売買の仲介営業職には、絶対にとりこぼしてはいけない契約というものがあります。
基本的な動きができていれば、誰にでもとれるような契約です。
しかし、そんなチャンスが新米の頃に訪れてしまう事もあるでしょう。
そこで、事前に疑似体験して備えておきたい鉄板ケースの一つをご紹介しておきます。
実例ですので、営業の心境等も入れながら進めていきます。
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反響の経緯
この案件は、住宅情報誌からの反響で、5物件の資料を希望している顧客でした。
上司から、電話は繋がらないけど「やってみて」と言われて渡された案件です。
私は、問合せから2時間後には周辺の物件と合わせた資料を出し、ご自宅を訪問しました。
しかし、出て来たのは顧客のお母親で、ご本人は不在でした。
事情をお話ししてご挨拶をし、その日は資料を渡して帰るしかありませんでした。
すると、翌日にまた同じようなメールの問合せがありました。
私に対する問い合わせでは無く、再び店に反響が入ったのです。
自分が担当になれていないと感じ、少し悲しい気分でしたが、すぐに気を取り直して資料を作成しました。
おそらく、昨日届けた物件は、ご希望のものと違ったのでしょう。
ともかく、行動力がある人のようですし、積極的に探している様子は伺えます。
夜遅かったので、この日はポストに入れておくことを選びました。
電話が繋がる
翌日、電話が繋がり、やっとご本人とお話しすることができました。
30分前後のヒアリングをして、ほとんどのことは聞くことが出来ました。
食品関連の営業職をしているとの事で、サバサバしているものの、優しい雰囲気もある人でした。
電話の後、その情報を参考にして、私のオススメ資料を作成し、お届けしました。
ヒアリングで詳しく営業に伝える事で、希望に近い物件や、プロ視点の紹介が得られるという事を感じて欲しかったからです。
翌日、また電話をして資料の感想を聞きつつ、ご案内に誘いました。
しかし、「時間が空いたら連絡しますから」と言われ、来る気は無いと感じました。
不動産営業にはよくあるガッカリパターンです。(笑)
そして、2日が経過した金曜日の夜、私はもう一度電話してみました。
すると、日曜日に見に行くとのこと。
しかし、まだドタキャンの可能性がありそうだと感じていました。
断るのが悪く感じて、とりあえず約束を受けたように思えたのです。
直感的なので、何も根拠はありませんが、「この人は優しい」と感じたのを覚えています。
予想通りの展開
土曜日に、「確認の電話」という名目で再度電話しました。
こちらも、ドタキャンはやめて欲しいですし、昨日の雰囲気を確かめたいと思ったのです。
すると、案の定「用事ができた」とのこと。
申し訳なさそうな様子で断られました。
しかし、ここがポイントだと思うのですが、私は断られた時の事を考えていました。
「おそらく今週末で完売してしまう物件がある」という切り札を出しました。
これは嘘では無く、最後の1棟になっている良い物件があったのです。
積極的に探している人なので、このような言葉に効果があったようです。
なんとか無理をして来てもらえる事になりました。
いよいよご案内の時間を確定するところまで来たのです。
ターニングポイントは、「案内を断られた時の準備」たったと感じています。
このような場面で、案内の約束をもらえないと、二度と会えないうちに他決することもあります。
勝負所というやつですね。
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来店時の接客
後日聞いた話ですが、このお客様は、「一度関わった人を裏切れないから、どこの不動産屋に行くかはもう少し具体的になってから」と思っていたそうです。
あの時、強引に誘っていなければ、誰かファーストコンタクトした営業が契約していたということです。
担当営業としては、ゾっとする話です。
私は、このお客様に関しては、案内前の接客に時間をかけました。
出発前に約1時間半の接客をしたのです。
エリアが限定されているので、そんなに見せるものも無い状況でした。
それに、契約までの流れは知っておいたほうが決まりやすいと思ったからです。
上司から、「早く行かないと暗くなるぞ」と何度もせかされながらも、自分の考えを信じて接客を続けました。
物件案内のスタート
正直なところ、ご希望エリアにはあまりご案内に向く物件がありませんでした。
完成しているのは案内に誘った物件だけです。
その他は、土地の状態や、建築中の物件ばかりだったのです。
色々考えましたが、最初にオススメ物件を見せることにしました。
このような場合、普通は最後に完成物件を見せます。
最も印象が良い物件は、後半になるように案内するのが一般的です。
しかし、私はあえてその常識を覆した順番で案内をしました。
貴方も、その理由を考えてみてください。
順番を変えた理由
結果的に契約になりましたが、この方法が正しいと言う事ではありません。
たまたま合っていただけかもしれない程度の事です。
大事なのは、色々な発想を持って選択する事だと思います。
最初に一番決まりやすい完成物件を見せることにしたのは、この顧客の本気度を知っていたからです。
私は、以下のようなポイントを考慮していました。
- 周辺に完成物件が少ない為、案内が集中する可能性がある
- 買うなら急いだ方が良いことを理解してもらう
- 接客により、いつでも申込みの動きがとれる状態にある
案内の際、私はこう言いました。

物件案内の結果
最初にオススメ物件を見せたところ、顧客はそれなりに気に入った様子でした。
急がないと終了してしまう可能性も感じてもらえたと思います。
しかし、比較物件を見ていないので、当然のことながら決断まではできません。
私も、それを分かった上でご案内しています。
この物件はこの週末で完売してしまう可能性がありますから、こちらからすれば真剣に検討して欲しいところですよね。
そこで、そのままの流れで過去の現場を回ることにしました。
数か月前まで物件として出ていた家を巡り、相場等を説明しました。
そして、販売中の未完成物件も見せました。
すると、ご主人がこう言い出します。
「やっぱり、最初のやつが一番いいね」
その日に申込とまではいきませんでしたが、一晩考えるということで分かれました。
結果が出る
翌日の朝、顧客から「買うことにした」と電話がありました。
その日に売主へ買付を入れ、事前審査の申し込みまで完了させました。
3日後の契約でセットし、契約が崩れないように色々と気を使って動きました。
他社が動いてくる可能性を考え、毎日何かしら連絡をとるようにし、契約に至りました。
後日談によれば、この顧客は5社以上問合せていたそうです。
私の訪問スピードと電話が決め手になったとの事でした。
初動での勝利ということです。
手数料も満額での契約でした。
カラー診断での視点
上級者向けの記事を読んでいただいた方の為に、カラー診断的な視点からの解説をしておきます。
カラー診断の内容については以下の記事をご参照ください。
参考記事
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不動産トップ営業が使う心理学とは?
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この顧客は、仕事が営業職である事、行動力がある事等からレッドの要素が強いことが感じられると思います。
また、電話でお話しした際、オレンジ的な印象も感じました。
つまり、レッドとオレンジの2色をメインに使うタイプの顧客です。
レッドに対しては、スピードが重要です。
そして、オレンジの人は「気を使う」という特徴があります。
これは、人に嫌な思いをさせたくないという心理的ニーズがあるからです。
本来、レッドは気を使わせる側のタイプですから、この人はオレンジがやや強いのだと思います。
このように判断できれば、正しい行動でアプローチできるのです。
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保護中: 不動産トップ営業が使う心理学(上級者向けノウハウ集)
この投稿はパスワードで保護されているため抜粋文はありません。
まとめ
最期に、今回の契約事例から学べる部分を復習しておきます。
まず、問い合わせの物件数が多い顧客に対しては、スピードを意識する事。
次に、誰よりも早くヒアリングをする意識を持つ事。
そして、どのように案内に誘うかを必死で考える事。
最期に、どの物件で契約してもらえそうかストーリーを立てて考える事です。
一つの契約の中には、様々な分岐点が存在している事を感じていただけたのではないでしょうか。