市街化調整区域内の場合には、条件を変えることにしています。

 

市街化調整区域は、優先的に整備していく場所ではありませんよね。

ですから、通常の基準である第33条に加えて、項目を増やして開発行為をし難くしています。(第34条)

基本的には開発を進めないはずの場所ですから、以下のような条件を満たす場合である事を追加しました。

  • 周辺住民が助かる販売店(日用品等)
  • 鉱物や観光資源として有効な目的
  • 都道府県知事が、あえて市街化調整区域で開発する必要があると考えた場合

この場合、都道府県知事は開発審議会を通して決定する必要があります

ポイント

国・都道府県等が行う開発行為については、国の機関又は都道府県等と都道府県知事との協議が成立することをもって、開発許可があったものとみなされます。(都市計画法34条の2第1項)

地位の継承

開発許可を受けた者が死亡した場合は、相続等によって地位を継承した者に地位を継承できます。

また、開発許可を受けた者から、工事をする権限を譲り受けた場合には、都道府県知事の承認を受けることができれば、この地位を継承することができます。

 

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開発許可による制限

都道府県知事は、開発許可をする際、必要に応じて制限を設定できます。

建蔽率、建物の高さ、壁面の位置、構造等について定めることができるということです。

 

都道府県知事は、申請に対して遅滞なく「許可」又は「不許可」処分を文書で通知することになっています。

また、許可をしない場合は、その根拠を文書で示す必要があります。

 

そして、都道府県知事は、開発許可をしたら、その内容を記録するための帳簿を作成しなければいけないことになっています。

これを、開発登録簿と言います。

 

都道府県知事は、開発登録簿を調整・保管し、公衆の請求があった時には開発登録簿を閲覧させ、写しを交付することになっています。

要するに、役所に備えておいて、問い合わせがあれば職員がコピー機で対応するということです。

 

審査請求について

都道府県知事開発許可を行うと、それに影響を受ける人達が不満を抱くこともありますよね?

都市のためになる開発でも、近隣の人は開発行為を止めて欲しいと考える場合もあるからです。

 

このように、開発許可の処分に不服がある場合には、開発審査会という組織に対して審査請求ができる仕組みがあります。

審査請求とは、「おかしいと思うので、もう一度調べてください!」という請求だと思ってください。

 

不作為(何もしてくれない事)への審査請求の場合には、都道府県知事に対して直接に審査請求することも可能です。(第50条)

 

開発審査会は、審査請求をされた日から二カ月以内に裁決をしなければなりません。

また、裁決をするまでの二カ月間の中で、関係者を出頭させ、公開による口頭審理を行うことになっています。

 

他の機関で裁定中の場合には、審査請求はできません。

(公害等調整委員会に裁定の申請をしている場合等)

色々な機関でダブル審査することになってしまい、無駄だからです。

 

変更の許可

第35条の二 の要約

開発許可を受けた者は、開発行為の内容を変更しようとする場合においては、都道府県知事の許可を受けなければならない。

ただし、変更の許可の申請に係る開発行為が、開発許可が不要となる例外規定に該当している場合は除く

国土交通省令で定める軽微な変更をしようとするときも、個別の許可は不要です。

 

変更の許可を受けようとする者は、国土交通省令で定める事項を記載した申請書を都道府県知事に提出しなければならない。

開発許可を受けた者は、国土交通省令で定める軽微な変更をしたときは、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。

 

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工事の届出

工事に着手した後で、何らかの理由によって工事を廃止することになった場合は、都道府県知事に対して遅滞なく届出を行うことになっています。

また、工事が完了した際にも、都道府県知事に対して工事完了届を提出します。

 

都道府県知事が工事完了届を受領すると、工事についての検査が入ります。

行政として、計画通りに工事が完了したかを確認し、問題が無ければ検査済証を交付します。

 

検査済証が交付された工事については、都道府県知事が公告を行って世間に知らせます。

これを、工事完了公告と言い、公告の翌日から建築施設等が管理者に委ねられます。

 

開発区域内の建築物について

都市計画法の第37条では、工事完了公告があるまで建築ができないといった内容の記述があります。

第37条 開発許可を受けた開発区域内の土地においては、前条第三項の公告があるまでの間は、建築物を建築し、又は特定工作物を建設してはならない。ただし、次の各号の一に該当するときは、この限りでない。

一 当該開発行為に関する工事用の仮設建築物又は特定工作物を建築し、又は建設するとき、その他都道府県知事が支障がないと認めたとき。

二 第三十三条第一項第十四号に規定する同意をしていない者が、その権利の行使として建築物を建築し、又は特定工作物を建設するとき。

 

そして、同法42条では、工事完了公告後は、予定建築物以外は建築できないといった内容の規定が存在しています。

実際の開発許可案件を見たことが無い人は、この違いが理解できないという人も多いのではないでしょうか。

 

そこで、開発許可案件における建物の建築についてもう一度おさらいし、ここで理解を深めておきましょう。

試験でも度々出題されていますので、しっかりイメージできるようになっておくと良いと思います。

 

開発工事のイメージ

開発許可案件では、開発工事完了後の検査に合格し、工事完了の公告日以降でなければ原則として建築できません。

そもそも開発許可が必要な工事とは、それなりに広い土地ですよね?

 

となると、開発工事の大半は、造成と道路工事ということになります。

建売物件でも、数十棟規模の大現場が開発許可に基づいて行われることがあります。

このような工事では、建物を建てる前の段階の工事に長い期間を費やすことになります。

 

このような土地に建物を建築できる状態にするまでの工事が完了するまでは、建物を建築して良いわけがありませんよね?

安全に開発され、検査を受けた後で建築をしなければ、開発許可を出した意味もありませんし、建物を建てたとしても工事の邪魔になります。

 

ですから、原則としては建築ができないわけです。

但し、工事に必要な建築物や、都道府県知事が工事に支障がないと認めた場合には例外的に建築が可能です。

また、開発行為について同意していない権利者が開発区域内に存在していて、その人が自分の権利として建築をする場合は、例外として建築できる場合があります。

 

最終的には、開発区域が計画通り施工されているか検査を受け、合格すると検査済証が交付され、その後に完了公告が行われます。

 

公告後の建築とは

何人も、開発許可を受けた開発区域内においては、工事完了公告があつた後は、当該開発許可に係る予定建築物等以外の建築物又は特定工作物を新築し、又は新設してはならず、また、建築物を改築し、又はその用途を変更して当該開発許可に係る予定の建築物以外の建築物としてはならない。(第42条の要約)

逆の言い方をすれば、開発許可を受けた開発許可区域内においては、工事完了の公告があった後には、原則として当初の計画で予定していた建築物を建築しなければならないということです。

だから、工事完了公告後は、原則として予定建築物等以外の建築物を新築してはいけないと言っているのです。

 

但し、これには2つの例外があります。

  1. 都道府県知事が、周辺地域における環境の保全上支障がないと認めて許可した場合
  2. 政令で指定する工作物に該当し、当該開発区域内に用途地域等が定められているとき

開発許可を申請した時には予定していなかったものでも、都道府県知事が環境保全上の支障がないと認めたものはOKです。

これは、普通に納得できますよね?

 

2番で言っているのは、開発行為を行った区域に用途地域の指定がある場合で、そこに空地(売地)としてのスペースが用意されていた場合を想像してください。

開発現場に空地があった場合、その用途地域に適合した建物を建築することはOKだと言っているのです。

 

勿論、通常の建築時と同様に、建築確認申請は必要ですが、開発行為に関連した届け出や変更届などをしないで建築ができる例外として規定していると考えてください。

 

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田園住居地域内での規制

田園住居地域内の農地において、土地や建物の形質変更を行う者は、市町村長の許可を得なければなりません。

但し、以下のような場合は例外として、許可がいりません。

  • 通常の管理行為、軽易な行為、その他政令で定める行為
  • 非常災害の為の必要な応急措置
  • 都市計画事業の施工である場合、又はそれに準ずる行為

市町村長の対応

市町村長は、田園住居地域内の農地で、土地や建物の形質変更を行う者が予定する計画をチェックします。

そして、それが良好な住居の環境の保護を図る上で支障がないものとして政令で定める規模未満のものであれば、必ず許可をしなければなりません。

 

また、敷地の規模が農業の利便と住居環境の保護等に支障がなく、政令で定める規模未満のものである場合にも、必ず許可をしなければなりません。

国又は地方公共団体が行う行為については、あらかじめ市町村長に協議しなければならないことになっていますので、市町村長による許可は不要になります。

 

市街地開発事業等予定区域の規制

市街地開発事業の予定区域では、都道府県知事(市の区域内にあっては、当該市の長)に許可をもらわなければ土地や建物の工事ができません。

但し、田園住居地域の場合と同じで、以下の場合は例外です。

  • 通常の管理行為、軽易な行為、その他政令で定める行為
  • 非常災害の為の必要な応急措置
  • 都市計画事業の施工である場合、又はそれに準ずる行為

 

都市計画法の過去問

都市計画法だけを集中して学習するための過去問記事を作成しておきました。

テキストの精読が終わったら使ってみてください。

 

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まとめ|勉強のコツ

お疲れ様でした。

以上で、都市計画法の流し読みは完了です。

細かすぎる部分や、過去問で学習すれば足りる部分についてはできるだけ効率よく省いたつもりです。

まずは、①~④のテキストの中に出て来た事を理解して、過去問をやってみてください。

そして、足りない部分の知識があれば補強するイメージです。

 

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