不動産の関連職には、色々な種類の営業職が存在しています。
その内容は、それぞれで大きく異なり、次の転職先との組み合わせが悪い場合もあります。
内容だけでなく、「忙しさ」等の違いによっても、次の環境下において心理的影響があるのです。
また、どんな種類の営業職から移って来るのかによっても、労働環境や仕事内容への感じ方が異なります。
この記事では、そんな業界特有の特色を少し詳しく取り上げてみたいと思います。
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仕事量の変化
この記事では、住宅営業から仲介営業に転職した場合の話をメインとしていきますが、はじめに、このタイトルとは逆の場合について少しお話ししておきます。
つまり、仲介営業から住宅営業に転職です。
この場合、かなり仕事量が多くなった感覚を持つことになります。
覚えなければならない専門知識についても、圧倒的に住宅営業の方が多いです。
ですから、仲介営業から住宅営業への転身は、心理的にかなり難しいものだと考えてください。
多くの仲介経験者にとって、長続きしない環境である可能性が高いと思います。
両者の仕事内容の違いについては、別記事「住宅営業と仲介営業の違いとは?」で紹介していますので、詳しい事については割愛します。
今回のお話は、この逆のパターンについてです。
住宅営業が仲介営業になるので、「仕事量が減った」と感じることになる話です。
仲介営業の仕事量
おそらく、多くの住宅営業経験者は、仕事量が少なすぎて驚くと思います。
「え・・? これだけなの?」と感じるでしょうし、余った時間で何をしていいか戸惑うくらいだと思います。
住宅営業職の場合、「プランの検討」、「設計との打ち合わせ」、「見積作成」、「顧客との打ち合わせ」といった時間が膨大なものになります。
仲介営業職の場合、これらが殆ど無くなると思えば想像しやすいのではないでしょうか。
建売の販売では、基本的に完成しているものを売るので、設計・施工との打ち合わせ等も一切ありません。
住宅営業職の世界では、皆が時間が足りない中で働いており、打ち合わせなどもギリギリの成約の中でスケジュールを合わせて行うことが多くなります。
仲介営業では、基本的に建物について顧客と打ち合わせすことはありませんし、部材選びや色決めも無いのです。
単純に質問を受け、分からないことは売主に問い合わせるだけですから、仕事量としては住宅営業職の半分以下になると思います。
前職の知識が活かせるか
仲介営業職は、建築知識が無くてもできる仕事なので、住宅営業職時代の知識はむしろ邪魔になるのではないかと思います。
住宅営業経験者は、間取りや部材等に目がいってしまいますし、細かい部分を説明したがる傾向があります。
実は、仲介営業職では、その視点を一度捨てたほうが成功できます。
住宅営業職の場合、自社物件をアピールし、建物や構造を説明する癖がついています。
というか、それがメインの仕事であり、それができないと契約もとれないでしょう。
ですから、住宅営業から転職して来た人達は、つい顧客に建物の構造等の説明をしてしまうのです。
顧客のニーズも違う
建物の構造等を説明するのは、決して悪い事ではないですし、本来大事な部分ではあります。
しかし、建売住宅を購入する人達の多くは、初期段階において建物の構造等を知りたがっていません。
高額物件の場合は建物に興味を示す顧客もいますが、圧倒的に少ないニーズです。
建売住宅を購入する顧客は、「問い合わせした物件が見たい」という気持ちが先行していますので、建物の心配はその次の段階で起こる事なのです。
しかも、建売住宅を購入する顧客が知りたいのは、「欠陥住宅ではないですよね?」という部分なのです。
自分で注文建築するわけではないので、正しく工法等を選択する機会は無く、単純に売主の信用性を疑っているだけです。
要するに、「手抜き工事や欠陥住宅は大丈夫なの?」という部分をクリアしたいニーズがあるというイメージです。
この事を説明するのに、構造や工法の説明は必要ありませんよね?
むしろ、売主の施工実績や、過去のクレーム状況等についての説明が必要です。
まずは、「建築基準法に違反していない建物」である事が分かれば安心なので、難しい話は必要ありません。
建売を検討している時点で、木造であることは分かっていますし、住宅性能評価が付いている物件等は、構造等について一切説明がいらないくらいです。
それに、構造等については、契約時等に売主から説明させた方が良い事です。
仲介営業職は、建物の説明をする時間があるのなら、他に説明しておきたい事がたくさんあります。
この点はかなり注意して取り組んだ方が良いと思います。
知識よりセンス
住宅営業は、自分の仕事に「こだわり」を持てる部分が多いです。
営業センスよりは、確かな知識・スキル等が役に立つ職業です。
特に間取りのプランニングでは、どこまでもこだわりを追及していける要素があります。
建売住宅の販売がメインとなる仲介営業職では、このような「こだわり」を持てる部分が少ないでしょう。
仲介営業でこだわりを持つとしたら、営業スタイルや意識です。
ですから、営業センス(顧客を惹き付ける力)が求められる部分が大きいです。
私が両方を経験してみて感じたのは、顧客心理の追求と言う意味では住宅営業よりも仲介営業での極みの方が高いレベルになると感じます。
どちらの仕事も最高峰レベルでの難しさは同じようなものだと思いますが、より高いレベルで必要になるスキルの種類が違うと感じます。
取り扱う建物について
住宅営業職の時、グレードの高い建物を扱っていた人は、「建売はショボイ!」等と感じる人は少なくありません。
建物に問題があるわけではありませんが、設備の仕様が安っぽく感じてしまうのです。
レクサスやベンツを売っていた営業マンが、急に軽自動車を売るような感覚なのだと思います。
でも、軽自動車が悪いわけではありませんよね?
道路を走る能力はありますし、「これで充分」と考える人も大勢います。
実用的で欲しがる人はたくさんいますが、高級車に乗っている人からすれば、「あんなの車じゃない」等と言う人もいるでしょう。
営業マンは、自分が取り扱える商品の中で、できる限り良いものを紹介するだけの事です。
『こだわり』とか『ステータス』を持って仕事がしたい人は、面白味を感じない場合もあるということですね。
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契約までの手順が違う
住宅営業の場合には、この世に建物が無い状態で営業活動が始まります。
注文住宅は、これから建築するためのお手伝いなので、建物構造の説明や、間取りプランの提案から始まるわけです。
しかし、建売住宅は既に完成している事が多いので、「他社よりも早く紹介する事」の方が大事です。
住宅営業に比べ、様々なスピードが求められるシーンが多いです。
住宅営業職から転職してきた人達は、仲介の仕事を体験して、次のような印象を受けるはずです。
請負契約した次の日に建物が完成し、翌月には引渡しになる超短縮現象に直面した感覚です。
きっと、住宅営業の半年分の仕事が一日で吹き飛ぶような時短現象でしょう。
このスピード感に違和感があるのか、最初は上手くいかない人も多いようです。
住宅営業出身者は、仕事に要する時間的感覚が違うので、「時差ボケ」のような現象が起こるのかもしれませんね。
天国か地獄か
住宅営業職だった人からすれば、夢のような雇用条件に感じる反面、今までとは違う難しさにも直面します。
完成した物件を案内するという作業は、モデルルームでの案内に近いのですが、建物の広さやグレードが違います。
顧客が必ず気に入ってくれるような物件はそれほど存在していません。
ですから、「これが建売というものです」という常識を売っている面もあります。
この部分が、住宅営業出身者には難しいのだと思います。
このせいで、最初はどうやってお勧めすれば良いのか戸惑うことになるようです。
建売住宅には家具もありませんし、設備も標準的なものばかりですから、戸惑うのも無理はないでしょう。
住宅営業出身者には、「勧めない」という習慣がないのかもしれません。
住宅営業職からの転入は、仕事量や環境的には天国になる一方で、「全く売れない営業マンになるリスク」も伴っています。
今までの知識や実績に対し、プライドを捨てて取り組めるかも重要になります。
結果的に地獄となることもありますので、当サイトでよくリサーチしてみてくださいね。
まとめ
住宅営業から仲介営業への転職は、個人的には相性の良い転職だと考えています。
逆に、仲介営業職から住宅営業職への転職は、個人的にはオススメしません。
それと、余談ですが、住宅営業からの転職者がトップになっているケースは、あまり見たことがありません。
仕事はそつなくこなしていて、平均よりも少し売る程度の営業マンに落ち着いている印象です。
住宅営業が仲介営業に転職すると、快適な営業ライフに落ち着くが、トップにはならない状況が実現する、というかもしれませんね。