この記事は、「宅地建物取引業法 独学教材④」の続きです。
宅建業法の第五章の内容(広告・媒介契約等)について説明していきます。
意味を理解して読み通し、その後で過去問で復習してみてください。
業 務
この章では、具体的な業務上のルールが定めてあります。
試験で頻出している箇所がかなり多いので、少し気合を入れて読んでみてください。
ちょっと長い章なので、分割して説明していきたいと思います。
内容的には難しいものではありませんので、根気よく覚えていきましょう。
31条
業務処理の原則
とりあえず、ザックリとどんなことを言っているのか理解すれば充分です。
以下のような事柄が記載されていると思ってください。
2019年出題有
宅地建物取引業者は、取引の関係者に対して誠実に仕事をしてください。
従業員にも適切に教育してください。
事務所には、専任の取引士を置いてください。
退職等で専任の取引士がいなくなった時は、2週間以内に専任の取引士を置いてください。
31条には、このようなことが小難しく書いてあります。
「こうゆう風にやってね」というお願いの規定なので、違反したとしても業務停止や、免許取消の罰則があるわけではありません。
第31条の3
要するに、事務所には、専任の宅建士を在籍させないとダメってことです。
この手続き(書類の届出等)については、別記事で出てきますので、現時点では気にせず進みましょう。
2019年出題有
(宅地建物取引士の設置)
第三十一条の三 宅地建物取引業者は、その事務所その他国土交通省令で定める場所(以下この条及び第五十条第一項において「事務所等」という。)ごとに、事務所等の規模、業務内容等を考慮して国土交通省令で定める数の成年者である専任の宅地建物取引士を置かなければならない。
2 前項の場合において、宅地建物取引業者(法人である場合においては、その役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。))が宅地建物取引士であるときは、その者が自ら主として業務に従事する事務所等については、その者は、その事務所等に置かれる成年者である専任の宅地建物取引士とみなす。
3 宅地建物取引業者は、第一項の規定に抵触する事務所等を開設してはならず、既存の事務所等が同項の規定に抵触するに至つたときは、二週間以内に、同項の規定に適合させるため必要な措置を執らなければならない。
以下のような場所は、宅建士を置く必要があります。(規則 第15条の5の2)
- 継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で事務所以外のもの
- 宅地建物取引業者が十区画以上の一団の宅地又は十戸以上の一団の建物の分譲を案内所を設置して行う場合にあつては、その案内所
- 他の宅地建物取引業者が行う一団の宅地建物の分譲の代理又は媒介を案内所を設置して行う場合にあつては、その案内所
- 宅地建物取引業者が業務に関し展示会その他これに類する催しを実施する場合にあつては、これらの催しを実施する場所
32条~33条
誇大広告等の禁止
これは、不動産業者が広告チラシ等を打つ際の規定です。
誇大広告とは、著しく事実と違う掲載をして、実際よりも良く見せるのはダメ!という事です。
なんだかお得・・と思わせるような誤解を生む表現等も禁止です。
つまり、虚偽広告や、おとり広告はしてはいけないという事を規定しているわけです。
既に成約済の物件や、存在しない物件を広告掲載するのが虚偽広告です。
「単に事実と違う」だけでは、誇大広告に該当しない点も覚えておきたいポイントです。
集客のおとりや虚偽になるような、誇大な表現のことを言っています。
誇大広告の禁止の対象は、所在・規模・形質・利用制限・環境・交通・対価の額・金銭賃借の斡旋(金利等)の8項目に限定されています。
丸暗記しなくても、内容を想像してみると「どこれも嘘では困る内容」になっていることがわかりますよね。
正確に覚えていなくても、「嘘や誇大情報ではダメな内容」と考えれば、それだけで得点できることもあるかもしれませんので、そんな視点で捉えてみてください。
上記8項目以外の事項について誇大広告をしたとしても、宅建業法上では規制対象にはなりません。
但し、「不当景品類及び不当表示防止法」等、別の法律で違反となる事はあります。
広告開始時期のルール
2019年出題有
(広告の開始時期の制限)
第33条 宅地建物取引業者は、宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前においては、当該工事に関し必要とされる都市計画法第二十九条第一項又は第二項の許可、建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第六条第一項の確認その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあつた後でなければ、当該工事に係る宅地又は建物の売買その他の業務に関する広告をしてはならない。
実務上では、主に建売物件等の広告掲載で注意すべき制限です。
簡単に言うと、未完成物件は、建築確認申請が終わってからでないと広告に載せてはダメってことです。
試験対策上では、土地の造成、開発許可等も含まれますので、注意が必要です。
要するに、工事完了前の物件で、役所の許可申請等が必要な場合は、この手続きが完了した後でなければ広告を行ってはいけないという事です。
条文では、「その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるもの」という言い方をします。
丸暗記の必要はなく、この意味が理解できればOKです。
建築確認申請というのは、役所に対して、「こんな建物を建てたいのですが」と許可を願い出るものです。
役所は、法律に違反していないか、図面等をチェックします。
役所のOKが出れば、建築確認済の証明(証明書)がもらえます。
仮に、この建築確認の手続きが終わっていないのに、販売広告を出したとします。
そして、すぐに購入者が契約したとしますよね。
しかし、これだと役所が建築を許さなかった場合に、購入者は実現できない建物を買ったことになってしまいます。
ですから、工事の完了前である物件は、建築確認が完了してから広告を出しましょう!ということになっているわけです。
宅建業者がこれから買う予定の土地(自分のものになっていない土地)を売主として売ることも禁止しています。
第33条の二
自己所有に属しない取引
2019年出題有
宅地建物取引業者は、自己の所有に属しない宅地又は建物について、自ら売主となる売買契約(予約を含む。)を締結してはならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一 宅地建物取引業者が当該宅地又は建物を取得する契約を締結しているとき、その他宅地建物取引業者が当該宅地又は建物を取得できることが明らかな場合で国土交通省令・内閣府令で定めるとき。
二 当該宅地又は建物の売買が第四十一条第一項に規定する売買に該当する場合で当該売買に関して同項第一号又は第二号に掲げる措置が講じられているとき。(要するに、手付金の保全措置を講じているときのこと)
ポイント
試験対策としては、自己の所有に属しない宅地又は建物について、自ら売主となる売買契約を締結することはできないのが原則で、「できる場合が例外的に存在する」という事を覚えておけば良いと思います。
例外とは、開発行為や土地区画整理等による公的な取得等を意味しています。
34条
改正ポイント
全ての媒介契約について、以下の「成約に向けての義務」が追加されました。
宅建業者は、媒介を依頼された物件について買受申込書等、買主等の希望が明記された書面により申し込みがあった時は、遅滞なく依頼人に報告しなければならないことになりました。(第34条の2第8項)
取引態様の明示
2019年出題有
広告等に取引の種類を載せることを、宅建業法では取引態様の明示と言います。
売主として掲載するのか、それとも仲介業者として掲載するのか等です。
広告主が、その物件に対してどんな立場なのかを明示する義務があるということです。
消費者側からすれば、仲介手数料が発生するかの判断材料になる部分でもありますから、義務化するのも納得できますよね。
取引形態の明示は、事前に明示していたとしても、契約の申込みや注文を受けたときにも明示しなければならないと明記されています。
つまり、広告や販売図面で取引形態を表示していたとしても、契約の際には改めて明示して、間違いのないようにするという趣旨です。
当然のことですが、取引の途中で態様に変更があったときも、遅滞なく取引態様を明示しなければいけません。
この明示義務は、宅建業者にあります。
取引士の義務ではありませんので注意しましょう。
そして、相手が宅建業者(プロ)であっても、明示義務は同様に必要です。
2018年出題有
令和2年8月施行の改正点
水害増加等に伴った改正が行われ、重要事項説明と取引態様の内容に、以下の追加事項がありました。
- 水防法に基づく水害ハザードマップにおける当該宅地建物の所在地
- 石綿使用調査の内容
- 耐震診断の内容
- 住宅性能評価を受けた新築住宅である場合
媒介契約
ここは、本試験に毎年のように出題されます。
直近の改正ポイントにも注意しましょう。(成約に向けての義務)
何度か読んで、よく理解しておいてください。
媒介契約書なんて、普通の人には馴染みがないものですよね。
でも、不動産営業になると、契約の度に使う馴染みの契約書になります。
媒介契約を簡単に説明すると、「顧客が不動産屋に正式依頼をする契約」です。
不動産会社に対して、正式に物件の紹介依頼をし、成約したときには仲介手数料を払う約束をする契約書なのです。
媒介契約には、3種類の方式があります。
一般媒介、専任媒介、専属専任媒介の3つです。
では、媒介契約について説明していきますね。
一般媒介契約
あなたが自宅を売却しようと考え、不動産屋に売却を依頼するとします。
その際、大手不動産会社と、地元不動産会社の両方に依頼をするような場合の契約書です。
要するに、複数の不動産屋さんに同時に依頼できる契約内容になっているのが一般媒介です。
但し、明示型という形式の場合は、他の不動産屋さんへの依頼状況を教えておかないといけません。
非明示型の場合は、何社に依頼しているかを教えないままで複数の会社に依頼してもOKです。
また、一般媒介契約は、自分の力で購入相手を見つけても良い契約内容になっています。
ですから、一般媒介契約は、不動産屋としては少しやる気の下がる依頼方法でもあります。
不動産業者にとっては、比較的に責任が小さい部類の契約になるので、流通機構のサイト(レインズ)への登録や、依頼者への報告義務などが任意で良いことになっているのも特徴の一つです。
一般媒介の場合、他社にやられる可能性がある為、不動産屋側のやる気はやや下がります。広告手配をし、「何かあったら連絡しますね」という感じになりがちです。
契約期間は、法令で決められていませんが、実務では3カ月が慣習となっています。
行政でも、3カ月以内を推奨しています。
試験的には、「期間の定めはないが、3カ月以内が望ましい」と覚えておけばOKです。
専任媒介契約
2019年出題有
専任媒介契約は、1社だけの不動産屋に専任させる契約です。
ですから、他の不動産屋には依頼することが出来ません。
但し、一般媒介の時と同じように、自分で買い手を見つけて直接契約することはOKです。
契約期間は、3カ月以内で締結しなければいけません。
3カ月を超える契約をしても、3カ月の契約をしたのと同じ扱いになります。
不動産会社の販売能力が乏しかった時、専任先を変更できないのは困りますよね?
ですから、「依頼人の不利益とならないように3カ月で区切りなさい」ということになっているのです。
一方、不動産会社側も3カ月は解約されないと約束してもらうことで、「頑張ろう」という気になるわけですね。
専任媒介の場合、不動産流通機構への登録も7日(7営業日)以内にしなければならないルールになっています。
メモ
営業日で数えるので、休業日数は算入しなくてOKです。
指定流通機構から登録を証する書面が発行されたら、宅建業者は、この書面を遅滞なく依頼者に引き渡す必要があります。(同法34条の2第6項)
そして、2週間に1回以上の割合で依頼主に状況報告をしなければいけません。
このように、専任媒介契約は、互いにある程度の責任が出てくるわけです。
相手が宅建業者であっても、この報告義務を免れることはできません。
また、指定流通機構に登録した物件について、売買契約が成立したときは、遅滞なく、その旨を指定流通機構に通知しなければなりません。(宅地建物取引業法34 条の2第7項)
専属専任媒介契約
専任媒介よりも、もっと真剣にやってもらいたい!
そんな人は、専属専任媒介を選ぶことができます。
契約期間は専任と同じで、3カ月以下の期間で結ばなくてはいけません。
更新する際も、3カ月以下の期間で締結し直します。
不動産流通機構への登録は、5日(5営業日)以内です。2018年出題有
よりスピードを求められる内容です。
指定流通機構から登録を証する書面が発行されたら、宅建業者は、この書面を遅滞なく依頼者に引き渡す必要があります。(同法34条の2第6項)
専属専任媒介契約の場合、依頼者への報告は1週間に1回以上です。
不動産屋さんも手が抜けないので、ある程度の広告費を投じることになります。
ですから、専属専任媒介契約の場合、依頼主が買い手を見つけて契約することは禁止になります。
3つの媒介方式の中で、唯一自力で見つけてはいけない契約ですね。
代理契約
代理契約についても、媒介契約に関する規定が適用されます。
つまり、代理契約書面への記載事項についても準用されるということです。
期間は三カ月を超えることができず、依頼者の申出で更新する際も、更新の時から三カ月を超えられません。
書面の交付についても、媒介契約書と同じように交付義務があります。(代理契約書を作成して交付する)
指定流通機構への登録も代理契約書への記載事項となりますが、登録期日についての定めまではありません。
媒介契約書面の記載事項
宅地建物取引業者は、不動産の売買や、交換の媒介をする契約をしたときには、遅滞なく、以下の記載事項を満たした書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければなりません。
記載事項については、現実に該当する事項が無かったとしても、「なし」という事実を記載しなければいけないという事です。
宅建業者は、媒介契約書に記載しなければならない事項を知っておく必要がありますから、試験でもよく出されます。
記載事項は、以下の通りです。
1.物件を特定するために必要な表示
所在、地番、種類、構造等、普通に考えて掲載すべき事なので、暗記しなくても良いと思います。
要するに、物件を特定するのに必要な情報は、記載事項ということ。
2.物件の価額・評価額
仕事の依頼をするのに、いくらの物件なのか指定しないわけがありませんよね。
価格又は評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならないと明記されています。
このことは覚えておいてください。
3.媒介契約の類型
一般媒介、専任媒介、専属専任媒介のどれか判別するための記載です。
各契約により、報告義務等が異なるので、類型の記載が必要です。
4.有効期間・解除に関する事項
依頼者から申し出があれば、更新できます。
5.指定流通機関への登録に関する事項
指定流通機関への登録とは、業者用インターネットへの登録だと思ってください。
業界では、レインズと呼びますが、試験では出ない言葉です。
レインズに登録すれば他の不動産業者にも物件情報が共有されます。
要するに、早く購入者を見つけるための情報登録です。
ポイント
指定流通機構から登録を証する書面が発行されたら、宅建業者は、この書面を遅滞なく依頼者に引き渡す必要があります。
指定流通機構に登録した物件について、売買契約が成立したときは、遅滞なく、その旨を指定流通機構に通知しなければなりません。
6.報酬に関する事項
仲介手数料についてを明記します。
依頼にかかる費用を知らずに契約する人はいませんよね。
これも絶対に必要だとわかるので、暗記は必要ないでしょう。
7.建物状況調査について 平成30年改正ポイント
既存の建物(中古物件)の場合、建物状況調査(インスペクション)を実施する者のあっせんに関する事項。2018年出題有
インスペクションとは、「建物の構造耐力上主要な部分」「雨水の浸入を防止する部分」について、既存住宅状況調査技術者が実施する住宅診断検査のことです。
建物状況調査(実施後国土交通省令で定める期間(1年)を経過していないものに限る。)を実施しているかどうか、及びこれを実施している場合におけるその結果の概要を記載しなければなりません。
2019年出題有
この建物状況調査を行うのは、経年変化その他の建物に生じる事象に関する知識及び能力を有する者として国土交通省令で定める者でなければなりません。
具体的には、建築士で、国土交通大臣が定める講習を修了した者と定めています。
8.国土交通省令で定められた事項等
違反事項等があれば記載することになっています。2018年出題有
依頼者が他の宅地建物取引業者と取引した場合の事や、国土交通大臣が定める標準媒介契約約款に基づかない媒介契約書面を作成するときは、その旨を記載するといった事です。
2016年度の試験では、「国土交通大臣が定める標準媒介契約約款に基づくか否かの別」が媒介契約書の記載事項かどうかを問う肢が出題されています。
まとめ
この章は、試験にも良く出題されていますので、しっかり読んでおきましょう。
次は、いよいよ重要事項説明についてです。
引き続き、かなり大事な部分ですので、頑張って得点源にしましょう。